ミャーリの思い出
「そうなの、ミャーリは聖女になりたくて、クルド族から離れたのね……」
アーシアは優しく微笑みながら、焚き火のそばに座るミャーリに声をかけた。
ミャーリは目を潤ませ、しっぽをくるくると振りながら頷く。
「そうにゃ!私は……ぜったいに聖女になるにゃ!!」
「父様には、“亜人は聖女になれない”って言われたけど……アーシア様みたいになりたいにゃ!!」
目を輝かせ、ミャーリは勢いよく立ち上がって言った。
「アーシア様、弟子にして下さいにゃっ!!」
突然の宣言に、アーシアはぽかんと口を開けて固まった。
「で、弟子って……私もまだまだ修行中の身ですし……」
戸惑うアーシアに、ルイフェルがニヤニヤと口を挟む。
「アーシア、弟子にしてやれよ〜。その方が面白いって」
「ふふ、たまにはいいこと言うにゃ〜。ルイフェル!大食いなだけじゃないにゃ〜っ!」
「誰が大食いだコラ」
そんな和やかなやり取りの最中だった。
──ガサガサッ!
草むらが揺れ、音に敏感なウルワがすぐさま警戒態勢を取る。
その刹那、草をかき分けて一人の女性が姿を現した。
肩で息をし、身体は傷だらけ。服は破れ、泥と血で汚れていた。
「はぁ……はぁ……聖女……アーシア様……ですか……?」
「はいっ!……あ、はい……!」
アーシアが立ち上がろうとした瞬間、
ルイフェルがその前に立ちはだかった。
「動くな。……お前、何者だ?」
女性の目がギラリと光る。
「……ふふ、バレたかい。やっぱり“あの力”を持つ者の傍には、鋭いのがついてるね」
その言葉と共に、空気が緊迫する。
女性が笑った瞬間、地面から黒い触手のような魔力が溢れ出す!
ルイフェル「おいおい、歓迎の挨拶がそれかよ」
ノーム「魔力反応、急上昇……この者、只者ではありませんぞ!」
アーシア「あなた、いったい何者なの!?」
女性(?)「私は“門”を開く者……ミャーリよ、来なさい」
突如、ミャーリの身体が光り、反応する。
「にゃっ!?な、なににゃあこれぇ!!」
その力に反応し、周囲の空間が歪み出す。地面が裂け、亜空間のような異空間が展開される。
中から現れたのは、「黒いクルド族の亜人」。ミャーリと似た耳と尻尾だが、目が濁っている。
ノーム「“影のクルド”か…これは実にややこしい展開ですな…」
ルイフェル「面白くなってきたな! 行くぞ、ちび!」
ミャーリ「にゃにゃにゃ!? ちび言うなにゃー! って、私も行くのにゃ!? 聖女アーシア様のために、戦う覚悟はあるにゃ!」
アーシア「ミャーリさん、でも危険ですから……!」
ミャーリ「大丈夫にゃ!私は――アーシア様の弟子にゃんですからっ!」
(アーシアが少し目を丸くしてから微笑む)
ノーム「ふむ……ならば我輩も同行いたしますぞ。空からの偵察は得意でしてな。ふよふよと」
ルイフェル「じい、お前ふよふよって自分で言うな」




