敵現る
(森の中──馬車がゆっくり進む)
ナリア「どうどう……」(馬をなだめながら)
あめの「どなんしたん? ナリアちゃーん?」
(馬車が止まる)
ナリア(不安そうに)「馬がさっきから怯えてて……なんか、変な感じ」
ルイフェル「ノーム!」
ノーム(大きな目をパチパチさせて)「はい!姫様、敵ですぞぉ!! 下から来ますぞ!」
(アーシア、すぐに結界を展開)
アーシア「……全体結界、展開します!」
(地面が揺れ始め、轟音が響く)
ゴオゴオゴオゴゴ〜〜
(森の木々が倒れ始める)
あめの「でかいやつみたいやなぁ〜」(馬車の外に飛び出し、ハンマーを構える)
(ルイフェルも出ようとするが──)
あめの(手で制止し)「病み上がりは、待っときー!ここはうちがやるさかい!うちがやばなったら!!新武器でかせん頼むわ!!!」
(ドゴーン!!)
(土を突き破り、巨大なミミズ型の化け物が数体出現)
(その姿──目はなく、巨大なギザギザの口を持つ)
アーシア(驚愕して)「ルイフェル様! 神殿の高さより遥かに大きいです!!」
ミャーリ(青ざめて)「きもち悪いにゃ〜……うねうねして……」
ナリア(必死に馬をおさえながら)「落ち着いて……落ち着いて…」
あめの「五匹ぐらいかぁー!! やったるわぁ!!」
(あめの、大ジャンプ!!)
(ミミズ型化け物の頭上を飛び越え──)
あめの「おりゃー!!」
(ハンマーを振り下ろし、頭にクリーンヒット)
ガィィイィイーーンー!!
(森中に音が響き渡る)
あめの「まずは一匹やーー!!」
(続けて、二匹目が口を開け突進してくる!)
(あめの、またタイミングよくハンマーを叩き込み!)
(化け物の体が宙に浮く)
ミャーリ(目を見開き)「す、すごいにゃ〜! バカ力にゃ〜!!」
あめの(振り返って)「いやいや!バカ力って〜乙女やでぇ〜うち〜!」(照れ隠し気味にツッコミ)
あめの「どんどん来いや〜! なぎたおしたるわぁー!!!」
(その瞬間、さらに2体が地中から出現! 5体に戻る)
あめの(若干後悔して)「ありゃ……補充はやない?」
あめの「しゃーない! 行くでー!!」
(怒涛の攻撃!あめの、次々にミミズ型化け物を撃破)
(15体ほど倒すも、肩で息をし始める)
あめの「ナンボでもでるわ〜こいつら〜……こいつら動かしてる親玉おるはずや!」
あめの(顔をあげて)「新武器使う時やで!」
ルイフェル「わかった!!ノーム!感知だぁ!!」
ノーム(困惑して)「かすかに土の中から……ですが、座標が……不安定ですな」
あめの「大丈夫やぁ!! 生きた武器やから飛んで行って、敵にダメージあたえるから!」
ルイフェル「これだよなぁ〜」(懐から装飾のある短い鉄の棒を取り出す)
あめの「こう言うねん、それに!」
あめの「『魔槍デビルマスター《ひめな》』!そしたら起動するさかい!!」
ルイフェル(顔を赤くして悩みながら)「う……わ、わかったけど……え、ええ!? な、なんか……その呼び方、恥ずかしっ……!」
あめの(キレ気味で)「はぁ? うちミミズ型化け物と今16たいめと戦ってるんやでぇ!! さっさと呼ばんかい!『悪槍デビルマスター《ひめな》』ってな!!こいつら操っとる親玉!はよ倒しー!!」
ルイフェル(拳を握って)「わかった!!」
ルイフェル「『悪槍デビルマスター《ひめな》』!!!」
(ぽてっ)
(ルイフェルの手からアーシアの膝へ、小さな少女が舞い降りる)
(鉄の棒から変幻したのは、おかっぱで浴衣姿の小さい女の子)
ルイフェル「おい! あめの!!武器じゃないぞ!?なんだこれ!?」
あめの(ドヤ顔で)「可愛いやろぉ〜!うちの最高傑作やぁ〜♡」
ルイフェル(青筋ピキピキ)「おまえなー!!」
あめの「大丈夫やぁ〜武器に変幻できるから!! 行くように命令せえ!」
ルイフェル「わかった!デビルマスター!!変幻し!ミミズ型化け物を動かす奴を倒せ!」
(ひめな、ぷいと横を向く)
ひめな(ボソッと)「……ひめなって言う……」
ルイフェル「ぐぬぬ……」
アーシア(困った顔で)「ルイフェル様、呼んであげないと……ひめなちゃん、ちょっとすねてます」
ルイフェル(しぶしぶ)「わ、わかったよぉ……」
ルイフェル「『悪槍デビルマスター《ひめな》』!!敵を倒せ!」
ひめな「ラジャー!」
(周囲に魔力が走り、空間がバキバキと揺れる!)
ひめな「……変幻起動完了。撃つなら今」
(ルイフェル、槍の持ち手をガッと掴む)
ルイフェル「おりゃー!!!」
(ギューンーーンー!!)
(螺旋を描いて、槍は土中へ突き刺さる)
(しばらくして──)
ギャーーァアーー!!
(森に響く巨大な断末魔!)
(ズギュン!)
(槍がルイフェルの足元に戻ってくる)
(ひめなは再び変幻し、アーシアの膝にちょこんと座る)
ひめな(ボソッと)「倒した。……ほめろ」
ルイフェル(ジト目で)「えらそうだな〜……」
(ミミズ型化け物たちは、チリとなって消える)
あめの(汗をぬぐいながら)「いやー、みんな、おつかれ〜! うちが1番お疲れやけどなー!はははっ」
(馬車に戻ると、そこには険悪な空気)
あめの「どなんしたん?」
ミャーリ(ひめなを指さして)「こいつ!生意気にゃ!! アーシア様になれなれしいにゃ!ひざにすわるにゃ!」
ひめな(ボソッと)「……クソ猫……」
ミャーリ「うわ!クソ猫って言ったにゃ!?口悪いにゃ〜!!」
ルイフェル「……あめの〜、こいつ態度デケェぞぉ〜!言うこと聞かないし、膝から降りろって言ってるのに!」
ひめな(ボソッと)「……嫉妬かぁ……」
(ルイフェル&ミャーリ、怒り爆発)
(ナリアとアーシアが間に入り、必死に仲裁)
あめの(疲れた顔で)「はぁ〜……どっと疲れたわ〜今日は〜」(馬車とは違う方向を見て遠くを見つめる)
(馬車から聞こえるみんなの声)
「あめのー!」
「あめのさんー!」
あめの(ため息をつき)「うち、知らんで〜……」
(ノームが、そっと杖のふりをして、目を閉じる)
ノーム(小声で)
「騒がしくも、平和な一日……姫様の旅路は、波乱万丈でございますなぁ……」
―――つづく。
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