ケンカ!
「そんなだからダメなんです!」
アーシアが眉をつり上げて言い放つ。
「なんだとぉ!? 目立ちたがり聖女!!」
ルイフェルも負けじと声を張る。
「目立ちたがりではありません! あれは職務です! 仕方のないことです!」
「へぇ〜? 案外ノリノリだったんじゃねーのか? 言ってみろぉ?」
ルイフェルがニヤリと笑うと、アーシアは頬をわずかに染め、しばし沈黙。
「……そんなこと……ありませんよぉ……」
ぽつりと小さく反論するアーシア。
「アーシア、おまえ……くっ……素直になれよな。」
ルイフェルが笑いをこらえながら言うと、アーシアはぷるぷると震えだす。
「誤解です!!」
そのとき、宿屋の奥の部屋からミャーリが眠そうに現れる。
「にゃ〜……いったいどうしたのにゃ?」
ミャーリがノームに尋ねると、ノームは困ったように杖を傾けて答えた。
「シャンプーじゃ、シャンプー……香りがどうとかでケンカしとるんじゃ」
「……シャンプー? ふたつ買えばいいじゃないかにゃ?」
「それがのぉ……シャンプーは液体でかさばるゆえ、一つしか旅には持っていけんのじゃ……」
「くだらにゃい〜〜!!」
ミャーリは頭を抱える。
「もう私はついていけません……」
アーシアが嘆くと、
「ついてこいとは言ってないぞ!」
ルイフェルが鋭く返す。
そのまま、2人はそれぞれ別々の部屋に引っ込んでいく。
「も〜う……どうすればいいのにゃ……ノームじぃ?」
「ほっとけばそのうち仲直りするじゃろ。毎度のことじゃ……」
ノームはふわふわと宙を漂いながら答える。
ウルワはソッポを向いてくるりと丸くなり、寝てしまう。
「わ、私がなんとかしないと!!」
ミャーリが拳を握りしめ、決意の炎を燃やすのだった――。




