鍛冶師、あめのちゃん現る!
──【トライヤ王城・エルフィナの私室】
(窓から差し込む午後の光。エルフィナは机に向かい、ふとため息をつく)
エルフィナ(小声で)
「ルイフェル様……アーシア様……無事でいてくださいまし……」
(その後ろで、メイ=スケがクッションに座ってクッキーをもぐもぐ)
メイ=スケ(口をもごもごしながら)
「絶対だいじょーぶっすよ、姫様〜……あのお二人、最強じゃないっすか〜?」
ティナ=カク(書類を整理しながら)
「フラグみたいなこと言うな。……でも、心配だな」
エルフィナ(小さく微笑み)
「……私にできること、何かないかしら……」
──【場面が変わり、ミャーリの実家・裏庭】
(鳥のさえずり、風にそよぐ草花。その中心に描かれた不思議な魔法陣)
アーシア(両手を重ね、祈るように)
「ルイフェル様を……助けたい……どうか、来てください……!」
(その瞬間──魔法陣が淡く紅く光り、中央から火柱がふっと立ち昇る)
(火がゆらぎ、そして姿を現したのは──現代風の和装スカートを着た、美少女)
(彼女は右手に、大きなハンマーを肩に担いでいる)
???「うちは! あめのっていいますぅ! よろしゅーなぁー!!」
(明るく笑って手を振る彼女。しかし周囲の空気がどこか重いことに気づき、首をかしげる)
あめの「ん? なんや、歓迎ムードやないなぁ? どなんしてん?」
アーシア(軽く頭を下げて)
「……あめのさん。お呼び立てしてすみません。実は、仲間が……毒に……」
ミャーリ(ぴょこんと手をあげて)
「ルイフェルって悪魔が……毒を吸って倒れちゃって……それを治す方法がなくって……」
あめの(ハンマーをくるりと回して)
「ほぉん、なるほどな〜。毒を打ち消す“特別な武器”を打ってほしい、ちゅー話やな?」
アーシア「はい……死神ちゃんさんが、そう言ってました……」
あめの(ニコッと笑って)
「任しとき! うちは火の神んとこの鍛冶師やさかいなぁ! あんたのその“祈り”の力、ちゃんと届いたでぇ〜」
──お互い紹介もしてしばらくして
(あめのがハンマーを背に立ち、アーシアに向かって真剣な顔)
あめの「ほんでな〜、その武器をうちが打つには……うちとアーシアちゃんが“心の契約”を交わす必要があるんや」
アーシア(まっすぐな目で)
「はい。契約、します」
あめの(頷いて)
「……ほな、やるで」
(少し間が空く)
あめの「……けどな、その契約には、キスが必要やねん」
アーシア(小首をかしげて)
「……キスとは何ですか?」
ミャーリ&あめの「「えぇぇぇーーー!?」」
(あめの、口を開いたまま硬直)
あめの「ちょ、うそやろ!? あ、アーシアちゃん、ほんまに……!?」
ミャーリ(半分泣きながら)
「アーシア様ぁ……おこちゃま過ぎるにゃぁああ!」
あめの(目を逸らしながら、顔真っ赤)
「ええと……その、キスっちゅうのはやな……こうなって、こう〜……で、ん〜〜〜……」
(恥ずかしさに耐えきれず)
あめの「……パス!! 説明む〜〜りぃ!! ミャーリちゃん! 頼むわ!」
ミャーリ「えぇぇぇ!? お子様の私がにゃ〜!?」
(ミャーリ、アーシアに向き直って)
ミャーリ「ア、アーシア様……大衆演劇は見られたことあるにゃ?」
アーシア「ありません」
ミャーリ「そ、それじゃあ……スマホでやってる恋愛ドラマ動画とかは?」
アーシア「ありません」
(ミャーリ、崩れ落ちる)
ミャーリ(泣きながら)
「やっぱり〜! アーシア様、真面目だから見てないと思ったにゃぁ〜〜!」
(あめのが吹き出しそうになりながらも、真顔に戻る)
あめの「しゃーない、うちがなんとかするわ。アーシアちゃん、こっち、耳貸してみぃ」
(アーシアが素直に近づき、あめのがそっと耳打ち)
(その瞬間──)
アーシア(ピクッと固まり、顔が一気に真っ赤に染まる)
アーシア(ふらふらと後ずさりしながら)
「……お、お時間ください……!」
(その場から小走りで去っていく)
ミャーリ(ぽかんと見送り)
「……こ、こんな清純な聖女様……なかなかいないにゃ……」
あめの「まぁええやん、待ってる間……ミャーリちゃん、ゲームやろっか! 将棋や! 初手で王手かましたるで〜」
【ルイフェルの寝室──静まり返った部屋】
(ルイフェルは熱と毒にうなされ、額に汗を浮かべている)
アーシア(ベッドの横に膝をつきながら)
「ルイフェル様……私……どうしたら……」
(震える手でルイフェルの手を握り、額に当てる)
ルイフェル(うわごとのように)
「アーシア……逃げろ……死神が……抱きつきに来るぞぉ……」
アーシア(クスッと笑みを浮かべて)
「……ふふっ、やっぱり……いつものルイフェル様ですね」
(そっと立ち上がり、深く息を吐く)
(アーシア、ぎゅっと目をつむり)
アーシア(心の中で)
(これは“契約”なんかじゃない……“誓い”です。あなたを救うための、私の──気持ち)
(そして──そっとルイフェルに顔を近づける)
アーシア(顔を赤くしながら、ささやくように)
「ルイフェル様……どうか、お目覚めください……」
(その唇が触れそうな刹那──)
──部屋の窓から光が差し込む。
──【1階・将棋対決中】
ミャーリ「ぐにゃ〜っ、また負けたにゃ〜〜!」
あめの(満面の笑み)
「ふふん、これで7連勝ぉやっ♪ なかなか楽しめるなぁ〜」
(その時、階段から足音が聞こえる)
アーシア(落ち着いた表情で降りてくる。どこか凛とした雰囲気が漂う)
あめの「おっ……アーシアちゃん! 行ってきたんか?」
アーシア(静かに微笑んで)
「はい。ルイフェル様には……ご報告しました」
あめの(ちょっと口を尖らせて)
「うちが最初ちゃうのは、ちょ〜〜〜っぴり悔しいけどなぁ〜……」
(大きなハンマーをくるりと回し、肩に担ぎ直す)
あめの「ま、しゃーない! 心の契約、成立さすでぇ! これで──武器、打てるようになるでぇ!」
(バンッと自分の胸を叩き、満面の笑みを浮かべる)
あめの「──じゃあー、やろかーアーシアちゃん?」
アーシア(びくっとして、もじもじしながら)
「あ、あのー……ちょっとだけ……待ってくださいっ……!」
(顔を真っ赤にし、両手を顔の前に出して困ったような表情)
(あめの、ズルッと転びそうになりながら)
あめの(盛大に叫ぶ)
「またかーーいっっ!!」
(その声が、クルドの山々にこだまし、静かな村に響き渡った)
ミャーリ(後ろで笑いながら)
「アーシア様、もう少しリズムよくいってほしいにゃ〜!」
アーシア(申し訳なさそうに)
「ご、ごめんなさい……!」
あめの(ハンマーを地面にドンと立てて)
「まぁええわ〜。待つわ〜。うち、忍耐強いからな〜。三秒までは」
ミャーリ(すかさず)
「短っ!!」
──つづく。
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