二重の影
(エルフィナの背後、屋根の上をルイフェルが疾走する)
ルイフェル(心の声)「……あの魔道具?“ソリ”とやら……ただの道化かと思いきや、変幻の術を使えるとはな」
(逃げるフードの人物は、壁を蹴って屋根から屋根へと飛び移る)
ルイフェル「速い……!」
ひめな(念話)『距離20、方向東南。速度上昇中』
ルイフェル「了解だ。我が翼に刻め──“加速”!」
(小さい翼が大きくなり広がり、一気に間合いを詰める)
(フードの人物が振り返り、闇色の光弾を発射)
ルイフェル(片手で払いつつ)「クソッ!煙幕か!」
(視界が闇色の霧で覆われる)
ひめな『視覚阻害。熱感知に切り替える』
(霧の中、影が四つに分かれる)
ルイフェル「分身だと……!」
(上空から風切り音、別方向から足音)
ルイフェル(低く)「罠だな」
(霧の中から飛び出した一つの影を、ルイフェルが片翼で弾き飛ばす)
ルイフェル「外れか!」
ひめな『本体確認。さらに南へ』
ルイフェル「追う!」
(路地に出た瞬間、壁際で誰かが念話しているのが視界に入る──)
ルイフェル(眉をひそめる)「……ニグラ?」
またか?
(黒衣の女性──ニグラが、誰かと念話をしているように見えた)
ルイフェル「何を……?」
(ニグラがふとこちらを振り返る。その瞬間、姿が霧のように掻き消える)
ルイフェル(険しい表情)「……怪しい、な」
ひめな『どうする? フードはまだ──』
ルイフェル「フードは……後回しだ。ニグラの行方を追う」
(闇に包まれた裏通りへ、ルイフェルの影が消えていく)
(路地に出た瞬間、壁際で誰かと念話しているのが視界に入る──)
ルイフェル(眉をひそめる)「……ニグラ?」
(黒衣の女性──ニグラが、誰かと念話?をしている。表情は静かだが、瞳の奥に揺らぎが走る)
ニグラ(ゆっくり顔を上げて)「……あっ、またお会いしましたね」
ルイフェル(鋭く)「おまえ……何をしていた?」
ニグラ(小首を傾げ、微笑む)「どうされました? そんなに険しいお顔をして」
ルイフェル「誤魔化すな。さっきまで誰と話していた」
ニグラ(小さくため息をつき、目を細める)「ふふ……それだけの力を持った方が、目くじらを立てるとは、臆病ですね。何か誤解されてるのでは?
ルイフェル「くっ…誤解?…ならば、なぜ姿を消そうとした?」
(ニグラの口元がわずかに緩む)
ニグラ「──理由は、近いうちにわかりますよ」
(その言葉と同時に、彼女の体が黒い霧となって路地から掻き消える)
ルイフェル(低く呟く)「……やはり、何かを隠している」
ひめな(念話)『追跡する?』
ルイフェル「いや……今はエルフィナを優先する。だが──必ず尻尾を掴む」
(ルイフェルが踵を返し、再び屋根へと駆け上がる)
──つづく──
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