セリカ登場! そして会議は
トライヤ王都、バード公爵邸──
だがその実体は「公爵一族すべてがニグラの糸で操られた人形」であり、屋敷全体も仮のメネシスの拠点と化していた。
アーシア達は月一の会議に来ていた。
メネシス達との約束ごとで、月に一度はお互いの安否も兼ねて全員で顔をあわせることにしていた。
⸻
アーシア(こっそりとルイフェルに)
「……緊張します」
ルイフェル(軽く笑みを浮かべて)
「大丈夫。我がいる」
アーシア(小さく微笑む)
「ふふっ……ありがとうございます」
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(扉が開き、ニグラが入室。口元に笑みを浮かべる)
ニグラ
「今日はいい知らせがあります。
かねてよりヴァルゼインの後継者選びがヴァルゼイン国土で行われていましたが――」
(わざと間を置き)
「国土および後継者に、メネシス様直属の配下が選ばれました!」
ルイフェル(目を細める)
「ん? それは?」
ニグラ
「順を追って説明いたします。まずは……メネシス様直属配下を呼びましょう。
――入ってこい!」
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入ってきたのは――
長い白銀に近い灰色の髪を揺らし、褐色の肌に映える戦闘服を纏った美女だった。
耳は長く鋭く伸び、左右で色の異なる“オッドアイ”――片方は黄色、もう片方は青く輝いているが瞬きすると、また色が変わる様だ。
白と黒が混じる独特の戦闘服は異国の戦士を思わせ、威圧感と美しさが同居していた。
アーシア(小声で)「……エルフ……? でも、普通のエルフとは何か違うような……」
ルイフェル(目を細めて)「気配が異質だな……ただの種族名では括れぬ存在か」
エルフィナ(緊張しながら)「綺麗ですけれど……なんだか底知れない恐怖も感じますわ……」
その姿は一見すれば「ダークエルフ」と呼んでもおかしくないが、本人はまだ何も語っていない。
ただそこに立つだけで、彼女が“人の常識を超えた存在”であることを、誰もが直感した。
セリカ・ノクターン(堂々と一礼)
「セリカ・ノクターンただいま、メネシス様の元に帰還しました!」
メネシス(静かに頷き)
「ご苦労だった。報告を」
セリカ(胸を張り)
「はっ! 少し長くなりますが……。
あたいはメネシス様のご命令で、ヴァルゼインの後継者に選ばれるべく領内に侵入しました。
剣闘士として奴らの目を引き、候補に! その後はトントン拍子に出世し……今は五大悪魔ヴァルゼインの空席に座っております!」
ルイフェル(驚愕し)
「……それって、五大悪魔になったってことか!? しかもメネシスの配下が!」
エルフィナ(緊張した面持ちで)
「いわゆる……ヴァルゼインの配下も、メネシス様が統治したということですわね……?」
ニグラ(自慢げに)
「その通りです! 偉大なる我が主は、戦争をせずにやり遂げられたのです!!」
メネシス(冷静に)
「……ヴァルゼイン配下は力こそ全ての連中」
ニグラ(軽口を叩き)
「セリカなら力は充分ですからねぇ。……頭は少しアレですけど」
セリカ(即座に睨み)
「うるさい、ニグラ!」
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(蜘蛛に操られたメイド人形が紅茶と菓子を運んでくる)
ニグラ(手を広げて)
「……さぁ、ティータイムと参りましょう」
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セリカ(えらそうに足を組みながら)
「へぇ〜、あんたがエルフィナか。……なるほどね!
メネシス様が好きな子ってのは、あんたなんだな〜!」
アーシア・ルイフェル・スケカク「!?」
ルイフェル「はぁああ!?」
エルフィナ(真っ赤になってあたふた)
「え、えぇ!? そ、そんな……あ、あの部屋は……ええと……戦略的資料の保管室ですからぁ!
決して……わたくしのグッズではございませんわぁ! きっと誤解ですぅ!」
メイ=スケ(小声であくび交じり)
「……“誤解”って言い方が、逆に怪しいんですよねぇ」
(メネシス、珍しく慌てて小声で)
「……っ……ち、違……」
(しかし言葉にならない)
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◆ニグラとセリカの口喧嘩
ニグラ(ぴしゃりと)
「主が困ってらっしゃる! 余計なことを喋るな、この脳筋!」
セリカ(即座に立ち上がり)
「あ゛ぁん? なんだとぉ!? あたいのどこが脳筋だってぇ!? 今ここで決着つけんぞ!」
ニグラ(ジト目で)
「そうやってすぐ力で解決しようとする、それが脳筋だろ!」
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メイ=スケ(眠そうに目をこすりながら)
「……エルフィナ様って、ほんと鈍感すぎですよぉ〜……。
みんな見てるのにぃ……」
エルフィナ(涙目で真っ赤)
「ええぇぇ!? ち、違いますのにぃ〜!」
ティナ=カク「スケ! 鈍感だが、鈍感と言うな! 姫様に失礼だろ!」
エルフィナ(涙目で)「ひどいですわ〜」
メイ=スケ(笑いながら)「泣かしたよー」
ティナ=カク(慌てて頭を下げ)「す、すみません」
――その時。
いつの間にか横にいたメネシスが、そっとハンカチをエルフィナに差し出した。
エルフィナ(ちょっとびっくりして)「うわ、ありがとうございます? ん? わたくしの……イラストハンカチ……?」
(ハンカチにはエルフィナを可愛くデフォルメしたイラストが描かれていた)
メネシスは心配そうにエルフィナを見つめる。
そのまっすぐな視線に、エルフィナは照れながらも頬を赤らめた。
エルフィナ(ほほを染めて微笑み)「イラスト可愛いですわね♡ 本当に!ありがとうございます」
メネシス(目をギランと光らせ、上機嫌に)「ふふふっ……」
そのままエルフィナにぴったりくっつき、顔を近づけながら観察し始め、ぶつぶつと呟いた。
メネシス「ここは……もう少し可愛くしないと……いや、この線は改善の余地あり……」
ニグラ(小声でため息をつきながら)「いやー……そこは無難に返答して終わりでよかったんですが……メネシス様、照れ隠ししちゃって……」
セリカ(呆れ顔で)
「……メネシス様、病気か?」
ニグラ(怒鳴る)
「黙れ! うつけもの!!」
セリカ(牙を剥き出し)
「あーん!? やんのかぁ!?」
(ゴゴゴゴゴ……と殺気が会議室を満たす)
ルイフェル(頭を抱えて)
「……会議になってねぇだろ、これぇ!!」
⸻
――つづく
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