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人生迷走者  作者: 相川悠介
第一章
1/14

1ー1 「憂鬱な人生」

 教科書や筆箱が入っているリュックを背負い、自転車を漕いで、大学へ向かう。

 季節は秋。全身が凍りつくような風を受ける。


 それに今日は月曜日。ほとんどの人は憂鬱になる。

 俺もその中の一人。休日が終わったあとの仕事や学校なんて嫌だ。


 大学に着くと、自転車置き場に向かって自転車を置き、鍵を取る。講義室へ向かい、空いてる席に座ってリュックから教科書と筆箱を取り出す。

 講義室を見渡すと、友達同士で仲良く話している学生もいれば、俺みたいに一人で静かに座っている学生もいる。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴り響き、男性教師が教科書を持って入ってきた。騒がしかった空間が急に静かになる。


「授業を始める。欠席者は……いないな」


 男性教師は出席表にチェックを入れ終わると、白いチョークを持って黒板に文字を書き始める。

 授業時間は1時間30分と長い。ノートに書き写す学生がいるが、教科書を見て聞いているだけでも大丈夫だ。


 キーンコーンカーンコーン


 教科書を見て、ぼーっとしていたら授業終了のチャイムが鳴り響く。俺はすぐに教科書と筆箱をリュックに入れて背負って立ち上がり、講義室を出て自転車置き場に向かう。

 月曜日は一限目だけのため、早く帰れる。

 自転車の鍵穴に鍵を差し込み、ロックを解除して自転車に乗って家へ帰る。


     ◇


 家の中に入ると、俺以外誰もいない。

 両親は朝から仕事で、母さんは昼、父さんは夜に帰ってくる。時計を見ると、今の時間は11時だ。

 二階へ向かい自分の部屋に入る。フック付きのスタンドにリュックを吊るして、ベッドに飛び込む。

 スマホをズボンのポケットから取り出して、パズルゲームを起動する。


「もうそろそろかな」


 スマホを持つ右手が震える。


 中学生時代、家の廊下を歩いていると突然体が震えだし、気絶して倒れた。目を開けると救急車の中で横になっていた。両親に聞いたところ、体は痙攣していて白目をむいたまま舌を噛みちぎるような状態だったらしい。

 母さんが救急車を呼んでいる間、父さんは俺が舌を噛みちぎらないように前歯を押さえていたとのこと。


 医者によると、俺は「てんかん」という病気を発症した。「てんかん」とは、脳の神経細胞が過剰な電気的興奮を起こし、発作を繰り返す脳の慢性疾患。発作の症状は、意識を失う、全身が痙攣する、感覚が異常になる、勝手に体が動くなど様々。


 治療法としては、発作を抑制するため、抗てんかん薬を毎日規則正しく服用する。

 だが、それで治るわけじゃない。


 薬を飲んでいても、学校で気絶したことが数回あり、クラスメイトや教師に醜態を晒していた。


 今は薬を飲まずに発作が起こるのを待っている。なぜかというと、自分という存在が嫌いになったからだ。失恋経験が3回もあり、高校時代はうざい教師が多く、ストレスに耐えながら通っていた。大学に通ってはいるが、将来の夢が見つからず、人生を迷走している。


「本当に……」


 俺は死にたい。死んで人生をやり直す。

 しかし、まだそのときじゃないのか右手の震えが止まった。


「明日か?」


 仕方ない。パズルゲームをして時間を過ごす。


「よし、こうして……これで終わり」


 同じ色を縦1列、横1列にするというゲームであり、課金する要素もない。

 ステージが進んでいくと、難易度が上がる。一応、全ステージクリアはしたが、今日の夜7時にアップデートでステージが追加されるらしい。


「あ、充電が……」


 昨日、スマホを充電するのを忘れたのか残り10パーセントになってしまった。充電器でスマホを充電する。


「小説でも読むか」


 ベッドから降りて、本棚に向かう。

 小説は異世界転移系、異世界転生系、恋愛系などといった種類がある。小説だけでなく漫画もあり、バトル系、ギャグ系など。小説と漫画には、ブックカバーを使っている。汚れたり、傷つくのが嫌だから。


「うーん……これでいいや」


 異世界転生系の小説を1冊取って、ベッドに座って読む。転生には必ず「死」という経験をする。

 それで、神様に会ってチート能力を貰えるという謎。

 前世とは違って姿はかっこよくなっていて、魔法を使って無双して、気がつけば女性たちからモテてハーレム状態なんて展開がある。

 まあ、嫌いではない。


「違うのにしよ」


 再び本棚に向かい、恋愛系の小説を1冊取る。

 恋愛系の小説で主人公の陰キャと陽キャなギャルの関係が知り合いから恋人という関係になる内容。

 現実にはない要素がある。陰キャの学生に優しいギャルなどいない。

 これは断言できる。


「これの最新刊いつだろう」


 続きが気になり、ネットで調べていたが「未定」だった。残念。

 そう思いながら小説を読んでいたら、玄関から「ただいまー」と母さんの声が聞こえた。

 いつの間にか午後になっていた。お腹は空いていなく、昼食は食べないようにしている。朝食の量が多いからだ。

今日の朝食は、大盛りのご飯、目玉焼き、ベーコン2枚、サラダだった。


「少し寝よ」


 小説を戻して、ベッドに横になる。


     ◇


 目を開けると部屋は暗くなっていた。

 起き上がり、ベッドから降りて部屋の電気をつける。

 寝起きのせいか、部屋が明るくなると眩しく感じる。

 スマホを見ると19時になっていた。


「夜の7時……結構寝たな」


 スマホの充電は100パーセントになっていて、充電器を外してパズルゲームを起動する。

 アップデートは30秒で終わり、ステージが10個追加されていた。


「夕食が先か」


 スマホの電源を消して、部屋から出て一階に下りる。

 リビングに入ると、母さんが弁当屋のメニュー表を見ていた。父さんはまだ帰ってきていない。


「母さん」


「あ、巧。今日は弁当でいい?」


「いいよ。父さんは残業?」


「そうみたい。それで何がいい?」


「唐揚げ弁当」


「分かった」


 それだけ言うと自分の部屋に戻ってベッドに寝転がってスマホの電源をつけ、ゲームを起動する。


「難易度はどれくらいかな」


 追加されたステージを攻略し始める。

 想像以上に難しいが、追加された最初のステージは、なんとかクリアできた。


「めっちゃ難しいじゃん」


 次のステージ、その次のステージと続けてクリアしていき、ついに全ステージクリアできた。


「あー、疲れた。弁当が届くまで動画でも見るか」


 FPSゲーム実況の動画を見る。

 一度だけFPSゲームをしたが、エイムがガバガバで全然銃弾が当たらず、すぐにゲームオーバーした。

 自分には向いていないということを実感した。


『よーし、あと一人。うわっ!相手ロケラン持ってんじゃん。一旦グレネード投げるか』


 相手は避けるもののダメージを受けている。

 実況者は、ショットガンを持って相手に近づく。

 実況者の武器編成は、アサルトライフル2、ショットガン1、ミニガン1、グレネード1。

 相手はロケラン以外にも持っているはずだが、ロケランしか使っていない。


『これで終わり』


 相手はロケランから別の武器を使おうとしたが、実況者のショットガンでヘッドショットされ、実況者が1位になった。


『やったぜ』


 このあと、実況者がおすすめの武器を紹介するコーナーになっているが、バトロワだけ見るようにしているから他の実況動画を見る。


「海外ニキの動画だ。……S&W M500……え、世界一強いリボルバー?マジか」


 時々、FPSゲームの実況動画関連で流れてくる動画。

 特に海外ニキの銃紹介の動画だ。

 日本語訳機能のおかげで何を言っているのか分かる。

 実際に銃を的に向けて撃ったり、銃弾を装填しているところも動画で見せてくれる。


「ゲームセンターで銃を使って遊ぶゲームやったことあるけど、スコアボロボロだったなー」


 そんなことを思い出しながら、海外ニキの銃紹介の動画を見る。


「他にはどんな銃が……」


 銃について知ろうと思ったとき、スマホを持っていた右手が震えてスマホをベッドの上に落とす。


「え?……右腕が!」


 右腕が捻り曲がる。制御ができない。

 どうすればいいかと思ったとき、視界が暗くなる。


     ◇


 意識がぼんやりとしていて、自分がどこでどうなっているのか分からない。


「あれ?俺の部屋じゃない……どこ?」


 上を見上げると青空。地面は白いタイル。この空間には、テーブル、椅子、ベッドだけがある。


「やあやあ」


 瞬きをすると、目の前に少年が少女らしい高い声をかけて近づいてきた。

 ライムグリーンの髪が日の光を浴びて、ペリドットのように輝く。狐の耳が生えているが、尻尾はない。


「あ、どうも?」


「うーん……」


 少年は、青空のような透き通っている瞳で俺を見ている。服装は、黒いタンクトップに白い上着を羽織っていて、黒いショートパンツを穿いている。


「あの〜」


「ボクの性別は女性だよ」


 少年だと思っていた少女の胸を見ると、膨らみがあった。


「そ、そうでしたか。失礼」


「まあいいさ」


 怒っている様子はなく、安心した。

 突然、少女は俺に人差し指を向ける。


「キミは死んだ」

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