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おねーちゃんの勇気

船の調理場。

朝の光が差し込み、鍋の湯気と香辛料の香りが漂っていた。


リーザ(ナイフを持ち直しながら)

「おねーちゃん!こうやらないと、じゃがいもは剥けないよ〜」


マリン(悪戦苦闘しながら)

「む、難しい〜……ひぃ〜!」


その時、賑やかな笑い声とともに三人の船員が入ってきた。

白いセーラーに黒のスカートを揺らす、美少女たち。

活発そうなローラ、おっとりしたマーシャ、真面目なミネルバ――それぞれが眩しいほどの笑顔で立っていた。


ローラ(元気に声を張り上げて)

「コック長のおばちゃん! 今日のおかず何〜?」


コック長おばさん(大きなお玉を振りながら)

「今日はカレーだよ! ローラ!! あんたら、いっつも見にくるね〜。ローラ、マーシャ、ミネルバ! メニュー表、ちゃんと見な!」


マーシャ(のんびりした口調で)

「あれぇ? マリンがじゃがいも剥いてる〜……大丈夫? おねーちゃんがやったげるよ〜」


ローラ(元気いっぱいに)

「ほんとだ! ローラおねーちゃんがやったげるよー!」


ミネルバ(きっぱり)

「いやいや。私がおねーちゃんだから、私がやります!」


コック長おばさん(腰に手を当てて)

「こらこら! あんたらまたマリン甘やかす気かい! ダメだよ!! せっかく妹のリーザに教えてもらってんだから!」


リーザ(緊張しながら、隅でペコっと会釈)

「……おはようございます」


ローラ(ぱっと目を輝かせて)

「ん? リーザ? あっ! 隅にいた! 新しく入った子だね? 可愛い! おはよー!」


マーシャ(にっこり微笑んで)

「おはよー♡ ほんと可愛い〜」


ミネルバ(真面目に頷きながら)

「おはようございます。……やはり可愛いです」


三人はスクラムを組み、小声でこそこそと話し合う。

「やったー妹が増えたね!」

「ほんと可愛い〜」

「これでまた守るべき後輩が……」


だが――リーザに近づこうとした瞬間、マリンが腕を広げて立ちふさがった。


マリン(胸を張って、自慢げに)

「ダメーっ! リーザは私の妹! 正式おねーちゃんは私なんだから〜! フフン♪」


ローラ(泣きそうな顔で)

「えー……おねーちゃん悲しいよ〜マリン〜」


マーシャ(ふわふわした声で涙目に)

「マリンちゃん……ひどいよぉ〜。お姉ちゃん泣いちゃう」


ミネルバ(真面目に拳を握って)

「マリンのお姉ちゃんは私ですので、当然リーザちゃんも私の妹です!」


ローラ(むっとして)

「いやいや! おねーちゃんは当然あたいだって!」


マーシャ(ふわふわ調子で)

「いいえぇ〜私だよぉ〜お姉ちゃんは〜」


ミネルバ(眼鏡をくいっと上げて)

「みなさん、勘違いしてます。正しくは私なんです」


コック長おばさん(頭を抱えて)

「こらこら! あんたらが甘やかすから、マリンがろくに仕事できないんだよ! 持ち場に戻んな! あんたらにも割り当てあるだろー! 行った行ったー!!」


三人しょんぼりしながら

「はーい……」


ローラ、マーシャ、ミネルバは肩を落としながら調理場を後にしていった。

残されたマリンは、勝ち誇ったように鼻を鳴らす。


船の甲板 ― 突如現れた海の怪物


ミャーリ(海を見て目を細め)

「アーシア様……どうしたにゃ? 海を見て……?」


アーシア(はっと顔を上げ、指差す)

「っ……! 黒く大きな影が……船を横切りました!!」


次の瞬間、船が大きく揺れ動いた。


――ぐら〜ん!!!


船体がきしみ、大きく傾く。


船員たち

「きゃーっ!!」「うわあああ!!」


にゅるにゅると、巨大なイカのような足が海中から伸び、船体をつかむ。

甲板には、その足の一本が叩きつけられた。


女船長(目を見開き、叫ぶ)

「ま、まさか……クラーゴスが現れるとは……!!」


天使ちゃん(あわあわと手を振りながら)

「ク、クラーゴス……?」


女船長(険しい顔で)

「海の怪物クラーゴス……! 足は十二本、しかも毒を吐くんだ! 最悪の相手だよ!!」


ひめな(鋭く振り返り)

「ルイフェル、攻撃開始――!」


ひめな(怪訝そうに)

「ん……? ルイフェル……?」


そこには、甲板に突っ伏して動かないルイフェルの姿があった。

船酔いで完全にダウンしている。


ひめな(呆れ果てて)

「……使えねー」


アーシア(悲痛な声で駆け寄る)

「ルイフェル様ーーっ!!」


天使ちゃん(困ったように肩をすくめ)

「アーシア様と私の、神聖魔法を断ってたからですよぉ〜……」


ミャーリ(ぽかんとした顔で)

「神聖魔法って……酔い止め代わりになるにゃ?」


天使ちゃん(胸を張って)

「匙加減はありますけど……上手くやれば大丈夫です!」


ミャーリ

「そうなんにゃ〜ルイフェル電車のときも、酔うのに、カッコつけて言わなかったニャ」


女船長(額に青筋を立てて怒鳴る)

「こらこら!! お前らぁ!! クラーゴスが目の前にいるんだぞ!? のんびり喋ってる場合かぁ!!」


ティナ=カク(居合の構えを取り)

「……そうですね! まずは足を斬る!」


――シュバッ!!

鋭い斬撃がクラーゴスの足を切り裂いた。


メイ=スケ(大きな手裏剣を操りながら)

「ほほ〜い! それそれ!! 操り手裏剣、お見舞いだぁ〜!」


魔力で制御された巨大な手裏剣が旋回し、触腕を次々と切断していく。


その間、エルフィナはアーシアの前に立ち、魔力を練り上げて防御の構えをとった。


だが、追い詰められたクラーゴスは甲板に向かって毒を撒き散らした。


――ブシューーーッ!!!


毒の霧が広がり、洗濯物を抱えて立っていたリーザに迫る。


リーザ(目を見開いて固まり)

「っ……!」


マリン(叫びながら飛び込む)

「危ないっ!!」


次の瞬間、マリンがリーザを庇い、その身に毒を浴びてしまった。


―――


リーザ(必死にマリンの肩を揺さぶり)

「マリン? ……マリン! 起きて? ねぇ……!」


かすかに薄目を開けたマリンは、弱々しく微笑んだ。


マリン(か細い声で)

「リーザ……よかった……。お姉ちゃんらしいこと……やっと……でき……た……」


そのまま力尽きるように瞼を閉じ、意識を失う。


リーザ(泣き崩れ、叫ぶ)

「いやだ! いやだーー!! お姉ちゃんがぁーー!!

誰か……助けて! 誰かぁーーー!!」


その悲痛な声を聞きつけ、駆け寄ってきたのはアーシア、天使ちゃん、そして女船長だった。


アーシア(青ざめて駆け寄り)

「……危ない状態です! 天使ちゃん、神聖魔法を!」


天使ちゃん(頷いて両手を翳し)

「はいっ!」


だが女船長が険しい声で制した。


女船長

「神聖魔法は効かない! いや、治しきれねぇんだ……。あれは“海の怪物”クラーゴスの毒……。地上の魔物とは違う。特殊な毒なんだ!」


天使ちゃん(真剣な眼差しでアーシアに向き直り)

「アーシア様! リュミナ様の配下に、“海の神女”と呼ばれるかいちゃんがいます!

わたしが神聖魔法でマリンちゃんの命を繋ぎ止めます。その間に、どうか召喚してください!」


天使ちゃん(さらに強い声で続ける)

「アーシア様の力なら今は十分です! 二人目の召喚も――大丈夫です!」


アーシア(強く頷き、両手を組んで)

「……わかりました!」


アーシア(高らかに)

「――召喚ッ!!!」


甲板全体が光に包まれ、きらめく魔法陣が浮かび上がる。

その輝きは霧を裂き、荒れる波をも照らし出していた。




――つづく。

【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

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