トライヤ攻防戦
場面は変わり──トライヤ上空にて。
静寂の中、ルイフェルの手の中にある一本の槍が、小さく震えた。
「……3564体目、撃破」
それは、ひめなの声だった。無感情な、しかし確かに満足を帯びた囁き。
「まだまだ行くぞ、ひめな!」
すると、手に握られた漆黒の槍が、低く、しかしはっきりと声を発する。
「……分身、使う?」
ルイフェルの金色の瞳がぎらりと光る。
「ああ、やってくれ!」
瞬間、ひめなの声が静かに響いた。
「了解。……分身」
次の瞬間——。
空間が歪み、地を這うような黒い魔力が爆発的に拡がった。ルイフェルの周囲に、無数の槍が現れる。一本、また一本……それは、もはや数えることすらできない。全てが「ひめな」の分身、一本一本が意志を持ち、悪魔たちを狙っている。
「行く」
ひめなの声と共に——
ブァアアアアアアーーーッ!!!
轟音が大地を揺らし、数千の槍が、闇を切り裂く流星のように飛び出していった。鋭く、速く、正確に。ひと突きごとに悪魔の群れが吹き飛び、地面に大きな裂け目が走る。
数秒後、静寂が訪れる。
悪魔たちは——すべて地に伏していた。
ルイフェルは肩で息をしながら、静かに呟いた。
「……ひめな、分身、いいな」
すると、槍から再び声が返る。
「……ルイフェル、また1000体以上、倒した。……ほめろ」
ルイフェルはニヤリと笑って、頬をかすめる風の中、軽くひと振り。
「よし、よくやった。……さすが、我の魔槍だ」
黒槍デビルマスターひめなは、少しだけ満足げに震えたように見えた。
トライヤ防衛台──
(場面は変わり、上空を見上げるエルフィナの姿があった)
(空を舞うルイフェルと、爆発する光の中で閃く槍の残滓──)
エルフィナ(そっと目を細めながら)
「さすがです……」
その瞬間、防衛台に詰めていた兵の一人が駆け込んでくる。
兵士「エルフィナ様! 裏門の西側が手薄なため、戦況が危ういとのことです!」
エルフィナ「カクとスケは?」
兵士「既にそれぞれ別の戦線に赴かれております!」
エルフィナ(きっぱりと顔を上げ)
「……わたくしが、行きます!」
──
エルフィナが裏門の防衛地点に到着すると、そこには想定外の光景が広がっていた。
(目の前で、幼い姉妹が二人──下級悪魔に今にも襲われようとしていた)
エルフィナ(叫ぶように)
「あなたたち、今すぐ逃げなさいっ!」
駆け寄りながら魔力を纏い、手刀を繰り出す。
(ドッ!!)
衝撃波とともに悪魔の体が吹き飛ぶ。
だが──
「くっ!!」
エルフィナの背後から、先ほどまで助けたはずの姉妹が襲いかかってきた。
(しまった!)
(ヒュッ)ひらりとなんとか身体をひねってかわすも──
(ザシュッ!)
右肩に鈍い痛みが走った。
鋭い爪が深々と刺さる。
「……っ!」
(肩から血がポタポタと地面に落ちる。エルフィナは苦しげに肩を押さえながら、顔を上げる)
姉妹の姿は、いつの間にか──
禍々しい下級悪魔の本性を露わにしていた。
エルフィナ「……油断しました」
(肩で荒く息をしながら、悪魔を睨みつける)
エルフィナと共に来ていた少数の兵たちも異変に気づき、駆け寄ろうとするが──
(ギギ……)
集まった悪魔たちが壁を築くように立ち塞がり、近づけない。
兵士「エルフィナ様ァーーーッ!!」
二体の悪魔がくすくすと笑い合う。
悪魔A「ふーん。死ななかったね?」
悪魔B「そうね。さすがお姫様!」
悪魔A(無垢な少女の顔のまま)
「この姉妹の姿、よくできてるでしょ?」
悪魔B
「ふふふ……参考にした本物の姉妹は、今ごろどうしてると思う〜?」
悪魔たちは不敵な笑みを浮かべ、エルフィナを小馬鹿にした目で見下ろしてくる。
エルフィナ(全身が怒りに震える)
(唇を噛みしめながら)
「変幻した……人の顔で……遊ぶな……っ!」
※転生者、地球の元・男だった頃の喋り方に戻って言う。
エルフィナ(その声色は、優しげだった日常の彼女とはまるで違う。静かで、だが芯のある男の喋り方)
「その姿で、踏みにじるようなマネ……絶対に、許さない。」
(ボゥッ!!)
怒りの魔力が全身から放出され、エルフィナの体を包む。
肩からは、なおも血が滴る。
(ポタ……ポタ……)
「許さない……絶対に……許さない……!」
その姿は、怒りと悲しみに燃える、戦士のようだった。
──つづく。
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