帰還を決意
(場面:ルイフェルの寝室。毒の回復が進み、まだベッドで休むルイフェル)
アーシア(そっとドアを開けて部屋に入り、ルイフェルの顔を覗き込む)
「……あっ、ねてましたか?」
ルイフェル(もそっと上体を起こす)
「ぼーとしてたぁ……退屈だー。それで、エルフィナの手紙にはなんて書いてあった?」
アーシア(小さく笑って)
「まだです。一緒に見ようと思いまして」
ルイフェル(ちょっと顔を赤くして)
「う、うん……(小さく咳をして)なーに書いてんだろなぁ」
アーシア(丁寧に手紙を広げて)
「読みますね。──『あーアーシア様、アーシア様、いまはどーされてますか?わたくしの女神アーシア様〜』」
(以下、アーシアの賛美ばかりが延々と続く)
ルイフェル(じっと聞いていて、ツッコミ気味に)
「これ、なんなんだ? 恋文かぁ?」
アーシア(少し顔を赤くしながら)
「い、一国の王女ですし、そんなことはないかと……」
アーシア(読み進めていて急に)
「あーっ!!」
ルイフェル(ビクッ)
「な、なんだ?」
アーシア(指で手紙の下部を指して)
「だいぶ下に、事件があり……赤髪の女を見たと、あります!」
ルイフェル(目が鋭くなる)
「それだぁ!! 詳しく!」
アーシア(眉をひそめて)
「……あのー、それだけです」
ルイフェル(思い切りずっこけそうな顔で)
「ん? 何なんだ!それー!! アーシアのことばっかり書いて!」
(ゴホンと咳を一つ)
ルイフェル
「いや、アーシアのことは……よく書いていいが……情報はもっと書いたらと思う……」
(場面変わって、部屋の隅──こっそり覗いてるミャーリ)
ミャーリ(ジト目で)
「ルイフェル、この間のキス騒動でアーシア様泣かせたから、きおつかってるにゃ……」
(その背後から声)
ナリア
「ミャーリちゃん、何してるの?」
ミャーリ(ビクッと振り返り、真剣な顔で)
「ライバルの偵察ですにゃ」
ナリア(ぽかんとした顔)
「??ライバル??」
(場面戻って、アーシアがルイフェルをジッと見つめて)
アーシア
「ルイフェル様、私に……きおつかってませんか?」
ルイフェル(ちょい汗かいて)
「い、いや、そんなことないぞ!」
アーシア(小さくため息、柔らかく)
「ルイフェル様は、いつものルイフェル様でいいですよ。そんなルイフェル様が私はけっこう……す、好きです」
ルイフェル(顔真っ赤になりながら)
「そ、そうかぁー! じゃ、じゃあ〜……歯磨きしてくれ!」
アーシア(にっこり笑って)
「はい♡」
(ドアの外)
ミャーリ(顔面蒼白)
「やばいにゃー!! これだとアーシア様がルイフェルにとられるにゃ〜!! なんにゃあの新婚さんみたいな話題は〜!!」
ナリア(やさしく微笑みながら、指をあごに当てて)
「新婚さん……ふふ、あんな話するかしら?」
ミャーリ(右拳をグッと握って)
「するにゃーーー!!(泣)」
ナリア(ミャーリの頭をなでながら)
「はいはい、泣かないの。ミャーリちゃんは、ちゃんと可愛いんだから」
(その背後から、あめのが満面の笑みで登場)
あめの(キラキラした目で)
「うちはナリアちゃんに会えて……ときめき、おさえられへん。なぁなぁ、今夜いっしょに枕投げしよぉ〜?」
ナリア(苦笑しながら、やさしく頭ポンポン)
「はいはい、よしよし。元気なのはいいけど、落ち着こうね?」
あめの(顔を赤くして)
「ぅわぁ〜……撫でられた……し、幸せで死にそうや〜〜〜♡」
ミャーリ(ピシッとペケ!ポーズ)
「だから!! ナリアお姉ちゃんは落ち着いた大人にゃ! そんなアタック、通用しないにゃ!!」
ナリア(ちょっと困ったように笑って)
「えぇと……2人とも、そろそろ静かにね」
(そのとき──ルイフェルがドアの外をチラリ)
ルイフェル ジト目になり
「アーシア、ドア閉めて、」
アーシア 恥ずかしそうに…
「はい」
(パタン)
(ドアの外。ミャーリ・ナリア・あめの、3人同時に)
3人
「あっ!!」
ナリア(すっと姿勢を正して一礼)
「すいません……」
(ちょっとした沈黙の後)
ナリア(落ち着いた声で)
「さぁ、2人とも下に降りるわよ」
(ミャーリとあめのを両脇に、まるで年長のお姉さんのように軽く引き寄せて)
ナリア
「今日は騒ぎすぎ。お昼寝の時間よ?」
ミャーリ
「子ども扱いにゃ〜!!」
あめの
「なら……ナリアちゃんが添い寝してくれるんやろ?♡」
ナリア(ニコッと微笑みながら)
「ふふ、それはどうかしらね?」
ーー次の日ーー
(場面:村の広場、ナリアの家の前。夕焼けがあたりを染めている)
ナリア
「…じゃあ、馬車の手配は終わったわよ。ミャーリちゃんも荷物まとめた?」
ミャーリ
「にゃ…うん。準備万端……でも……」
(チラリとルイフェルとアーシアの方を見て)
ミャーリ(小声で)
「ふたりの距離が近すぎるにゃ…旅の間に進展したらどうしよう…」
ナリア(苦笑)
「ミャーリちゃん、あなたも近いけどね」
(ナリアの肩の後ろから、ひょっこり現れる影)
あめの
「うちはナリアちゃんと馬車で隣がえぇ〜♡ 膝枕とか、膝まくらとか、膝まくらとか〜」
ミャーリ
「ないにゃっ!!そんな席割り、断固反対にゃーーっ!」
ナリア
「ちょ、ちょっと落ち着いて…!」
(その騒ぎをよそに、ルイフェルはアーシアと並んで、荷台のほうを見ている)
ルイフェル
「ふーん。意外と広いな、この馬車」
アーシア
「はい。ナリアさんが手配してくれたそうです。村で一番早くて、丈夫な馬車だとか」
ルイフェル(頷き)
「ふむ。汽車は目立つし、また敵に襲われたら困る。今回はこの方がいいかもな」
(小さく一呼吸おいて)
ルイフェル
「それに…ちょっとだけ…こうやって一緒にいる時間が長くなるのも、悪くない」
アーシア(にっこり)
「……はい。私も、そう思います」
(ミャーリ、顔を真っ青にしながら)
ミャーリ
「う、うにゃ〜〜!!こりゃ旅の間に指輪の話までいくやつにゃ〜〜!!」
あめの
「ほな、うちも指輪持っていこかな〜♡ナリアちゃんサイズ測らせてなぁ」
ミャーリ
「勝手に話進めないでにゃーー!!」
ナリア
「だ、だから落ち着いてってばぁ〜!!」
(そんな賑やかなやり取りのあと、全員が馬車に乗り込む)
⸻
(場面:馬車の中、夕暮れの道を走り出す)
ミャーリはアーシアの隣を死守。ナリアは前方で手綱を握る。あめのはちゃっかりナリアの後ろに座っている。
ルイフェル(窓の外を見ながら)
「さて、行くか。トライヤへ…」
アーシア(真剣な表情)
「赤髪の女の情報、きっと何かが掴めます」
ルイフェル(目を細めて)
「うむ。“門を開ける者”……エルフィナが見たということは、すでに何かが動いている」
アーシア(頷く)
「私たちも、動くときですね」
(馬車が夕日の中を走り抜けていく。トライヤへ向けて、静かに旅が始まる)
つづく
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