死神の力量
玉座の間。
――ガキィィン!! ギン! ガァン!!
死神ちゃんの鎌が火花を散らしながら、覇獣バルムートの腕とぶつかり合う。
鈍い金属音が響き渡り、床が振動するほどの衝撃が広がった。
「ダルぅ〜……かた〜い!! 弾かれるぅ〜!!」
死神ちゃんは鎌を支えながらぼやく。
「ふはは! あめのとか言う奴のときは、いい勝負にはなったが――
おまえでは到底、我には勝てぬなぁ!!」
その豪声が響くたびに、玉座の柱がひび割れていく。
死神ちゃんはムッとし、頬をぷくっと膨らませて言い返した。
「おっさん〜! それ〜、負けるやつのセリフ〜!」
「どこをどうやれば、我が負ける?」
バルムートは余裕の笑みを浮かべると、突如として指を前に突き出した。
「仕方がない!! 先に、あやつらを始末するかぁー!!」
指の先には、瀕死のルイフェルとアーシアがいた。
その瞬間、死神ちゃんの瞳がすっと細くなる。
「ふ〜ん……やってみなよぉ〜?」
バルムートは口元を歪め、ニヤリと笑った。
「……かかったなぁ……」
その心の中で、黒く濁った笑みを浮かべる。
(あやつは――あめのほどのパワーはない。だが、捕らえられるスピードでもない。
しかし、仲間を狙えば必ず“盾”となり、我が前に立つ……。それが、あやつの弱点よ……!)
その思考の奥で、ドス黒い笑いが渦を巻く。
バルムートの瞳が、紅く爛々と輝いた。
「グハハハハ!! 行くぞぉぉぉ!!」
バルムートは床を蹴り、突進の構えを取る。
空気が震え、圧が走る。
ルイフェルは壁にもたれ、荒い息のまま声を絞り出した。
「アーシア……すまない……。
死神も……我が転移を断って、“戦いの結末を見たい”と言ってしまった……。
我の誤算だ……。我が囮になる……。アーシアだけでも逃げろ……!」
「いいえ……!」
アーシアは首を横に振る。
「私に、まだ治癒の魔力が残ってたら……!」
その瞬間――。
ギィィィン!!! シュッ! シュッ!!
死神ちゃんの鎌が閃いた。
バルムートの足元、玉座の床を一直線に斬り裂く!
「ぐわあああーーっ!! な、なんだとぉ!!」
轟音とともに、バルムートの巨体が床下へと崩れ落ちた。
下層へと響く落下音。
粉塵が舞い上がり、天井の装飾が揺れる。
「卑怯だぞぉぉぉ!!」
バルムートの怒号が下から響く。
死神ちゃんは肩をすくめながら、髪をくるくると指に巻きつけて言い返す。
「ダルぅ〜……どっち〜がぁ! 卑怯〜!」
そして、アーシアたちを振り返り、軽く手を振る。
「それじゃ〜、行ってくるね〜♡」
そう言うなり、死神ちゃんはためらいもなく穴へ飛び込んだ。
ヒュゥゥゥン――!
――次の瞬間、足元に広がるのは広大な大広間。
壁には美しい装飾が並び、舞踏会の名残を残すシャンデリアがゆらめいていた。
砕けた大理石の欠片が、光を反射して宙に舞う。
「へぇ〜、ひろ〜いなぁ〜……ここ、踊れそう♡」
死神ちゃんはふわりと着地し、鎌を抱えながらくるりと回る。
その動きは、まるで舞踏のように優雅だった。
「ふむ! 随分、余裕だなぁ?」
下から響く声。
バルムートが床を蹴って立ち上がると、指を鳴らした。
ズズズッ――!
魔法陣が展開され、銀色の巨大な三日月刀が出現する。
妖気を帯びたその刀身が、不気味な光を放つ。
「久々に武器を使ってやる! 貴様の自慢の鎌を、この刃で斬り伏せてやろう!!」
死神ちゃんは肩をすくめて微笑む。
「へぇ〜、じゃあ〜……ダルいけどぉ〜……その武器、粉砕するねぇ〜♡」
バルムートが雄叫びを上げ、三日月刀を大きく振り回す。
その一撃が、空気を裂いて死神ちゃんへと迫る――!
風圧で壁の絵画が舞い上がり、金の額縁が砕け散る。
広間は一瞬で戦場と化した。
鎌と刀が交差する瞬間――金属音が閃光のように響き渡る。
⸻つづく
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