王宮急行!ハエ男爵の覚醒?
(風の唸りが響く中──エルフィナは、必死に王宮へと急いでいた)
ティナ=カク(風魔法で並走しながら)
「第一王女から第四王女は、みんな別防衛に出てます。」
エルフィナ(困った顔で)
「じゃあ……王宮には、お父様と、わずかな近衛兵だけですわね……」
(顔が青ざめる)
エルフィナ(真剣な表情で)
「まずいですわ。もっと急げますか? ハエ男爵様!」
ハエ男爵(目をキラキラさせて振り返り)
「もちろん〜!! ギューッと掴んでください! エルフィナ様! ギューッとです!!」
エルフィナ(少し戸惑いながらも)
「はい、わかりました……(きゅっ)」
(エルフィナがハエ男爵の服を掴む)
ハエ男爵(わずかに、ほほえんだように見える)
(風魔法で地面を蹴り、加速するカクとスケそしてハエ男爵)
メイ=スケ(小声で)
「やっぱりセクハラでは?」
ティナ=カク(慌てて)
「やめろ! 勘違いだ、スケの!」
エルフィナ(明るく笑って)
「そうですわよ〜。やめなさい!」
ハエ男爵(前を見たまま、声を張る)
「私はこんな身なりです。勘違いしても仕方ありません。──エルフィナ様、もう少し寄ってください」
エルフィナ(素直に)
「はい!」
メイ=スケ(震える声で)
「騙されてるよぉ〜、こいつに……(ぼそっ)」
ハエ男爵(急停止して)
「──着きましたぞ!」
エルフィナ(微笑んで)
「ありがとうございます! ハエ男爵様。降りますね」
(エルフィナが、ひらりとハエ男爵の腕から離れる)
ハエ男爵(小さくつぶやくように)
「あっ、あ〜……」
(どこか、悲しそうに見える)
メイ=スケ(すかさず指を差し)
「ほら! エルフィナ様にひっつきたかったのに、離れたから残念がってるよ!」
エルフィナ(怒らずに)
「ダメですよ。ハエ男爵様は、わたくしの怪我を案じてくださっているのですわ」
ハエ男爵(姿勢を正して)
「そうです。……勘違いさせてしまい、すいません」
メイ=スケ(くぅ〜〜っと顔をしかめ)
「こいつぅ〜〜〜〜」
ティナ=カク(強引に)
「ほら! 行くぞ!!」
──そして一行は、ついに王の謁見の間へとたどり着いた。
(王が立ち上がり、椅子の前に立っている。その隣には……大臣)
エルフィナ(警戒しながら)
「……大臣? なぜお父様のすぐ横に?」
大臣(にっこりと笑い)
「これはこれは、エルフィナ様。どうされました?」
エルフィナ(きっぱりと言い切る)
「どうされました、とは? 大臣、今の状況を把握されていないのですの? あまりにも悠長ですわ」
大臣(やや焦りながら)
「そ、そーですねぇ〜。でぇ、姫様は何をしにこちらへ?」
エルフィナ(毅然と)
「お父様を、国王を、安全な場所へお連れするためですの!」
大臣(不快そうに)
「それは手続きがいりますし、それに……なんですか? その得体のしれぬ者は……」
(ハエ男爵をジロリと見つめる)
エルフィナ(声を強めて)
「この方は味方ですわ! とても強い味方ですの!」
大臣(何かを言いかけるが──)
ハエ男爵(前へ出ながら、声高に)
「エルフィナ様、ありがとうございます! “強い味方”! いい響きでございます!」
(そのままエルフィナに手を伸ばし、ほっぺをさわさわ)
ハエ男爵(恍惚とした表情で)
「エルフィナ様こそ、可愛くて、ふわふわして、やわらかいですよ……この、ぷにぷにのほっぺた♡」
王様(眉をつり上げて、大臣から少し離れ)
「やめろぉ! 触るんじゃない!!!」
ハエ男爵
「そして……このキュートなくちびる♡」
王様(ブチ切れて、走ってくる)
「おのれ〜〜〜ッ!!」
(大臣が慌てて王を追おうとした瞬間──)
エルフィナ(王を飛び台にして)
「──はっ!」
(大臣の顔に、飛び蹴りを一撃)
(ガシィィンッ!)
(大臣が手からナイフを落とした)
エルフィナ(笑顔で)
「ナイスです! ハエ男爵様!」
ハエ男爵(胸を張って)
「はい! よくやりました!」
王様(混乱気味に)
「ど、どういうことだ……?」
エルフィナ(息を整えつつ)
「説明しますね。お父様は、大臣にナイフで脅されて、人質にされていましたの。そこで、ハエ男爵様が機転を利かせ──よくわかりませんが、あのような行動をされて……」
(少し顔を赤らめつつ)
「お父様が怒って走ってきたときに、ハエ男爵様が『今です』と耳打ちされて……わたくしは大臣に蹴りをお見舞いしましたの!」
王様(ちょっと納得したように)
「そ、そうか。エルフィナに触ったのは、わざとだということだなぁ?」
ハエ男爵(爽やかに)
「そーでございます! 王様!!」
ティナ=カク(拍手しながら)
「さすがです! ハエ男爵様!! さっきのエルフィナ様への変な行動は……そういう訳だったんですね! 尊敬します!!」
メイ=スケ(呆れ顔で)
「嘘〜〜!? マジかー!? 信じるのそれ〜!? セクハラ、ハエ男爵、恐るべし……」
──しばらくして。
(拘束された大臣が、自白を始めた)
大臣
「……私は、悪魔に操られていたのです。スパイとして、王に近づくよう命じられておりました……」
エルフィナ(凛とした表情で)
「その悪魔の名は……?」
大臣(絞り出すように)
「“グラドゥア=ヴァルゼイン”……」
(場の空気が一瞬、凍る)
エルフィナ(深刻な声で)
「……五大悪魔の一人、“災翼〈さいよく〉のヴァルゼイン”──ついに、来ましたわね……」
──つづく。
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