トライヤの近衛兵団大隊長テイト
宿に戻ったアーシアとルイフェルは、部屋の中で静かに考え込んでいた。
「どうやって……王宮の大神殿に入るか、だなぁ」
ルイフェルがぽつりと呟く。
「アーシアなら有名だし、顔パスで行けるんじゃねーの?」
軽い調子で言ったルイフェルに、アーシアは小さく首を振った。
「いえ、そんなに甘くないですよぉ……王宮は、何かと規則が厳しいところですし……」
その言葉に、ルイフェルも口をつぐむ。
ノームも交えてしばし作戦会議を続けたが、名案は浮かばないまま時間だけが過ぎていく。
そのとき──。
「ただいまにゃ〜!」
元気な声と共に、買い物袋を抱えたミャーリが帰ってきた。その後ろには、ひときわ目立つ人物がいる。
「お久しぶりです」
優雅にお辞儀をしたのは、金髪ロングに整った顔立ち、どこか気品と強さを感じさせる──エルフの女性だった。
トライヤの近衛兵団大隊長、テイトである。
その姿を見て、アーシアは慌てて立ち上がり、丁寧にお辞儀を返す。
「お久しぶりです、テイト様」
「おっす」
ルイフェルは相変わらずの無愛想な一言で済ませた。
ノームは「話がこじれると面倒」と判断し、そっとただの杖のフリ。
ウルワは「ワン!」と元気に挨拶。
「ルイフェルはなんかダメダメ〜」とミャーリがあきれ気味に呟く。
テイトはそれを聞き笑いながら、「まぁまぁ、私が急に押しかけたんだから」と軽く応じた。
その様子を見ながら、ルイフェルがジロリとテイトを睨みつける。
「……なんか、厄介ごとでもあったかぁ?」
テイトはルイフェルの視線を受け止めたまま、真剣な口調で言った。
「まぁ、そうだな。二人に話があって来たんだ。実は──」
「やらねー」
即座に拒否するルイフェル。
「聞いてくれって! ちゃんといい話も持ってきた!」
テイトが声を張る。
「王宮の大神殿に行きたいって考えてたよね?」
「えっ!? な、なんで知ってるんですか?」とアーシアが驚きの声を上げる。
テイトは自信たっぷりに微笑んだ。
「ふふ〜ん。私の情報網を、なめないでほしいな」
ニヤリと笑うテイトの目が光る。
「うまい話だと思うよぉ? ……どう?」
──つづく。
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