あめの夜を駆ける
あめのは町の屋根をつたい、ミャーリたちがいる船へと向かっていた。
夜の風が荒れ、瓦の上を走る足音が重く響く。
「なんか来るぅ!? でかいやつが!!」
その声とほぼ同時に、港の方角から巨大な波が立ち上がった。
船の甲板では、ミャーリが結界を展開しながら暗い海を見つめていた。
「海が……荒れてるにゃ。海から、何か来るにゃ……?」
グギギギーーッ!!
船体が大きく揺れ、帆がきしむ。
そのとき、船室にいた海ちゃんから念話が届いた。
『ミャーリちゃん! やばいやつだ! 気をつけて! やばくなったら逃げて!』
「そんなぁー! 結界が崩れちゃうよ! 海ちゃんとの結界がぁ!!」
『大丈夫! もうすぐ――救世主、来るから!!』
海面が泡立ち、ブクブクと不気味な音を立てた。
それはまるで海の底から“何か”が目を覚ます音のようだった。
ズバアアアアアアアーーーッ!!
ザシューーーッ!!
海面が裂け、三つの首が天を仰いで吠えた。
――オオオオォォォオオオオオオ!!!
夜空を震わせる咆哮。
それはまるで、海そのものが怒り狂っているかのようだった。
「で、出たぁー!! 蛇首海龍だぁーー!!でかいよー!」
女性船員たちが悲鳴を上げ、結界の上で慌てふためく。
三本の首が同時に動き、ミャーリを狙って迫った。
「にゃーっ!!」
ミャーリは咄嗟に目を瞑る――
直後、海を叩く轟音。
パシャーーン!!
……何も起きない。
恐る恐る目を開けると――
そこには、ミャーリの目の前で仁王立ちするあめのの姿があった。
「いやぁ〜、間に合ぉてよかったわぁ〜! 一撃くらわしたら、海に逃げよった〜。
まぁ、また来るやろけどなぁ〜」
あめのは軽く笑みを浮かべ、ハンマーを肩に担ぐ。
ミャーリは大粒の涙をこぼしながら、あめのに抱きついた。
「あめのぢゃ〜ん!! 会いたかったぁ〜!! うわ〜ん、うわ〜ん〜!!」
「そ〜んなぁ喜んでくれたら、もらい泣きするやんかぁ〜」
あめのは優しく頭を撫でながら言った。
「さぁさぁ、ミャーリちゃん。さっきのやつ、また来るから逃げや〜!」
「うん! 隠れとくにゃ!」
「可愛ええなぁ〜」
その直後――
ザバァアアアアアアーーーッ!!
再び海面が裂け、
三つの首が怒りの咆哮を上げて現れた――!
――ガオオオオオーーッ!!!
海風が爆ぜ、波が甲板を叩きつける。
その咆哮に、船の帆が大きくはためいた。
あめのは堂々と前に出た。
「鳴くばかりでぇ、かかってきぃや!」
片手でハンマーを構え、目を細める。
「こんなら――うちからいくわぁ!!」
跳躍。
あめのの身体が夜空を切り裂き、
ハンマーが振り下ろされた。
――ガァイイイイイーーン!!!
夜の海に音が響きわたる
あめの
「なんやって? 防御魔法……?」
⸻つづく
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