招かれざる客
バード公爵邸宅の立派な噴水がある中庭が見渡せる客間にて。
アーシア達とメネシス達は話を続けていた。
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ルイフェル
「それじゃフードのやつは別勢力からの?」
ニグラ
「そうですね。私も探ってはいるのですがなかなか……」
ニグラは言葉を途中で切った。
(紫の目を細め、わずかに笑う)
ニグラ
「みなさん、話の途中ですが――ちょうど来たようです」
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中庭からこちらに向かって現れたのは、フードを深く被った者。
その周囲には悪魔が四体、ぞろぞろと従っていた。
フードの者が仮面を取る。
顔全体を覆う「トカゲを模した奇怪な仮面」が露わになる。
トカゲの仮面
「……ようやくこの時がきたね〜。退屈な噂話ばかりのこの地に、少しは楽しめそうな顔ぶれが揃った」
ルイフェル(眉をひそめて)
「女の声?」
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エルフィナ(おどおどしながら)
「何度も、わたくしを狙ったのは……あなた方?」
トカゲの仮面
「何度もではないが、そうさぁ。狙ったよ」
エルフィナ
「な、何故? トライヤ国内を混乱させるため?」
トカゲの仮面(くすりと笑う)
「それもあるが……あんた、あの部屋に入ったんだろ?」
エルフィナ
「……部屋?」
トカゲの仮面
「おこちゃまだから分からないのかい?」
エルフィナ(ハッとして)
「あの! 戦略的資料の部屋!!」
「わ、わたくしの資料が、あるあの部屋!?」
トカゲの仮面
「そう、それそれ。ぬいぐるみまであったじゃないかい」
(沈黙。全員が一斉にエルフィナを見た)
メイ=スケ(にやにやしながら)
「エルフィナ様ぁ、好かれてるぅ〜」
エルフィナ(顔を真っ赤にして)
「えっ? えっ? ち、ちがいますの! あれは戦略的資料ですわぁ!」
ルイフェル(冷静に)
「そんな部屋、存在しねぇよ」
アーシア(しどろもどろ)
「そ、それ……す、すなわち……好意があるってことでは?」
エルフィナ(パニックになって)
「えっ? えっ? な、なにを……!」
(助けを求めるようにメネシスを振り返るが、メネシスはあさっての方向を見て完全スルー)
トカゲの仮面(苛立って)
「おいおい! 私らを無視すんじゃないよー!!」
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トカゲの仮面を脱ぎ捨てる。
露わになったのは黒のランジェリーを纏うセクシー美女。
ローゼン(高笑いし、狂ったように舞う)
「私はヴァルゼイン亡き後の後継者候補の1人!
ローゼン!!! ローゼン様よ!!」
ルイフェル(目を細めて)
「ヴァルゼインの!?」
ローゼン
「ククッ……“災翼のヴァルゼイン”ねぇ?
あんな大きな図体してても、中身はからっぽ。所詮ただの操り人形だったのよ」
(扇情的に腰をくねらせ、指を舐めながら自慢げに続ける)
「そう――糸を引いていたのは、この私。
ヴァルゼインが好き勝手暴れていられたのも、私が裏から力を貸してやってたから」
「でも、そのおかげで誰が本当に強いのか証明できたわ。
彼が消えた今、空いた椅子に座るのは私。“次の五大悪魔”はこのローゼンよ」
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ローゼン(芝居がかった声で)
「そしてこの最強の部下達!! 名乗りなさい!」
1.炎の悪魔
「ククッ、俺の炎で焼き尽くしてやる!
お前らは灰に――うわっ!? ま、待て!燃えてんの俺じゃん!!」
2.水の悪魔
「私は流れを操る……水はすべてを呑み込むのよ!
あれ?ちょっと待って!おい、溺れてるの私だけ――ごぼぼぼ!?」
3.風の悪魔
「俺の刃風からは逃げられねぇ!
この速さ、見えるか――あっ、え?今切ったの仲間!?ちょ、ストップ!ストッ――」
4.土の悪魔
「地を揺るがす拳、受けてみろォ!
……って、お前らなんで潰れてんだ!? え? 俺の拳で!? うそだろぉぉぉ!!」
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ローゼン(後ずさりしながら絶叫)
「なっ?なんだと??どうゆうことだぁーーー
私の、私の部下がぁ〜チリに……」
メネシス(赤い目を光らせ、静かに呟く)
「……《精神支配》」
メネシス
「ローゼン。お前、小物」
ローゼン(ガタガタ震えながら土下座)
「め、メネシス様、わたしを家来に、お……お慈悲を……」
メネシス(瞳をさらに赤く光らせ)
「いらない。自分の魔法でチリになれ」
《精神支配》が炸裂。
ローゼン
「ぎゃーーー!!!」
ローゼンは自身に魔法を発動し、そのままチリと消え去った。
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ニグラ(冷たく吐き捨てるように)
「……網にかかった。知能なき者たち。五大悪魔を目指すなら、もっと強く、そして賢くなければなりません」
それは即ち、主メネシスの格を讃える言葉。
その横で、メネシスは小さく目を伏せ、呟いた。
メネシス
「弱さは……自分にとっても、敵……」
――その声音には、己にも向けられた戒めが宿っていた。
アーシアは凍りついた空気に思わず身をすくめ、ルイフェルの肩口を見た。
彼女は小さく震えていた。
ルイフェル(低く)
「こ……これが、こちら側の悪魔……。やはり侮れない……」
それは、ラメルディアの悪魔に対する、地球側の悪魔としての率直な恐怖と敬意だった。
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つづく
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