母との再会、そして……
(午後、トライヤ市街・王宮御用達の宿の近く)
エルフィナ(にこにこしながら)
「ミャーリさんっ!お約束通り、新作のアーシア様グッズをお見せしますわ!」
ミャーリ(ワクワクしながら駆け寄り)
「ほんとにゃ!?新しいの!?」
エルフィナは、宿の一室を開けると──中にはぬいぐるみやブロマイド、マグカップなど、アーシアをモチーフにしたアイテムがきらびやかに並べられていた。
ミャーリ(目を輝かせ)
「にゃー♡ぜんぶほしいにゃっ!」
エルフィナ(誇らしげに)
「ふふっ、ですよね〜?これは非売品も含まれてますのよ〜♡」
──そのとき。
(ガチャッとドアが開く音)
???(落ち着いた声で)
「……あら?エルフィナ?」
ミャーリ(振り返る)
「……え……?」
そこに立っていたのは、柔らかな黒髪をひとつ結びにし、筋の通った背筋と落ち着いた眼差しを持つ──武道着姿の女性。
エルフィナ(驚きつつも微笑み)
「ちょうどよかったですわ!ご紹介しますね、私の武道の先生──」
ミャーリ(震える声で)
「……ママ……?」
ミャーリの目が揺れる。
女性──ミャーリの母は、静かに歩み寄る。
ミャーリの母(小さく微笑み)
「……ミャーリ……」
ミャーリ(目を見開き、数秒間動けなかったが──)
「……!!」
(くるりと背を向けて駆け出す)
エルフィナ(焦り)
「ミャーリさんっ!?ちょ、ちょっと!?」
母(動かず、呟くように)
「……そうよね……あの子に、怒られて当然だわ……」
エルフィナ(戸惑いながらも、そっと声をかける)
「先生……ミャーリさん、どうしてあんなに……?」
母は、静かに窓の外を見ながら、ぽつりぽつりと語り出した。
母(低く、柔らかい声で)
「──あの子が小さかった頃、神聖力が強すぎたの。普通の子なら、体を壊していてもおかしくないほど……」
「私は、ミャーリの命を守るために、その力を抑える薬の材料を探しに旅立ったわ。」
「……ようやく薬の原料を見つけて戻ったとき、あの子にそれを飲ませて──本当に安心したの。」
「そしてまた旅に出たは、それは薬の材料を集めるために…ミャーリのために命を懸けて助けてくれた冒険者仲間たちがいたからよ。」
(母の目に、微かに影が落ちる)
「彼らのことも心配で危うくて……だから一緒に旅にまたでることにした。」
「それから…皆が無事に職を得て、落ち着くまで、一緒に旅に同行しようと決めたの。」
「その誓いを果たしたあと……何年も離れていた娘に、どう顔を合わせればいいのか、わからなくなって……」
エルフィナ(静かに、胸に手を当て)
「それで……ミャーリちゃんには、長い間…」
母(小さく頷いて)
「ええ……そして今は、あなたの師として、ようやく落ち着けたの。でも……本当はずっと、ミャーリのそばにいたかったけど、さすがに何年も、ほったらかしにした私をお母さんって、そんな都合よくわ…」
エルフィナ(ぎゅっと拳を握り)
「……先生、ミャーリさんは今も怒っているわけではないと思いますの」
「きっと、ただ……会いたかっただけなんですのよ。寂しくて、でも、どこにぶつけていいか分からない……そんな気持ち、私も少し分かりますの」
母(かすかに笑って)
「ありがとう、エルフィナ様……」
エルフィナ(元気を取り戻し)
「私、ミャーリさんを探してみますわ!少しでも、先生と話すきっかけを……」
母(少しだけ微笑んで)
「ええ、ありがとう……アーシア様に仕えるあなたなら、あの子ともきっと……」
(窓の外、夕暮れに染まる空に、ミャーリの小さな背中が消えていく)
エルフィナは、まずアーシアたちのもとへ急いだ。ミャーリが戻ってきているはず――そう信じていた。しかし、宿にいたルイフェルが首を横に振る。
「いや、こっちには来てない。どうした?」
エルフィナの顔がわずかに青ざめる。
「いえ……実は……」
迷いを振り払うように、エルフィナは胸の内をすべて語った。偶然、ミャーリの母と再会したこと。ミャーリが動揺して逃げたこと。そして、今は行方がわからないことを。
ルイフェルが険しい顔をするより早く、町に響き渡る大きな鐘の音が空を切った。
「緊急警報です! 街の周囲に悪魔多数、確認されました! ただちに市民は避難を!」
広場に設置された魔導スピーカーが、空気を裂くように告げた。
エルフィナは顔を引き締めた。
「ティナ=カク、メイ=スケ、お願い……ミャーリさんを見つけて。どんな手を使ってでも!」
「了解!」
その言葉を合図に、仲間たちがそれぞれの役割に散っていく。
ルイフェルは槍を構え、「デビルマスター、行くぞ!」とひめなに声をかけた。
「了解、ルイフェル」と、ひめなが淡く光る瞳を細める。
「あめの!アーシアたちはそっち頼む!援護しながらミャーリを探してくれ!」
「まかせとき!うちは守るための鍛冶師や!絶対助けたる!」
ノームが浮上し、空間を読み取る。
「感知開始……姫様、周囲の悪魔の魔力波、捕捉しました」
――その頃。
ミャーリは町外れの裏道で、複数の下級悪魔に囲まれていた。足に傷を負い、必死に逃げようとしていたが、足がもつれ、石畳に膝をつく。
「くっ……こんなとこで……!」
悪魔たちの目が光る。だがそのとき、突風とともに斬撃の音が響いた。
「ミャーリ、下がってなさい!!」
現れたのは――ミャーリの母だった。
彼女はその体に傷を受けながらも、信じられないほどの速度で悪魔たちを切り伏せていく。その姿は、まさしく武道家のそれだった。
「お、おかあさん……!」
しかし敵もそれを見逃さない。ミャーリを狙えば母は動けない――そう判断した悪魔たちが、一斉に牙を剥いた。
「ミャーリ、逃げて!」
「えっ――」
母が身を投げ出し、娘を庇うように覆いかぶさった。
「かあさ――」
肉を裂く音。血が飛び散る。
母の口元から、鮮血が零れる。
「ミャーリ……ごめ……ん。私の……大事な、大事な……娘……おか……あさ……ん……ダメ……みたい」
「いやっ!!」
その瞬間、上空から雷鳴のような叫び声。
「ぬありゃああああああっ!!」
あめのが、巨大なハンマーを振り下ろしながら地面に叩きつけるように着地した。悪魔たちが吹き飛ばされる。
「間に合ったわ……絶対、遅れたらあかんって思てた!」
後ろから駆け寄ったアーシアが、膝をつくミャーリをそっと抱きしめた。
「ミャーリ……しっかりして!」
その腕の中で、ミャーリが震える声で叫ぶ。
「アーシア様……お母さんを、助けて……助けてよおおおおお!!」
暗雲が立ち込めるトライヤの空に、少女たちの叫びが響いていた――。
──つづく
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