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旅路の予定

船の食堂は、いつものように賑やかな昼食の時間だった。

スープの香りとパンの焼ける匂いが漂い、ミャーリの笑い声が響いている。


そこへ――

ドタドタと足音を響かせて、エルフィナが勢いよくドアを開け放った。


「皆さんっ! 緊急ですわっ!!」


一斉に視線が集まる。

アーシアがスプーンを止め、ルイフェルが眉をひそめた。


「じ、じつは……」

エルフィナは胸に手を当て、息を整える。

「学園都市国家リーザブにある、あの名門――メイデ魔導学園から知らせがありましたの。

生徒が次々と“姿を消す事件”が発生しているそうですわ!」


ざわっ――と食堂の空気が揺れた。

アーシアは真剣な表情で立ち上がる。


「それって……もしかして、研究施設の件と関係があるかもしれません!」


ルイフェルは腕を組み、低く唸った。

「それで? メイデ側はなんと?」


エルフィナは静かにうなずいた。

「……助けてほしい、とのことですわ」


ルイフェルの金色の瞳が細くなる。

「罠の可能性は? その手紙、本物か? ――それに、なぜ我々に?」


エルフィナは小さく笑った。

「ふふっ、ルイフェル様は相変わらず疑い深いですわね。……でも、そこがいいところでもありますわね。」


ルイフェルはわずかに頬をかすめるように視線を逸らし、低く答えた。

「……守りたい者がいるからな」


アーシアはその言葉に、思わず頬を赤らめて俯いた。

彼女の銀髪が、テーブルの光をやわらかく反射して揺れる。


エルフィナはジト目で二人を見ながら、やれやれとため息をついた。

「はいはい、わかりましたわ〜。まぁ、わたくしたちがこれまで奴隷商団を壊滅させてきた功績が伝わったのでしょうね。信用されて当然ですわ」


ルイフェルが小さく笑い、アーシアもうなずく。


「それで?」

エルフィナが周囲を見渡す。

「引き受けますの? 皆さん」


ルイフェル、アーシア、ミャーリ、ティナ=カク、メイ=スケ――全員が頷いた。

その空気に決意が宿った、まさにその時。


――バタンッ!


「なんや〜! うち抜きで話し進めとったんかいなーっ!!」


食堂の入口に、あめのが仁王立ちしていた。

だが――その姿を見て、全員の時が止まる。


「…………」


「…………」


「…………」


「えっ、ちょ、あめのちゃん!? 服!!」


アーシアが顔を真っ赤にして両手で目を覆う。


全員が一斉に叫んだ。

「「「えぇぇぇぇーーーっ!!!」」」


全裸で湯気を立てたまま、タオル一枚も巻いていない。

髪から雫をぽたぽた落としながら、あめのはキョトンと首をかしげた。幸い湯気が上手く隠していた。


「なんや〜? どないしてん?」


エルフィナは額に青筋を浮かべ、震える声を絞り出した。

「ど、どないしてんじゃありませんわよっ!! 服を着なさい! せめて何か羽織りなさい!!」


「あははっ、なんでやね〜ん。別に減るもんやないし〜!」


その瞬間――。


エルフィナの拳が光った。

「言ってもわからない方には――お仕置きですわ!!」


ドゴォッ!!!


「あぶばっ!? ぐへぇっ!!」


あめのの腹に炸裂したエルフィナのパンチ。

見事なフォームで吹き飛ばされたあめのは、テーブルの下に突っ込んでバターンと倒れた。


ティナ=カクが即座に反応し、無言でバスタオルをすっと被せる。


エルフィナは両手を腰に当て、優雅に鼻を鳴らす。

「女性は淑女を目指さねばなりませんのよ。――」


メイ=スケが肩をすくめてぽつりと呟いた。


「……エルフィナ様、淑女はパンチしませんよ〜」


「キュぅぅ〜……」

床でバスタオルに包まれたまま、あめのは目を回し情けない声を漏らしていた。


天使ちゃん,死神ちゃんは呆れた顔で覗く。

「…リーダー…汗」


ミャーリはくすくす笑いながら囁く。

「まぁ〜、学園行く前から波乱ですにゃ〜」


アーシアも思わず苦笑しながら頷いた。

「うん……たぶん、また騒がしくなりそうですね……」


食堂には笑いとため息が混ざり合った。




つづく


【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


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