涙の果てに…
城の屋根。
夜風が吹き抜ける中、
屋根から落ちそうになってた
あめのがいた
「うわー!死ぬかと思ったわー!……服ボロボロやん。体もススだらけやし、
ハァー疲れたわ〜」
ぼろぼろの袖を見下ろしながら、ふと思いつく。
「そうや! ここ、王城やろ? ええお風呂あるやろ絶対!
誰もおらんし、入ったろ〜。もうゆっくりしたいわ〜」
⸻
そのころ、船では。
死神ちゃんが壁にもたれ、ぼそりと呟いた。
「……遅い〜。帰りが……やっぱり……」
ぽとり、と涙が落ちる。
天使ちゃんはハンカチをぎゅっと握りしめ、うつむく。
「そうですね……でも……あめのちゃんのことだから……
きっと助かってると、信じてました……」
頬を伝う涙が、床に静かに落ちた。
海ちゃんも目を閉じて深く息を吐いた。
「……あめのなら、真っ先に戻ってくるはずなのに……」
声は冷静でも、その手は震えていた。
ミャーリは目を真っ赤にしながら泣きじゃくる。
「うわーん! あめのちゃんなら、すぐ戻ってくるのにゃ〜!!」
⸻
一方その頃、ルイザ城の大浴場。
「うわ〜〜! ピカピカやんこの風呂!! でっか!!」
あめのはきらきら光る大理石の湯船を見て大興奮。
「ヒャッホー!! 姫さま仕様やん!! お湯は〜……」
手をかざし、指先から炎を出す。
「どりゃー!! 炎魔法で一気に沸かすでぇ!!」
ボコボコボコボコッ!!
湯船が一瞬で理想の温度に。
「完っ璧!! あったか〜〜〜♡」
湯気の中に飛び込み、肩まで浸かる。
「ふ〜……生き返るわ〜。
みんな、今ごろ何してんやろなぁ……。
敵も撤退したし、もうごはんでも食べてるやろなぁ〜……」
やがて、ぽかぽかの湯の中で目を細め、
「ふわ〜〜、眠いわぁ……。ちょっと休んでから戻ろ〜……」
と呟き、そのまま湯船にぷかぷかと浮かんだ。
⸻
一方しばらくして、船では――。
海ちゃんが白い花束を手にしていた。
「……あめのに、お別れの花を……海に流そう。」
ミャーリが涙を拭いながら頷く。
「うん……さみしいけど、ありがとうって言うにゃ……」
天使ちゃんは声を震わせて叫んだ。
「あめのちゃん〜!! リーダー〜!! うわあああん!!」
死神ちゃんは黙ったまま壁にもたれ、目を閉じていた。
「……あめの……」
⸻
その静寂を破るように――背後から声がした。
「どしたん? みんなしてー?」
その声に、全員の時間が止まった。
「……え?」
死神ちゃんが顔を上げる。
振り向くと、そこに――
タオルを首にかけ、髪をツヤツヤに乾かしたあめのが立っていた。
「おーい! みんなー!! どしたんや〜!?
なんでそんな顔してんねん!!」
天使ちゃんは口をぱくぱくさせたまま絶叫。
「う、うわーっ!! で、出たーーーっ!! 化けて出たですぅー!!」
「海ちゃん!?」
と振り向いた瞬間、海ちゃんはそのまま気絶。
ミャーリは震える手であめのに近づき、
つんつん、と人差し指で肩をつついた。
「……あ、あめのちゃん……? 本物にゃ……?」
「本物やっちゅーねん!! 見てみぃ! このピカピカの髪!!
風呂入ってリフレッシュ完了や!!」
ミャーリの瞳に涙がにじみ、
「うわあああん!! 生きてたにゃああああ!!!」
そのまま抱きつくと、天使ちゃんも号泣。
「よかったぁぁぁぁ!! お風呂帰りとか聞いたことないですぅぅぅ!!」
死神ちゃんは呆れながらも微笑んだ。
「……あめの〜……クスクス」
「ははは! 心配かけたなぁ〜!」
腰に手を当て、胸を張るあめの。
その後ろでは、気絶した海ちゃんが
「……やっぱ、リーダーってそういうタイプなんだね……」
と寝言のように呟いていた。
――船には、泣き笑いの声と、
“風呂あがりリーダー”のドヤ顔が響きわたった。
つづく
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