死神、舞う
王宮の大舞踏室では、三日月刀と鎌の音が鳴り響いていた。
ガキン! キン! カン! ギンッ!!
死神ちゃんとバルムートが斬り結ぶたび、火花が散り、床石にその残光が踊る。
二人の戦いは、まるで金属同士の絶え間ない咆哮のようだった。
「ダル〜……刀〜……なかぁなかぁ〜粉砕できな〜い〜」
死神ちゃんは肩をすくめ、ぼやくように言った。
「グハハハ! 笑止……笑わせてくれるわ! 粉砕するとほざいたのは貴様だ!
ほれ、刀を粉砕してみよぉぉぉ!!」
「喋ってるのにぃ〜、割り込まないで〜。粉砕したげるよ〜……お望みど・お・り〜♡」
死神ちゃんは軽く息を吐き、体をくるりと回転させた。
続けて、もう一度――くるり。
鎌が描く軌道は、美しい弧を連ねて空を裂く。
刀と鎌が交わるたび、鋭い金属音が響いた。
ギーーーン! ギーーーン!! ギーーーン!!!
――音が、だんだんと大きく響いていく。
それはまるで、空気そのものが戦いのリズムを刻んでいるかのようだった。
死神ちゃんはさらにスピードを上げ、
まるで舞踏会で踊るバレリーナのように、回転を重ねながら攻め込む。
しかし、その瞳は冷たく、狙いはただひとつ。
体をひねり、刃の軌道を変え見極める。
――狙うは、刀身と柄をつなぐ一点。
武器という“命脈”の、たったひとつの継ぎ目。
「粉砕っ!!!」
鎌が大きな弧を描き、鋭い一閃が走る。
次の瞬間、空気が裂け、世界が一瞬静止した。
ガチャーーンッ!! ガラン、ガラン……!
三日月刀の根元が弾け飛び、破片が床へ散った。
粉砕された刃が光を反射しながら、舞踏室に金の雨を降らせる。
「ぐぬぬ……! 回転は……フェイントかぁ……!」
バルムートが歯を食いしばり、悔しげに唸った。
窓辺の月明かりが差し込み、
鎌を構える死神ちゃんの輪郭を銀に染める。
彼女はイタズラっぽく舌を出し、
「次は〜……おっさん、斬るだけぇ〜♡」
バルムートが低く笑い、牙を見せる。
「斬れるかな? お前ごときに我の鋼の肉体が! 来るがいい――!!」
「ダル〜……行きたくないなぁ〜」
死神ちゃんは肩を落とし、ぼやくように言った。
だが、その瞳が一瞬で変わる。
光を帯び、深い青から淡く光る銀へと――“死の色”に染まっていく。
彼女は鎌をゆっくりと構え、回転を加えながら振り始めた。
ブーン……ブーーン……ブーーーン……!!
鎌が空気を切るたび、低い唸り声のような音が響く。
回転の速度が上がると同時に、
彼女自身の体もくるり、くるりと舞うように回転を重ねていく。
回転で起こる風が渦を巻き、
窓辺の長いカーテンがパタパタと激しくはためいた。
窓ガラスがガタガタと軋み、まるで部屋全体がその力を恐れているかのようだった。
「――行く!」
死神ちゃんが一声叫ぶと同時に、
バルムートの体が黒炎に包まれる。
「グオオオオオッ!!!」
黒炎を纏った巨躯が、地を揺らすほどの勢いで突進する。
死神ちゃんも回転をくわえながら鎌を振りかぶり、正面から突き進む。
二人の軌跡が交わる――
――瞬間。
ガァンッ!! ドシュウッ!!
重金属がぶつかり合う音とともに、
真紅の飛沫が空を舞った。
血が、絨毯に飛び散る――。
深紅の滴が月光に照らされ、夜の静寂を染めていく。
沈黙の中で二人の影がゆっくりと離れていく…
――つづく。
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イラストはこちら(Pixiv)
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