赤き影と揺れる未来
会議中
メネシス(真顔で)
「……皆、赤髪の女のことは知っているか?」
その一言で空気が張りつめ、一同の視線がメネシスに集まった。
ニグラ
「やはりご存じでしたか……。奴は神出鬼没。姿を現すのは小さな事件ばかりですが、非常に胡散臭い存在です。
そして何より――逃げるとき、メネシス様の《鑑定》すら通じなかった」
ルイフェル(驚いて)
「メネシスほどの実力者が……見抜けなかったのか?」
ニグラ(うなずき)
「そうです。力量が測り知れません」
エルフィナ(真剣に)
「わたくしたちも遭遇しました。……人の形をしてはいましたが、背筋が凍るほどの得体の知れなさ……」
セリカ
「……ニグラ、お前は実際どう感じた?」
ニグラ
「正直に言えば、私の糸が通用するかも分からない。捕らえる以前に、届く気がしません。――間違いなく危険な存在です」
メネシス(低く)
「……ニグラ、方針を皆に伝えろ」
ニグラ(深くうなずき)
「はい。メネシス様は、この“赤髪の女”を最大の脅威と見ています。だからこそ魔界を統一し、力を強化しようとしている。
そして人の側もまた、国同士が連携し備えねばなりません。メネシス様はそれを望んでおられるのです」
エルフィナ(頷きながら)
「……たしかに。今のうちから準備が必要ですわ」
会議が終わったあと、エルフィナが小さく呟く。
エルフィナ「わたくし達も……備えねばなりませんわね」
その言葉をきっかけに、各々が顔を見合わせる。
エルフィナ(胸を張って、みんなに語る)
「今回の移動は船で行いますの。理由はいくつかありますわ。
まず――陸路は悪魔の残党や盗賊が多く、わたくしたちが移動するには危険すぎます。ですから、一気に移動できる船旅を選びましたの。
それから、船旅なら交易もできますし、ただの移動ではなく“外交と経済交流を兼ねた親善の旅”としても形になります。王室の名のもと、しっかり体裁を整えておりますのよ。
さらに、寄港する港町では他国からの使節団も来ているとのこと。情報を広く集めやすい場でもありますわ。今は“赤髪の女”という得体の知れぬ脅威がありますから……情報はひとつでも多く持っておくべきですものね。
もちろん――まずは謁見の間にて、王様から正式に許可をいただかないといけませんわ。これも王女としての務めでございます。
ですから、皆さま――これはただの船旅ではありません。トライヤいえラメルディアの未来を守るための、大切な航海ですわ!」
ルイフェル
「あ、ちょっといいか? 地球では豪華客船ってあって船あまり揺れないんだが、それじゃないよなぁ?」
エルフィナ(ニコッとして)
「船はゆれるものです♪ ルイフェル様〜。いつぞやの仕返しできますわ」
アーシア(励ますポーズ!)
「ルイフェル様。強い子です、大丈夫です!」
ルイフェル(半泣き)
「いや〜無理無理無理〜!絶対酔うよ〜!」
メイ=スケ
「船に沿って飛んだらよくない?」
エルフィナ(ギラッとメイ=スケを睨む)
メイ=スケ
「こわっ」
ルイフェル
「その手があったかぁ! でもな〜ずっと飛ぶのも疲れるしなぁ……」
アーシア(ガッツポーズで)
「ルイフェル様なら大丈夫です! 頑張りましょう!」
ルイフェル(ジト目で)
「アーシア、なんか根拠あって言ってる?……あっ! アーシア?目の焦点が定まってないじゃ?」
(アーシア、パタンと倒れそうになるのをルイフェルが抱える)
皆「アーシア!」
ルイフェル
「大丈夫かぁ?」
アーシア(ルイフェルに抱えられながら目を覚まし)
「壮大な話すぎて、私には理解が追いつけなくて……頭がポーっとなっちゃって。すみません」
エルフィナ(心配そうに)
「普通そうですわね。わかります。配慮が足りませんでした。すいません」
アーシア(ガバッと起き)
「いえ!すみません。なんだか怖いのと不安が一気にきて……情けないです。でも頑張りますね!船旅!」
(ルイフェル、アーシアの健気な姿を見て決意する)
ルイフェル
「わ、我も頑張る! アーシアを守るのは我だ! 船に乗る!!!」
アーシア
「無理しないでください」
ルイフェル
「大丈夫!ははは!!」
(その笑顔の裏で、すでに少し後悔していた……)
――つづく
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