小さな翼の誓い
天使ちゃんは震える手でエルフィナの身体を支えた。
「だ、だめ……目を開けてください……!」
声がかすれ、視界が涙で滲む。
胸の奥で、何度も「怖い」「無理」という言葉が押し寄せてきた。
──でも、今は泣いている場合じゃない。
目の前で倒れているエルフィナを、このまま失うわけにはいかない。
天使ちゃんはぎゅっと唇を噛み、両手を組み合わせた。
指先に小さな震えが走る。だが、離さない。
手のひらの間に、やわらかな聖光がぽつりと灯った。
その光は、彼女の決意に応えるようにじわじわと大きくなっていく。
そこへ駆け込んできたルイフェルの鋭い声が響く。
「ひめな、周囲警戒だ!」
「了解」
ひめなが槍に変幻しルイフェルが構え、素早く周囲を見渡す。
ルイフェルは爆発音を聞きつけ、町の巡回から真っ先に駆けつけてきたのだ。
同時にアーシアへ念話を飛ばし、彼女も全力で現場へ向かってくる。
天使ちゃんは膝をつき、エルフィナの胸元へそっと手を当てた。
「どうか……治って……!」
かすかな祈りが漏れる。
額には冷や汗がにじみ、肩で息をしながらも魔法の詠唱を続けた。
聖なる光が彼女の小さな身体を包み込み、周囲の焦げた匂いを押しのけるように暖かく広がっていく。
手の下で、かすかに脈が脈打った。
「大丈夫、あなたならできる……」
背後に来たアーシアが、そっと天使ちゃんの背に手を置き、アーシアもまた神聖魔法の詠唱を唱える。
その声は、震える心を真っ直ぐに支える光のようだった。
「……っ、はい!」
天使ちゃんの瞳が決意の光を帯び、光はさらに強くなる。
エルフィナの呼吸が少しずつ整い、頬にわずかな色が戻ってきた。
「よかった……」
安堵の涙が天使ちゃんの頬を伝い、光の粒となって舞い上がる。
その時、ルイフェルが険しい表情で視線を走らせ、低くつぶやいた。
「……怪しい奴がいる」
瓦礫の向こう、薄い煙の中に、フードを深く被った人影が静かにこちらを見ていた──。
つづく
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