監視モードON
⸻王宮屋敷
(朝、エルフィナの部屋前)
ルイフェルは壁際に腕を組み、無言で監視中。
エルフィナ「……あの、ルイフェル様」
ルイフェル「なんだ?」
エルフィナ「行く先々に、わたくしにピッタリくっつかなくてもいいのでは?」
ルイフェル「だめだ! 一瞬の油断が命取りになる」
エルフィナ(小声で)「……視線が痛いですわ……」
⸻
(数分後)
エルフィナ「ちょっと、行ってきます」
ルイフェル「どこへだ?」
エルフィナ(微笑みながら)「お花を摘みにですわ、ほほほ」
ルイフェル「花〜? なぜ?」
エルフィナ(額に手を当て)「……あの、ルイフェル様。深く考えなくてよろしいのですわ」
⸻
(廊下を進むエルフィナ。その背後から、やはり重い足音)
エルフィナ(振り返る)「……ルイフェル様! トイレまでついてこなくても!」
ルイフェル「護衛とはそういうものだ」
エルフィナ「……お花を摘むのは護衛対象外ですわ!」
ルイフェル「しかし敵が待ち伏せしている可能性も──」
エルフィナ「それはそれで嫌ですわ!!」
⸻
(エルフィナ、両手を腰に)
エルフィナ「……ではこうしましょう。尾行できるならついてきてもいいですわ」
ルイフェル(自信満々)「ふん、容易いなことだ」
⸻
(エルフィナが廊下を歩く。数秒後、背後から──)
ドン! カツン! ガシャン!
(ルイフェルが、廊下の花瓶や鎧立てにぶつかる音)
エルフィナ(ため息)「……バレバレですわよ」
(角の影に隠れているつもりのルイフェル。黒髪と翼が完全にはみ出している)
エルフィナ「……あの、それは尾行とは言いませんわ」
ルイフェル「……まだ訓練中だ」
エルフィナ「いや、あなた訓練必要ない立場でしょうに!」
(ルイフェルの監視はその後も続き──)
朝、廊下。
エルフィナが窓辺で紅茶を飲もうとすると、背後にルイフェル。
昼、読書しようとソファに座ると、真向かいの椅子にルイフェル。
夜、ベッドに入ると、ベッド脇の椅子にルイフェル。
エルフィナ(心の声)「……辛い……苦しい……日常生活が息苦しいですわ……」
⸻
(廊下の隅で)
メイ=スケ「……あれ、ストーカーじゃん」
ティナ=カク「しっ──! ルイフェル様がこっち見てるぞ!」
(ルイフェル、鋭い視線だけ向けて再び前を向く)
⸻
(数日後、エルフィナの部屋)
アーシアが訪ねてくる。
アーシア「こんにちは、エルフィナ様──って……えっ?」
(エルフィナ、やつれた顔で)
エルフィナ「……アーシア様……助けて……」
(そのままパタンと倒れる)
アーシア「え〜!? ちょっと!?」
⸻
(事情を聞いたアーシア、ルイフェルの元へ)
アーシア「油断じゃなくて、囚人生活です! エルフィナ様が刑務所の中みたいになってますよ!」
ルイフェル(真顔)「……だが敵は必ず来る。油断は──」
アーシア「しかも監視しすぎ! 生活まで潰してどうするんですか!」
ルイフェル「……む……」
(少しだけ視線を逸らす)
⸻
(そのとき、屋敷の外から爆音)
ドォン! ガラガラガラッ!!
メイ=スケ「! 来ましたよ!!」
ティナ=カク「エルフィナ様を避難させろ!」
(窓の外、黒い影が複数跳び移ってくる)
ルイフェル(低く)「……やはり来たか」
アーシア(険しい表情)「──私も,協力します。」
(エルフィナ、まだぐったりしたまま)
エルフィナ「……今度は別の意味で助けて……」
──つづく──
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