バレないように
EP28「バレないように」
悪人ヅラの三人連れが、宝石屋の前で様子をうかがっている。
その横を、やけに目立つドレス姿の三人組が通り過ぎていく――
ルイフェル、アーシア、そしてミャーリだ。
「はぁ〜ん、お姉様ぁ! もっと宝石がほしいですわぁ〜っ!」
真紅のドレスに身を包んだルイフェルが、わざとらしく声を張る。
「そうですわねぇ〜、まだまだ物足りないわぁ〜♪」
白いドレスのアーシアが、涼しげに答える。
続いて、若草色のドレスのミャーリが棒読みで──
「お姉様方だけ、ずるい。私も、ほしい。です」
「にゃ……うぐっ!」
口を手で押さえるミャーリ。
悪人ヅラ三人が、じっとこちらを見る。
「これで、合ってるよな……」
小声で確認するルイフェル。
三人はそのまま固まり、背筋にじわっと冷や汗が浮きかけた、次の瞬間。
「お美しいお嬢様方〜、こちら、私のお店によっていかれませんかぁ〜?」
背後から、どこか粘っこい声がした。
「どうぞどうぞ、品揃えは豊富にございます。見て行ってくださいませ」
振り向く三人。
「こ、この……お、お店の、しゅ、主人で、ございますぅ……っ」
アーシアが引きつりながら質問する。
「はい、左様でございますとも。さぁさぁ、お嬢様方、中へどうぞぉ〜」
その時、主人がチラリと悪人三人を睨みつけ──
「ちょっとその前に。……お前達は、裏手に回るんだよぉ〜?」
チョビ髭、細身、目つきの悪いその主人の声に、三人は無言で裏手へ去っていく。
「すみませんなぁ、むさ苦しいのが店前におりまして」
「ありがとうございますっ」
アーシアが深く頭を下げる。
「し、失礼する……失礼しますわ〜っ」
ルイフェルが焦り気味に上品ぶる。
「ありがと、にゃーっ」
うっかり言ってしまうミャーリ。
「にゃー……?」
店主が眉をひそめ、疑問の声を漏らす。
「し、しまったにゃ……!」
小声でつぶやくミャーリ。
アーシアが慌てて叫ぶ。
「あっ、あー! この子、猫細工の宝石が欲しいみたいでぇ〜、にゃーにゃー言うんですぅ〜!」
「ほほほほ……」
慣れない上品笑いを必死に繰り出すアーシア。
「左様でございますかぁ。ふふふ、猫細工もございますとも〜」
「ありがとうございます……」
ミャーリは冷や汗をかきながら返事する。
「ではでは奥へどうぞ。目玉商品、ございますよぉ〜」
店主がにやりと笑う。
三人は素直に店の奥へと入っていく。
「ここに並んでお立ちくださいませ。すぐに商品をお持ちいたしますゆえ」
店主はそう言い残して、いそいそと奥の部屋へと姿を消す。
……が、次の瞬間。
三人の足元が、カタンと鳴り──
「えっ」
「きゃああっ!」
「にゃーーーーーっ!」
床がパカッと開き、三人はそのまま滑り台のように下へと吸い込まれていくのだった――。
つづく
【外部サイトにも掲載中!】
イラストはこちら(Pixiv)
https://www.pixiv.net/artworks/132898854
アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。
ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!
▼アルファポリス版はこちら
https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191




