妹地獄の船長
トライヤ宿ーー
ルイフェル(怒りながら)
「あの女海賊!」
ミャーリ(ジト目で)
「海賊じゃなくて船長にゃ」
ルイフェル(両手を上げて)
「いっしょだー! あいつなら絶対アーシア見て“妹がもう一人”とかぬかすぜ!」
ひめな(無表情で)
「解決皆無」
ノーム(ふわふわ揺れながら)
「変装させてはどうじゃ? アーシア様に?」
アーシア(にこにこ笑顔)
「みなさん、大丈夫ですよ〜」
ルイフェル(半泣きで叫ぶ)
「今そんな悠長なこと言ってられないんだぞ!!」
⸻
(ガチャッ、宿のドアが開く)
天使ちゃん(ふらふらしながら)
「今日も疲れましたぁ〜。でもルイフェル様とミャーリちゃんのおかげで、サイン会は午前中だけになりましたぁ〜」
ルイフェル(ピクッと反応し、閃いて)
「……なぁ、天使ちゃん」
天使ちゃん
「はい?」
ルイフェル
「我に恩あるよな? 大神官からの件で助けたんだし」
天使ちゃん
「はい!もちろんです! 感謝してます♡」
ルイフェル(身を乗り出して)
「よし、それじゃ……もしアーシアが“妹”にされそうになったら、身を挺して代わりになってくれ!!」
天使ちゃん(ぽかんと口を開けて)
「……はい?」
ミャーリ(ため息をついて)
「ルイフェル説明下手にゃ……」
(説明を受けた天使ちゃんは、きゅっと拳を握って真剣に)
天使ちゃん
「わかりました! アーシア様のためならやります!!」
アーシア(おろおろしながら手を振って)
「え、えぇぇ!? ま、待ってください!」
⸻
船での顔合わせの日
(女船長が甲板で腕を組み、船員たちに囲まれ堂々と笑う)
女船長
「おお〜!よく来たなぁ! ん? ……おぉぉ!? あの子は……」
(視線がアーシアに釘付けになる)
女船長(両手を広げて叫ぶ)
「はぁ〜!? なんだあの可愛さは!? 妹どころか……天使じゃん!!!」
アーシア(涙目で後ずさり)
「わ、私ですか!? い、いやいやいやぁ〜!」
ルイフェル(大慌てで前に出る)
「こらぁぁぁ!! アーシアに手ぇ出すんじゃねぇぇ!!!」
女船長(高らかに笑って)
「決めた! 今日からお前は私の妹No.1だぁぁ!」
(がばっと抱きしめられるアーシア)
アーシア(じたばたしながら)
「わ、わたしにはルイフェル様がいますぅぅぅ!!」
天使ちゃん(慌てて飛び出し)
「ま、待ってください! その役は私が引き受けます!!」
(女船長、両腕で天使ちゃんとアーシアをまとめて抱きしめる)
女船長
「よし! 妹はみんなまとめて可愛がればいい!!」
エルフィナ(慌てて前に出る)
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし! アーシア様はダメですわ!」
女船長(ケラケラ笑いながら)
「おやぁ? 姫様もかい♡ こりゃモテモテだねぇ〜私! ははは!!」
(女船長はエルフィナ・アーシア・天使ちゃんを両腕いっぱいに抱きしめ、まるで宝物を離すまいとぎゅっと掴む)
(エルフィナと天使ちゃんは必死にジタバタする。その横で、アーシアは小さく息を呑んだ)
アーシア(小声で二人に囁き)
「……女船長さん、少し……涙が滲んでます」
(アーシア、そっと微笑む)
「きっと、本当に妹さんを大事に想っているんです……。少しだけ、付き合ってあげましょう?」
(エルフィナと天使ちゃんはしぶしぶ頷き、女船長の抱擁を受け入れる)
女船長(涙ぐみながら笑って)
「妹は……もう離さないよ。可愛いんだから♡」
そして勢いよく声を張り上げる。
女船長
「ありがとね〜あんた達! 今日は酒盛りだー!!」
船員たち
「ヤッホー!!!」
⸻
少し離れた場所で
メイ=スケ(のんびり肩をすくめて)
「やっぱり……アーシア様、巻き込まれてる〜。……助かった〜」
ティナ=カク(頭を抱えながら)
「妹、どんだけいるんだこの人……?」
⸻
一方その頃
ルイフェルは甲板の端に立ち、脳裏に何度もあの言葉を思い出していた。
――アーシアの笑顔と共に響く声。
『わ、わたしにはルイフェル様がいますぅぅぅ!!』
ルイフェル(顔を真っ赤にして頭を抱えながら)
「うわぁぁぁ! なんて恥ずかしいんだ……! みんなの前で、そんなこと言われたら……ふふふっ」
(にやけが止まらない)
ミャーリ(ジト目で尻尾をぱたぱたしながら)
「ルイフェル、変にゃ……全然役に立たないにゃ」
――つづく
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