天使ちゃん、降臨!
魔道スピーカーからは「悪魔軍、本隊撤退!」との報せが流れ、町中に歓喜の声があふれた。
その瞬間――アーシアの全身を柔らかな光が包み込む。
足元には、複雑で美しい紋様の魔法陣が浮かび上がり、まばゆい輝きが空気を震わせた。
光の中心から現れたのは、透き通るような金髪と、純白に輝く羽を持つ天使。
舞い降りるその姿は、まるで絵画の一場面のように神々しく、人々の息を奪った。
天使ちゃん
「お久しぶりです♪ リュミナ様〜! 天使ちゃん来ましたぁ〜! どこを治療しましょう?」
(透き通るような肌、純白のドレス。美少女は宙に浮き、アーシアのそばに降り立つ)
天使ちゃん
「……ん? リュミナ様ですか?」
アーシア
「あの〜、わたしはアーシアといいます」
天使ちゃん
「アーシア?? 本当ですかぁ? リュミナ様ではないんですか?」
アーシア
「はい……」
も、
ミャーリ・アーシア・ナリア・ミャーリ母(声をそろえて)
「も?」
天使ちゃん(ビクッとして)
「もしかして、私を騙そうとしてるのでは〜!? こわい〜こわいですぅ〜! 知らない人だぁ〜こわい〜!」
(ちぢこまり、両耳をふさいで目をつぶり、ブルブル震える)
ミャーリ
「大丈夫かにゃ?」
アーシア
「戸惑ってらっしゃるのでは?」
ナリア
「戸惑ってる? そうかもです」
ミャーリ母
「なんだかね〜」
(ミャーリ母は天使ちゃんの頭をポンポンと優しくなでる)
ミャーリ母
「大丈夫だよ〜。みんな親切な人達だよ。あんたの力を貸してほしいだけさぁ」
天使ちゃん(小さくビビりながら)
「本当に……ほんと〜ですか?」
ミャーリ母
「ほんとだよ〜」
天使ちゃん
「本当にほんとですね?」
ミャーリ母
「本当にほんとだよ〜」
天使ちゃん
「絶対ほんとですね? ほんとなんですね?」
ミャーリ母(優しく微笑んで)
「ほんとだよ〜。さぁ、顔上げて!」
(天使ちゃんは恐る恐る顔を上げ、ミャーリ母を見る。その頬には小さな切り傷があり、血がにじんでいた)
天使ちゃん
「ち、血が〜!」
(パタンと倒れてしまう)
ミャーリ
「お母さんの頬の血見て気絶したにゃ〜」
ミャーリ母
「やれやれ、気弱なお嬢さんだね〜」
ミャーリ
「あめのちゃんが言ってた。ちょい性格は……めんどいやけどってこれにゃ」
(天使ちゃんの背中をペシッと叩き、気つけして起こすミャーリ母)
天使ちゃん
「ふわ〜、私は〜どうしたんれしょー?」
ミャーリ
「血を見て気絶したにゃよぉ〜。大丈夫にゃ?」
天使ちゃん
「私、血や怪我が苦手で〜……見ちゃうと、グゥーってなってパタンてなっちゃいますぅ〜」
アーシア(心配そうに)
「そうですかぁ〜。それはお辛いですねぇ」
(アーシアの優しい口調と仕草に、天使ちゃんは心の中で叫ぶ)
天使ちゃん(心の中)
(うわー綺麗〜可愛い〜! アーシア様、好き♡ 優しいし……)
天使ちゃん
「アーシア様♡ だだ大丈夫ですぅ〜! それで治癒をすればいいんですねー?」
アーシア
「はい! お願いします。本当に大丈夫ですか?」
天使ちゃん
「はい、なんとかぁ〜。それじゃ重症な方から見ていきます!」
(しかし、血や怪我を見るたびに気絶→気つけされ起きるを繰り返す天使ちゃん)
天使ちゃん
「な、なんとか治療できました……ふぅ〜」
アーシア(にっこりして)
「ありがとうございます。お疲れ様です」
(そう言い、まだ少しふらつきながらアーシアは避難所の外へ向かう)
天使ちゃん
「ど、どこに?」
アーシア
「私も力が戻ってきたので、避難所外に行って治療をしますね」
天使ちゃん(少し躊躇しながら)
「そ、それなら……方法があります」
(頬を赤くし、もじもじしながら)
天使ちゃん
「契約のキスをすれば、広範囲の回復魔法ができます」
アーシア
「そ、そうですかぁ〜」
(お互いにモジモジする二人)
アーシア
「や、やりましょう!」
天使ちゃん
「は、はい! ちょっ、ちょっと外の、人がいない場所に……」
アーシア
「そーそうですねー」
(少し離れた場所で)
ミャーリ母
「初々しいね〜」
ミャーリ
「二人どこ行くにゃ? ついて行こうっと」
ミャーリ母
「ミャーリ、行ったらダメだよ」
ミャーリ
「なぜにゃ?」
ミャーリ母
「んー……いろいろあるんだよ。今は行ったらダメ」
ミャーリ(目を丸くして)
「まさか? 契約キスにゃ?」
ミャーリ母
「えー、どしてそんなこと知ってるの?」
ミャーリ(自慢げに)
「だって、あめのちゃんが言いまくってたにゃ」
ミャーリ母(右手で顔を押さえ)
「あー……あめのちゃん〜」
⸻
(外に出た二人。町は建物が潰れ、悲惨な有様)
アーシア(廃墟となったいつも通っていた、カフェを見て、切なそうに、ボォーとしていた。)
天使ちゃん
「あの〜アーシア様? 大丈夫ですか?」
アーシア
「……ごめんなさい。見慣れた町が、こんなことになってたから」
(その時、天使ちゃんが足をもつらせ、こけかける)
アーシア
「あっ!」
(助けようと手を伸ばした拍子に、二人の唇が触れる。そのままもつれて転び、天使ちゃんの体が光に包まれる)
天使ちゃん(半泣きで)
「え〜ウソー! もっとこう、グゥーっと劇的なキスがぁ〜……」
アーシア
「劇的なキス? ん?」
天使ちゃん(慌てて)
「いやいや、違います! これで契約されました! なので、広範囲に回復魔法を使います!」
(天使ちゃんがふわりと浮き、頭上に光の輪が現れる。優しい癒しの歌声が町と王宮、トライヤ全土に響く)
「治ってる!」
「て、手が動く!」
「足が治ったわ!」
「妹の怪我が治った!」
「お父さん!」
「お母さん、治ってよかった!」
(アーシアの痛みも消え、体が軽くなる)
アーシア
「清々しいです。良くなりました。ありがとうございます」
天使ちゃん
「それはよかったです」
(その時、背後から不穏な声)
「おいおい……こんなところに聖女と天使が」
(悪魔の残党たちが現れ、アーシアはガタガタ震える天使ちゃんの前に立ち守る体制に)
──つづく
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