潜む影
瓦礫と煙の中、ルイフェルは鋭く視線を走らせた。
「……いた」
フードを深くかぶった人影が、ゆらりと瓦礫の影から離れていく。
その手から黒い靄のようなものが揺れ、足元に落ちた影が蛇のようにうねっていた。
(あいつ……ただ者じゃない)
ルイフェルは一気に飛び出し、屋根から屋根へと影を追う。
人影は路地に滑り込み、壁を蹴って軽やかに進む。だがその動きは明らかに“人”のそれではなかった。
フードの奥、わずかに覗いた顔は──鱗に覆われた、爬虫類のような仮面?
「……トカゲの仮面野郎か!」
追いつこうとしたその瞬間、影が壁から飛び出し、ルイフェルの行く手を遮った。
ほんの一瞬の隙に、人影は闇へと溶けるように消えてしまう。
「クソ…逃がしたか」
ルイフェルは路地を抜けたその先で──
「……ふむ、なるほど」
薄暗い小道で、ニグラが片手を耳に当て、何やら独り言?それとも念話?をしている姿が見えた。
ルイフェルが足を止めると、ニグラはすぐに気配を察し、振り返る。
その紫色の瞳が、一瞬だけ見開かれた。
「ほぅ……偶然ですね、ルイフェル様」
意味ありげな笑みを浮かべると、彼女はその場からすっと姿を消した。
(……怪しい。だが、今は確証がない)
ルイフェルは深く息を吐き、エルフィナのいる別邸へと引き返していった。
⸻
(復興中の町)
数日後──復興の手伝いの合間。
天使ちゃんは、けが人の手当を終えると、包帯を巻いたおじさんに向かってぴしっと指をさした。
「ダメですよ! お酒はまだ控えてください! 回復が遅くなります!」
「は、はい……」おじさんはしょんぼりと頭を下げる。
ルイフェルは少し離れた場所でその様子を見て、腕を組んだ。
「……なんか天使、明るくなってないかぁ?」
「ええ、あの一件から変わりましたよ。強くなりました」アーシアは柔らかく微笑む。
天使ちゃんは振り返ってにっこり。
「アーシアさまぁ〜♡」と駆け寄って抱きつく。
それを見たルイフェルは、むすっとして小声で「また抱きつきやがって……」とぼやいた。
一方、エルフィナの寝室
大きなカバンを持って見舞いに来ているミャーリ
──エルフィナとミャーリ、布団の上にアーシアグッズを並べている。
ミャーリ(キラキラ)
「じゃじゃーん! アーシア様と“聖なるカレー鍋”チェキにゃ! この笑顔、まさに神にゃ〜!」
エルフィナ(真顔で頷く)
「これは……神聖ですわね。わたくしの“ルイフェル様と一緒に怒られているアーシア様”アクリルスタンドと並べて飾ると……尊みが倍増ですわ」
ピロン♪
エルフィナ「……ん?」
ミャーリ(ごそごそとカバンを探って)
「あっ、ルシファーママからの伝言にゃ。“夜ふかしは、お肌によくないですわ〜”って」
エルフィナ(驚愕)
「ま、まさか……今の音……それは……」
ミャーリ(取り出す)
「これ? にゃふぉんにゃ♪ ママズと連絡とるためにもらったのにゃ」
エルフィナ(内心テンションMAX)
(スマホ……! 文明の利器! わたくしの“前世”で手放せなかったあの……!
まさか、この世界で再会できるとは……! でも……)
エルフィナ(目をそらしながら)
「それは……とても……便利そうですわね。あ、あれば、まあ……使うこともあるかもしれませんわ……」
ミャーリ(にこにこ)
「ほしいのにゃ?」
エルフィナ(図星にギクリ)
「えっ……ええ、まあ、少しだけ……その……」
ミャーリ(ウィンク)
「よし! ミャーリ、ママ達に頼んどくにゃ! 明日には届くにゃ〜!」
つづく
【外部サイトにも掲載中!】
イラストはこちら(Pixiv)
https://www.pixiv.net/artworks/132898854
アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。
ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!
▼アルファポリス版はこちら
https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191




