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夫婦漫才

「まぁ話ぐらいなら聞くよ。やるかはそれからだぁ」


ルイフェルが眉間にシワを寄せて、渋々といった様子で応じる。


目の前で真剣な表情を浮かべるのは、エルフの戦士テイトだった。


「今、町トライヤでは人さらいが横行している。アジトまでは突き止めたんだが……元締めの正体が掴めなくてな」


テイトの語る言葉に、空気が一瞬引き締まる。



時が流れ、ルイフェルとアーシアは顔を見合わせる。


──ミャーリが誘拐された事件。


その記憶がよぎった二人は、同時に憤りを露わにした。


「受ける!! その依頼!!」


ピッタリとハモった声が部屋に響く。


「え……えっと、はい。ありがとうございます……?」


テイトは呆気にとられながらも、二人の息ぴったりぶりににやけてしまう。


「ほんとに仲がいいな、お前たち」


「たまたまだぁ!」

「たまたまですから!」


またしてもハモる二人。


次の瞬間、顔を見合わせたルイフェルとアーシアは、じわじわと頬を赤らめた。


そんな様子を見ていたテイトは、お茶をすするふりをして笑いをこらえる。


ミャーリはと言えば、不機嫌そうに口をとがらせていた。


(なんか面白くないにゃ……)


そのとき、ノームがミャーリの頭の中へテレパシーを送る。


「……姫様もアーシア様も、おぬしが誘拐されたことを、本気で怒っておるのじゃ」


「……うん」


ミャーリは目を細めて、小さくうなずいた。



「それより、どうして我らに?」


ルイフェルの問いに、テイトは即答した。


「そりゃあもう、ルイフェル殿はSクラスの冒険者だし! アーシア様は特級聖女ですし!」


アーシア「えぇーっ!? ルイフェル様、Sクラスになったんですか? すごいですっ!」

(ぱちぱちと拍手)


ルイフェル「もっと褒めるがいいぞぉ〜」


アーシア「Sクラスなのに、私に歯磨きやお風呂、掃除、お手入れまでさせるんですよねぇ……しかも毎日!」


(じと目)


ルイフェル「おいおい……テイトがいるのに言うなよぉ〜、小さい声で……はずかしぃ……」


アーシア「はぁい〜なんですかぁ?(耳を寄せる)」


ミャーリ「日頃のうらみにゃ〜」


ノーム(沈黙)


ルイフェル「だ、か、ら……小さい声で、はずかしぃ……」


アーシア「聞こえないですぅ〜はっきり言ってください♪」


ルイフェル「おまえ、わざとだろぉ!!!」


アーシア「そんなことしません。私は聖女ですから!嘘はつきません。」


テイトは完全に会話から取り残され、お茶をすする。


「はずかしぃって言ってんだろ!」ルイフェルが怒り出す!


「聞こえないですぅ~もっとはっきり!」いたずらな眼差しでアーシアが言う!


「おまえ!だからぁわざとだろぉ!」ルイフェル


「私は聖女ですから!嘘つきませんって!」アーシア


「目立ちたがりが!」ルイフェルが反撃する


「誰がですかぁ!」アーシアも怒り出す。


腕を組んで仁王立ちになるアーシアに、ルイフェルが食ってかかる。


「これだよぉ!」


突然、ルイフェルがミャーリの部屋の扉を開け放つ。


「みゃっ!? だ、ダメにゃ~~~!!」


そこには、部屋一面にびっしりと並ぶアーシアグッズ。


「ど、どうしたの……?」


テイトがのぞき込もうとした瞬間──


「テイトさん、神が見なくていいとおっしゃってます!」


アーシアが壁となり、テイトの視界を遮る。


「ブハハハハッ!目立ちたがりじゃんかぁ!!」


ルイフェルが下品に笑い出すと、アーシアが鬼のような目つきで睨む。


「ミャーリさ~ん……これ、どぉしたんですかぁ?」


アーシアの手が、ミャーリの頭をわしゃわしゃと撫でながらも威圧する。


ミャーリ(ビビりながら)

「ひぃっ……! じ、じつは買い物帰りに大神官様がくれて……つい……!

それで大神官様が、ミャーリもグッズつくらないかぁーって……

アーシア様みたいになりたいよねぇって……」


正直に言うミャーリ。ぐるぐる目を回しながら、


アーシア「大神官のばっ……ゴホン! いえ、バカとは言いませんよ。私は聖女ですから……」


アーシアが自分に言い聞かせるように呟く。


「すげぇなぁ、神に仕える者は……」


「一緒にしないでください!」


ぷくっと頬を膨らませるアーシア。


そして──


「はいはい、もういいかい? 夫婦漫才は」


ついにテイトがツッコミを入れた。


「誰が夫婦だぁー!」

「ですよぉー!」


またもや息ぴったりにハモる二人に、テイトは盛大にため息をついた。


──つづく。


【外部サイトにも掲載中!】

イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

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