帰還、そして恋の暴走
(夕焼けの光が差し込む頃──)
アーシアたちは、無事にトライヤの町へ帰還していた。
いつもの宿に向かおうとしていたそのとき──
あめの(手を挙げながら)「ちょい町見学、行ってくるわー!」
(そのまま馬車から元気に飛び出していく)
ルイフェル「宿あそこだからな!道、迷うなよー」
あめの「了解や〜!」
(あめのと別れて間もなく)
エルフィナ「アーシア様、おかえりなさいませ♡」
(ぱぁっと嬉しそうな顔を見せる)
ティナ=カクとメイ=スケ(小さくお辞儀して)「おかえりなさいませ」
(間髪入れず、エルフィナがアーシアの前に滑り込み)
エルフィナ(目をハートにして)「アーシア様♡ ほんと〜にお待ちしてました〜♡
お疲れですよね? お身体は大丈夫ですか?
お食事はまだですか? マッサージや大浴場とかどうですか?♡」
ルイフェル(ジト目で)「おい、俺たちもいるぞ!!」
エルフィナ(パチンと指を鳴らし)「あらー、いらしたんですね〜ほほほっ」
(小声で)「おじゃま悪魔〜♡」
(ベーッと舌を出す)
ルイフェル「こら!聞こえてるぞー!態度も悪いなー。王女なのに品がないぞ!」
エルフィナ(ムッとして)「別にこれぐらいなら、大丈夫な範囲ですわ!」
メイ=スケ(真顔で)「前からです。品がないのは〜。だから大丈夫です」
ティナ=カク「こら!オブラートに言え!」
ルイフェル(笑いながら)「相変わらずだな〜。おまえらも元気そうでなによりだ!」
ミャーリ「ただいまにゃ〜♪」
エルフィナ「ミャーリさん、おかえりなさい♡」
(肩に手をかけて、こっそり耳打ち)
エルフィナ(ひそひそ)「実は、ミャーリさんがいない間にアーシア様グッズの新作が出ましたの♡」
ミャーリ(目を輝かせて)「ほんとかにゃ!? 欲しいにゃ〜!」
エルフィナ「実は、もう入手済みですのよ。今度見に来てくださいな♡」
ミャーリ「わかったにゃ! ワクワクするにゃ〜!」
(ナリアは馬の手綱を持ちながら、やさしい顔でみんなを見守っていた)
ティナ=カク(ナリアに歩み寄り)「そこのお嬢様、私が馬の手綱を代わりに持ちます」
ナリア(少しびっくりして)「えっ! 騎士様にわざわざそんなことを……」
ティナ=カク(穏やかに)「大丈夫ですよ。あなたもお疲れでしょう」
ナリア(頬を赤らめながら)「……わかりました。お願いします」
(その様子を見ながら、エルフィナが思い出したように手を打つ)
エルフィナ「皆さん! 注目! 注目ですわ!!」
(バッと胸を張りながら)
エルフィナ「実は、皆さんにいい部屋をご用意しましたの!
王宮御用達の高級宿ですわ♡ お金は全部、王宮が出しますの〜!
毎日3食高級料理と、おやつ付き。お酒とワインは飲み放題♡
さらに! 屋上にはプールもありますの〜!」
ルイフェル(目が輝いて)「マジか!? それ最高じゃん!!行こう行こう!!」
アーシア(不安そうな表情で)「えっと……なぜ、王宮がお金を……?」
エルフィナ「ご安心くださいませ。今までのトライヤでの功績が認められてのことですわ♡」
(少し間をおいて)
エルフィナ(思い出しながら)「……実は、不動産投資で得たお金と、お父様(王様)にお願いしましたの♡」
──【回想:王の間】──
王「エルフィナよ、久しぶりじゃの? 今日は何用じゃ?」
エルフィナ(やや緊張して)「あの〜、物件を一つ買いたいのですが……ちょっと下がらないかなと。王宮のものでして……」
王「なにぃ!? 王宮の物件じゃと!?」
エルフィナ「は、はい。ダメ……でしょうか?」
王「ダメじゃないぞ!! タダでいいぞ!!!」
エルフィナ「え、え〜!? それはさすがに気が引けますので……」
王「わかった。ところでじゃな……」
(手を広げる王)
エルフィナ「……はい?」
王「ほら〜、よく昔、ワシに抱っこされに来たじゃろ? あれじゃ♡」
エルフィナ(固まった顔で)「……は〜い(抱きつかれる)」
──【回想おわり】──
エルフィナ(頬を染めて遠くを見ながら)「……恥ずかしい思い少ししましたけど。
これでアーシア様と最上階高級ルームで一緒に暮らせます♡ 毎日デートですわ♡
ルイフェルには最下層地下ルーム、ミャーリちゃんは中層のお部屋で……完璧!完璧ですわ〜ほほほっ!」
ルイフェル「おい、にやにやして…はぁ〜」
エルフィナ「……どーされましたの?(首をかしげる)」
メイ=スケ(冷ややかな目で)「エルフィナ様〜。興奮して全部、口に出してましたよぉ〜」
ルイフェル(怒りながら)「行くぞ!いつもの宿に!!」
エルフィナ(うるうるしながら)「ごめんなさい〜アーシア様ぁ〜!」
アーシア(額に汗をかいて)「は、はい。いいですよ〜」
(宿に向かって歩き出すルイフェルが振り向く)
ルイフェル「おーい! アーシア、早く来い!」
アーシア「それじゃあ、エルフィナ様。また次に……失礼します」
エルフィナ「アァァァ〜アーシア様〜〜〜!」
(ミャーリがエルフィナの肩をポンと叩き)
ミャーリ「抜けがけはダメにゃよ〜。まぁ、気持ちはわからんでもにゃいさ。
お互いめげずに頑張ろうにゃ〜☆」
(少しカッコつけて言う)
メイ=スケ(思わず吹き出して)「ははっ!」
エルフィナ(キッと睨みながら)「何がおかしいんですのぉ〜〜〜!」
(わーんと泣き出す)
メイ=スケ「ほら、ほら、お菓子あげますから、泣き止んで姫様〜」
エルフィナ(グスグスしながら)「……そんなので誤魔化されませんわ!」
(言いつつも、お菓子の袋にガバッと手を突っ込んでムシャムシャ食べる)
メイ=スケ「……それより、ツッコミ役のティナ=カクは?」
(向こうを見ると──)
(そこには、ほんわかした二人の世界)
ティナ=カク「ナリア……君は、なんでそんなに綺麗な声としぐさなんだい?」
ナリア(頬を染めて)「まぁ……お上手ですね。ふふ……」
ティナ=カク「ははは……」
ナリア「ふふふ……」
エルフィナ(涙目で)「ティナ=カクは置いて行きましょう……」
メイ=スケ「そーすねぇ……」
(夕焼けが静かに沈んでいく──)
──つづく。
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