表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/150

災翼の咆哮

土煙が舞い、黒い瘴気が地を這うように広がった。夜の帳すら飲み込むような暗紫の魔法陣が地を割り、地鳴りと共に巨大な影が浮かび上がる。


 ──現れたのは、災翼のヴァルゼイン。


 その姿はまさに悪夢の権化。

 身の丈は三メートルを優に超え、歪んだ骨の翼と黒い羽根を背に揺らし、仮面めいた骸骨の顔の奥では、赤く光る双眸が怪しく明滅していた。

 皮膚は暗紫に染まり、表面には魔力が滲み出すように発光するヒビ割れが走っている。

 鎧のように鍛え上げられた上半身に対し、下半身は漆黒のローブに覆われ、宙に浮かぶその様は、まさに災厄そのもの。


 硫黄と墨を混ぜたような腐敗の臭気が、風に乗って広がる。


「──フッ、愉快だな……」


 ヴァルゼインは潰れた王宮を見下ろし、牙のような笑みを浮かべた。


 その真上から、軽やかな声が降る。


「よお〜災翼のヴァルゼイン。久しぶりだなぁ〜」


 声の主は、宙に浮かぶ黒髪の少女──ルイフェル。

 金色の瞳に冷たい炎を灯し、手には黒き魔槍デビルマスターひめな、


「ほう……臆せず来たか。弱き悪魔よ」


 ヴァルゼインは顔を少しだけ上げ、その瞳に邪悪な輝きを宿す。


「なぁ〜ニヤニヤしてるけど、もうすぐ消えるのに、何がそんなに楽しいの?」

 (ルイフェルは魔槍を軽く構えた)


「笑いが起きるだろ、この状況。この国も、お前も、滅ぶのだからな」

 (ヴァルゼインは両翼を広げ、重く響く声で嗤った)

「負の感情が満ちたこの地において、この《ヴァルゼイン》──無敵よ!!」


「……ほー。そうくるか〜」


 (ルイフェルの口元がゆるく吊り上がる)


 その瞬間、ノームからの念話が走った。


『ルイフェル姫様! ヴァルゼインの能力……以前より強化されております!気をつけてください!』


「わかった!」(ルイフェルが返すや否や)


「──虚空断裂ヴォイド・リフト


 (ヴァルゼインの声と同時に、空間が裂けるような音が響いた)


 裂け目から放たれたのは、無数の風の刃。それは剣のように鋭く、斬撃の嵐となってルイフェルたちへ殺到する!


「ひめなっ!」


 (即座に魔槍ひめなが無言で結界を展開。風の刃がそこに衝突し、火花とともに弾ける)


「おいおい〜いきなりそれかぁ〜」

 (ルイフェルが肩をすくめる)


「その程度で終わると思うな……」

 (ヴァルゼインが浮遊しながら空中を滑るように前進し始める)


 ──激突の予兆が、空気を張り詰めさせた。


 闇の災翼と、地球の魔界の姫と魔槍。


 次なる一撃が、戦場を飲み込む。



虚空断裂ヴォイド・リフト──第二波」


 ヴァルゼインが両翼を大きく広げた瞬間、空間がさらに裂け、斬風の群れが連続して放たれる。


 裂け目は次々と開き、風の刃が雨のように降り注いだ。


 「──ッ!」


 ルイフェルは咄嗟にひめなを構え、地面を蹴る。


 魔槍・ひめなが半円状の結界を展開し、風刃を弾きながら突き進む。結界は槍そのものから発される闇の盾──ひめなの意思による自動防御だった。


 「……やるな!デビルマスター!」


 (ルイフェルが笑みを浮かべながら、宙に跳び上がる)


 そのままヴァルゼインへ向けて魔槍を投擲!


 「──喰らえぇっ!」


 槍は雷鳴のような衝撃波を放ちながら飛び、ヴァルゼインの胸元へ――


 ──ズガァン!!!


 爆音とともに、紫の火花が弾けた。


 だが。


 「ふん……貫けぬか」


 (ヴァルゼインは表情一つ変えず、胸から魔槍を抜き取った)


 「この肉体は、呪いと風の魔力で強化されている……お前たちの攻撃など──」


 ヴァルゼインの言葉が終わる前に。


 「──“分身”」


 ルイフェルが小さくつぶやいた。


 ヴァルゼインの背後、足元、そして真上から──三人のルイフェルが同時に現れた。


 「……!? なんだと……ッ」


 それは、ひめなの槍としての能力。

 魔槍ひめなが作り出す“魔力の残像”──見た目も動きも本物と見紛うほどの実体化分身。


 三方向からの同時攻撃。

 ヴァルゼインが応じる間もなく、三人のルイフェルが同時に突撃!


 「──魔槍三連突トリア・ランス!!」


 ルイフェルの叫びとともに、三本の魔槍がヴァルゼインの身体を貫いた。


 ズバァーーー!!!!


 ヴァルゼイン

「グアァアーーー!!!」

(仮面のような顔に亀裂が走り、骨のような音が大気に響き渡る)


 バキィィィン!!!


(ヴァルゼインの巨大な身体が仰け反り、黒き羽根が吹き飛ぶ)


ヴァルゼイン(苦しみ、吠える)

「ま……まだだァアアァァ!!!」

(身体中から黒風が溢れ出し、地面をえぐり始める)


ひめな(冷静に)

「しつこい」


(槍を構える。無言の圧力がヴァルゼインを包み込む)


ルイフェル(口元に不敵な笑みを浮かべ、


ヴァルゼインを睨みつける)


──つづく


【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ