バレた
神殿の一室。
「……お弁当、持ってきたにゃ」
ミャーリの一言により、事件は明るみに出た。
気づけば、ルイフェル、大神官、そしてなぜかアーシアまで──三人並んで正座していた。
ミャーリの前で、反省タイムである。
聖女、悪魔の王女、そして最高神官──誰もが縮こまり、怒れる猫耳少女の説教を受けているという、異様な光景。
「ミャーリが怒ると……めちゃくちゃ怖い……しかも、正論しか言わない……」
アーシアは額に汗をにじませながら、ぼーっと天井を見つめていた。
「アーシア様っ!!」
ミャーリの声が雷のように響く。
「何ぼーっとしてるかにゃ!? 聞いてたかにゃー!」
「はっ、はいっ!」
ビクリと体を震わせて返事するアーシア。
ミャーリはふんっと鼻息を荒くし、キッとアーシアをにらんだ。
「アーシア様。アーシア様は、“断る”って言葉、わかりますかにゃ!?」
「はぃぃ……」
背筋を正しながら冷や汗を垂らすアーシア。
「わかってるなら、断ってください!! なんでもかんでも引き受けてたら、アーシア様がもちませんにゃ!!」
ミャーリの声が響く。まるで母親のような迫力である。
「は、はぁ……ですがぁ……」
蚊の鳴くような声で反論を試みたアーシアだったが──
「ダメにゃっ!! 反省してくださいにゃ! 反論は禁止にゃっ!」
ミャーリは「めっ!」と人差し指を立て、アーシアを制した。
「わかりましたぁ〜……」
「本当にわかったかにゃー?」
「……はぃ〜……」
そんなやり取りを、ニヤニヤしながら見ていたルイフェルだったが──
「ルイフェルも笑ってる場合じゃないにゃっ!!」
間髪入れず、ミャーリからの一喝を受けて姿勢を正した。
やがてミャーリは、怒りを収めたのか「今晩の食材買い出しに行ってくるにゃ」と言い残して部屋を後にした。
──そして神殿の資料室。
やっと解放されたアーシアたちは、聖女の力に関する情報を求め、資料を探していた。
「うーん……どのケースにも当てはまらないなぁ……」
アーシアが呟きながら横を見ると、ルイフェルは資料本を枕にして気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「……まったく、こんなときに……」
小さくため息をつくアーシア。
そのとき、奥の棚から大神官が資料を手に持って現れた。
「アーシア様。これなんかどうです?」
「ありがとうございます!」
ページをめくったアーシアの目が止まる。
「これ……私と似たケース……!」
思わず声が漏れた。
「ん? どしたぁ〜?」
ルイフェルが寝ぼけ眼で顔を上げる。
だが──資料は、途中で途切れていた。
「これ、続きありますか? 大神官様!」
アーシアが焦った口調で尋ねる。
大神官は腕を組み、うーんと唸って答えた。
「あるとしたら……もう一つの王宮内の大神殿かもしれんのう。だが、あそこは貴族と王族、そしてごく一部の神官しか入れん場所じゃ」
「そ、そんな……」
アーシアの顔が曇る。
──つづく。




