影を祓う光
敵が放った黒い衝撃波がミャーリたちを襲う!
「下がってろ、ちび!」
ルイフェルが素早く前に出て魔力の壁を展開。ズドォン!と爆音とともに土煙が舞い上がった。
「なっ……速い!」
ミャーリが驚きの声を上げる。
「ちびは下がってろって言っただろ!」
ルイフェルが怒鳴るが、ミャーリは一歩も引かない。
「う、うるさいにゃ! 私だって……聖女になるんだから!!」
その時、敵の“影のクルド”が指を鳴らした。
すると、闇の中から複数の魔物が現れ、地面を這うようににじり寄ってくる。
「数が増えましたな。姫様、ここはまとめて――」
ノームが言いかけた瞬間。
「――待ってください!」
アーシアが前に出た。
「私が……結界を張ります!」
「できるのか?」
ルイフェルが珍しく真顔になる。
「わかりません……でも、やらなきゃ誰かが傷つくんです!」
彼女は両手を組み、祈りの姿勢を取る。
光の紋章が足元に浮かび、徐々に大地を包み込むように広がっていく。
その光を浴びた瞬間──
ミャーリの体がふわっと浮き上がり、彼女の胸に何かが走った。
「っ!? な、なにこれ……あったかい……」
彼女の体から淡い光が放たれ、耳やしっぽの先まで金色に輝き始める。
「な、にゃにゃ!? これ……何にゃ!?」
ノームが目を見開く。「これは……まさか、“浄化の血”!?」
「光のクルド……本当に存在したというのか」
敵が初めて動揺する。
ミャーリは前に出て、大きく深呼吸する。
「にゃ……私はにゃ、逃げないにゃ!」
彼女の手から放たれた一撃の光が、影の魔物たちを一掃する!
「お見事ですぞ、ミャーリ殿!」
ノームが歓喜する。
「すごい……ミャーリさん……」
アーシアも目を潤ませながら笑った。
「ふん、ちょっとは見直したぜ」
ルイフェルも少しだけ嬉しそうに呟く。
敵の“影のクルド”は後退しながら、冷たい声で言い残す。
「……光の継承者。次は、消す。」
空間の裂け目とともに消えるその影。
戦いは一旦、終わりを迎えた――
敵を退け、辺りにようやく静けさが戻った。
風が草をなびかせる中、アーシアはミャーリに駆け寄る。
「すごいですミャーリさん!! あの光……まるで伝説の聖女みたいでした!」
「ふふふ〜♪ これのおかげにゃー!」
ミャーリはポンと懐から一冊の本を取り出す。
「そ、それはっ……!」
アーシアの顔が真っ赤になる。
『アーシア様自伝本!〜聖女はこうして修行する!!〜』
ルイフェルがぶっ…と笑いをこらえながら、横で肩を震わせていた。
「そ、それは教会の広報活動でして、私は決して目立とうと思って作ったわけではっ……!」
ミャーリはうっとりした表情でページをめくる。
「にゃ〜、この”朝の祈りは全力で声を出す”ってところ、すっごく参考になったにゃー!」
「~~~~ッ///」
アーシアの顔がさらに真っ赤に。
さらにミャーリがカバンをごそごそし始めた。
「そういえばにゃ、この本、サイン入り特装版とアクリルスタンドもあったにゃ!」
「ミャーリさーんっ!! やめときましょうね〜っ!!」
アーシアがものすごい形相で止めに入る。
「ひゃっ……わ、わかったにゃ! 今ちょっとだけ命の危険を感じたにゃ〜……」
ノームが空中をふよふよと漂いながら言う。
「……アーシア殿、人気は力の証ですぞ?」
ルイフェルはふっとため息をつく。
「まったく……これで本当に“強いやつ探しの旅”なんだよな?」
ノームがくるくると宙を回りながら応える。
「むしろ“聖女様巻き添えの珍道中”という方が正確かもしれませぬな……」
「そ、それは否定できません……!」とアーシア。
こうして一行は、次なる“強敵”へと歩みを進めるのだった――。




