決戦と恐怖
「ま、魔物が……攻めて来た……」
大神殿の大理石の床の上で、アーシアはガタガタと肩を震わせながら、かすれた声でつぶやいた。
その様子を見た神官の一人が慌てて叫ぶ。
「聖女様!け、結界を!」
(そんな……町も城下もすべてを囲むなんて……私ひとりで張れるわけ……)
アーシアは心の中でそう絶望しかける。
だがそのとき――
「大丈夫だよ。」
ルイフェルが、飄々とした笑みを浮かべて彼女の隣に立っていた。
「……え?」
「行ってくる!」
ルイフェルがそう言った瞬間、杖ノームが反応する。
ノーム「姫様ァ、転移座標の設定完了ですぞ」
「よし、じい!出撃だ!」
ズンッ!
次の瞬間、ルイフェルとノームは光に包まれてその場から消えた。
―――
場面は変わって、王都デエルの城壁上。
望遠鏡を覗くデエル王が、信じられない光景に目を見張っていた。
「……な、なんだあれは。魔物の群れが……全滅……?」
魔物の進行ルートのど真ん中に、少女が立っていた。
黒髪に赤が混じる異質な存在。
その周囲には、倒れ伏す大量の魔物の骸。
「たった一人で、すべてを……?」
王が呟いた横で、臣下たちが顔を曇らせる。
「陛下。あれは……この国にとって災いとなる存在かと。強すぎる異物は、いずれ牙をむくやもしれませぬ。」
「…………」
しばし沈黙の後、王は重々しく口を開いた。
「……そのような者を召喚した聖女アーシアを、旅に出させることは既定として……」
「はっ」
「ならばその異形もまた……聖女の監視と称して、ともに旅立たせるが良い。」
「御意にございます」
――こうして、「災い」と「聖女」はひとつの運命を背負い、旅に出ることとなった。
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