表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/148

結界に揺れる想い

女船長の船 ― 甲板


突如、霧の中から巨大な一隻の船が現れた。

錆びついた鐘の音がゴォォン……と不気味に響き渡り、鎖に繋がれた無数の幽霊が空を漂い始める。


――オォォオォオオーーーッ……!


黒く濁った波しぶきを立て、幽霊船はまっすぐこちらへと迫ってきた。



ミャーリ(全身を震わせながら)

「あ、あれは……幽霊船にゃーー!」


アーシア(青ざめて声を震わせる)

「ひっ……幽霊……!? ル、ルイフェル様ぁ……!」


天使ちゃん(涙目でノームを抱きしめて)

「ノームさん、ど、どうしたらいいんですかぁ〜!? こわいですぅ〜!」


ノーム(短く唸りながら)

「心配せんでええ! 来るならわしが追い払ってやるわい!!」


ひめな(鋭い視線で霧を見据え)

「……感知。ルイフェル。幽霊を動かしている“主”がいる」


ルイフェル(眉をひそめ、息を整えて)

「よし! そいつを叩く……!」


アーシア(半泣きで袖を掴み)

「あ、あの……ルイフェル様……行ってしまわれるのですかぁ〜……」


ルイフェル(困ったように微笑んで)

「すぐ片付けて戻るから。……なぁ、アーシア」


(ひめなが黒い槍へと変幻し、闇の光を帯びた魔槍“デビルマスター”となる)


ルイフェル(槍を握り直し)

「――飛ぶぞ、ひめな!」


ひめな

「了解」


(翼を広げたルイフェルは霧の中へ一直線に突撃していった)


アーシア(両手を胸に当てて、震えながら見送り)

「ど、どうか……ご無事でぇ〜……」



女船長(口元を歪め、舵輪を蹴飛ばすようにして立ち上がる)

「まだ出航前だってのに……どえらい歓迎じゃないか! ――だが、船は壊させないよ!!」


(船長の怒声に、甲板の船員たちが一斉に走り出す)


女船長

「あんた達! 魔除けの札を船内の至る所に貼りつけな!!」


船員たち(声を揃えて)

「はい! 船長!!!」



エルフィナ(毅然と一歩前に出て)

「わたくし達も手伝いましょう! この船を守るのですわ!」


メイ=スケ(顔を青くしながら)

「ひぃ〜……こ、怖いですけど……はぁ〜い……」


ティナ=カク(鋭い目で頷き)

「はい! すぐに取りかかります!」


ナリア(勇気を振り絞って)

「わ、私も……やります!」


(彼女たちはそれぞれ札を手に取り、甲板や船内の柱へと走っていった。

船全体が魔力の光に包まれ、幽霊たちの近づく速度がほんの少し鈍る――)



霧の中 ― 対峙


ルイフェルはひめなを握りしめ、霧を突っ切って飛んでいた。

白く濃い霧が肌を刺すようにまとわりつき、視界はほとんどゼロに近い。


ルイフェル(額に汗を浮かべて)

「すげー霧だ! まるで目隠しして飛んでるみたいだ! 見えねー!」


ひめな(冷静に、鋭い声で)

「……大丈夫。霧の向こうに……いる。確実に」


ルイフェル(槍を握る手に力を込めて)

「よし! そいつをぶっ飛ばすだけだ!!」


――次の瞬間。


霧の向こうから、巨大な影がゆっくりと姿を現した。

三メートルを超える悪魔。灰紫の半透明な肌は海霧に溶け込み、骸骨の顔に青白い炎の双眸が燃えている。

錆びついた鎧が身体に食い込み、海藻や貝殻が張り付いたまま腐臭を放っていた。


背中から垂れ下がるのは、黒鉄の鎖。

その鎖には呻き声をあげる幽霊たちが絡みつき、無理やり引きずられるように宙を漂っていた。


ドゥーム(低く、不気味な声で)「……愚かな、者よ。我が名はドゥーム。

 鎖に縛られし亡者どもは、すべて我が糧……抗うことなど許されぬ」


――ヂャリン、ヂャリン……シュルルルッ!!


鎖が一斉に伸び、ルイフェルたちへ襲いかかった!

鋭い金属音が霧を切り裂き、不気味な軌跡を描いて迫る。


ルイフェルは体をひねってなんなくかわした


一方その頃、船の甲板では――。


突如、港町の少女が危険を顧みずに駆け上がってきた。


ミャーリ(驚きの声で)

「あの子は……!? リーザ?」


アーシア(慌てて前に出て)

「知っているのですか? 危ないですよ! これから幽霊がこちらに来ます!!」


リーザ(必死に、涙目で)

「幽霊さんに……攻撃しないでください! ……お父さんがいるかもしれないんです!!」

その子は

茶色の髪を潮風に乱されながら、青緑の瞳で必死にこちらを見つめる少女――胸元には小さな貝殻の首飾りが揺れていた。


天使ちゃん(首をかしげながら震えて)

「お父さん……?」


ミャーリ(顔を曇らせて小さくうなずく)

「そう……リーザちゃんのお父さんは、海で……」


アーシア(しゃがみ込み、優しく語りかけて)

「安心してください。結界と浄化しかしません。攻撃はしませんよ」


リーザ(縋るように)

「……ほんと?」


アーシア(微笑んで)

「ほんとうです。だから、そばに来てください」


その時、霧が船を丸ごと飲み込み始めた。

冷たい空気に包まれ、視界は真っ白に閉ざされる。


――カラン、カラン……。


錆びついた鎖の音と共に、甲板に無数の霊が現れる。

空気を切り裂くように呻き声が響き、霊達はアーシア達を襲わんと迫るが、光の結界に阻まれ、触れることはできなかった。


リーザ(息を呑み、震える声で)

「あれは……! わたしがあげた首飾り……!」


アーシア達の目に、ひとりの霊が映る。

胸元には、小さな貝殻の首飾り。


リーザ(叫ぶように)

「あれは……お父さん! お父さんです、聖女様!!」


だが霊の顔は苦悶に歪み、鎖に操られるように苦しげに襲いかかってくる。


リーザ(涙をあふれさせ、結界から飛び出す)

「お父さん!! お父さーーん!!!」


アーシア&天使ちゃん(同時に)

「だめ! 危ない!!」


リーザが駆け出した瞬間、他の霊が一斉に襲いかかる。


その刹那――。


リーザの前に立ちはだかり、両腕を広げて庇ったのは……首飾りをつけた霊だった。


リーザ(震える声で)

「……お父さん……」


霊は優しい笑みを浮かべたが、次の瞬間、顔が苦痛に歪み、鎖に引きずられていく。

他の霊と共に、闇の中へと無理やり連れ去られてしまった。


リーザ(必死に手を伸ばして泣き叫ぶ)

「あぁーー! お父さんーー!! お父さん!!

助けて! お父さんを! 助けてぇぇーーー!!!」


泣き崩れるリーザを、アーシアが後ろから抱きしめ、必死に落ち着かせようとする。


アーシア(涙声で)

「もう大丈夫……大丈夫ですよ……」


その傍らに、霧を裂いてルイフェルが降り立った。


ルイフェル(悔しげに唇を噛みしめて)

「……取り逃した。霧と共に……奴らは消えた……」


霧は静かに船を包み、再び不気味な静寂を残していった。


――つづく


【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ