キスで混乱
(場面:ルイフェルの寝室。毒の回復で少し元気を取り戻し、目を覚ましたルイフェル。まだ安静が必要なため、クルド村の村長の家──ミャーリの実家に滞在している)
ルイフェル(寝台で目を開けながら)
「うん……外がなんか騒がしいなー?」
(窓から外を見る)
ミャーリ(怒りながら)
「ナリアお姉ちゃんに近づくにゃ〜〜っ!!」
あめの(じりじりとナリアに近づきながら)
「えぇーやん! 契約しよぉ〜? 悪いことならんし〜。ちょっと口と口つくだけやん?」
ミャーリ(全身で×ポーズをして)
「ダメー!! 絶対!!」
(それを聞いたルイフェル、顔をしかめて)
ルイフェル
「ん? 口と口?? まさか……」
(思い出す──アーシアが言った「契約しました」という言葉)
ルイフェル(むくりと上体を起こし、血走った目で)
「ミャーリ! あめの!! ちょーこい!!」
あめの(ピクリと反応し、何かを察して一歩引き)
「ちょー用事や〜〜〜〜〜!! ミャーリ行って来てぇ〜〜〜!!」
(場面転換:ルイフェルの部屋にて)
ルイフェル(真剣な顔でアーシアを見る)
「……なあ、アーシア。聞いたんだが」
アーシア(キョトンとして)
「はい! どうされましたか? ルイフェル様!」
ルイフェル(じと〜っとした目で)
「あの鍛冶師。あめの、だっけ? おまえ……キス、したらしいな?」
アーシア(ぴたっとフリーズ)
「えっ……えっ……そ、それは……契約のためで……!!」
ルイフェル(さらにジト目で)
「くぉの……っ! あいつ、あとで絶対ぶっ飛ばす……!!」
アーシア(あわててルイフェルの手を握りしめ)
「ま、待ってくださいルイフェル様! 確かに……確かにキスはしましたけど……!」
(アーシア、ぎゅっと両手を胸に当てて、真っ赤な顔で叫ぶ)
アーシア
「でも! 私のファーストキスは……ルイフェル様に、ささげましたーーーっ!!」
(間)
ルイフェル(ピタリと動きを止め、口がぽかん)
「……えっ?」
アーシア(さらに真っ赤になって目を伏せながら)
「そ、その……儀式の前……ルイフェル様が寝てる時……」
(手で顔を隠しながら小声で)
アーシア
「ちょっとだけ、ささげました……こっそり……」
(沈黙。ルイフェルの顔がみるみる赤くなる)
ルイフェル(真っ赤な顔で)
「…………なっ、何勝手なことしてんだぁーーっ!!」
アーシア(涙目で)
「だって、契約の相手が最初なんて、いやだったんですもん!!」
(そこへ、ひょこっと鍛冶場から顔を出すあめの)
あめの(ニヤニヤしながら)
「ん〜? うちが“2番目”でええって、言うたんアーシアちゃんやでぇ〜?」
ルイフェル(プルプル震えながら)
「今すぐそのハンマーごと溶鉱炉に沈めてやるぅ〜〜〜〜〜〜!!」
あめの(ギャーッと叫んで逃げる)
「ひぃっ!? なんでやぁ〜〜〜〜〜!!」
(遠くから冷ややかな声で、ミャーリが一言)
ミャーリ(ぼそっ)
「ラメルディア最大の修羅場、ここに爆誕にゃ……」
──つづく
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