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迫る影


「……あれは……大神官……ダイナ……!」

アーシアの瞳が大きく見開かれる。


槍の中から、ひめなの声が冷静に響いた。

「……めずらしく呼び捨てだなぁ? アーシア」


アーシアは地団駄を踏み、顔を真っ赤にして叫ぶ。

「えー! あの人は、わたしをアイドルにした張本人なんです! 悪魔だと思ってました!!」


思い出す。

サイン会、チェキ会、握手会……。

果ては「笑顔で歌え、踊れ!」と命じられ、聖女の御勤めができないと抗議した時――。


「よいかアーシアよ! ファンは裏切らない! あなたは笑顔で舞台に立つのです!

 ――えぇ、もちろん全ては“大神官ダイナ”であるこの私の権威のために、ですけどねぇ!」


ダイナの言葉が、脳裏に響く。


「……ほら! 絶対悪魔でしょーッ!!!」

アーシアは涙目で叫んだ。


「声でかい!」

ひめなが慌てて制止する。

「見つかるぞアーシア! 落ち着け!」


少し間を置き、ひめなが続ける。

「……それに、悪魔に取り憑かれてるケースもある。ノエの時もそうだったろう?」


アーシアはきっぱりと言い切った。

「そんなことないです! 邪悪です! あの大神官は――悪魔です!」


ひめなは小さく溜め息をついた。

「……よっぽど腹が立ってたんだなぁ……」


アーシアの全身は怒りと恥ずかしさで震えていた。


一方


女船長ゾイルたちは、リリスと連携しながら町の人々を必死に逃がしていた。

金髪を乱暴に束ね、分厚い筋肉に包まれた腕を振るいながら、ゾイルは大声で叫ぶ。

その迫力ある姿は年齢を感じさせないどころか、場を支配する威圧を放っていた。


「さすがだねぇ、リリス! あんたが前に立つと、町の連中は素直に信じてついてきてくれるじゃないか!」


リリスは腰に手を当て、得意げに胸を張った。

「ふふっ♡ だってハエちゃん達が町の人に言ったところで、怖がられるだけよ。

 こういうのは――私みたいなキュートでセクシーな悪魔が“魅了”を使って言わないと、ダメなのよ〜♡」


「……それって、ただ魔法の魅了で操ってるだけにゃ……。リリスちゃんに惹かれてるわけじゃないにゃ!」

ミャーリはニヤニヤして耳をぴくぴくさせながら言う


「お子様は黙ってなさいッ!」

リリスはプンプンと顔を赤くし、足を踏み鳴らす。


その瞬間――。


グゴゴゴゴゴォォ……!!


大地を震わせるような重低音が響き渡る。

地鳴りのような音に、ミャーリの耳がぴくぴくと動いた。


「……なんにゃ? ただごとじゃない気配にゃ……」


ゾイルはすぐに顔色を変え、腰の剣に手をかけた。

「嫌な音だねぇ……何が来やがったんだ?」


その答えを持ってきたのは、血相を変えて駆け込んでくるローラだった。

「船長!! やっばいよ! さっき音の方を見に行ったら――

 悪魔の大群がルイザに向かって来てる!! 海からも、空からも、大地からも……町全体を囲む勢いだよ!!」


「な、なんだってぇぇ!?」

ゾイルの声が裏返った。


リリスの顔から血の気が引いていく。

「……か、かなりの悪魔の気配よぉ……この数は……やばい……!

 私たち全体の戦力を合わせても、とても対処しきれないわ……!」


ミャーリは両手を胸にあて、震える声で呟いた。

「アーシア様……ルイフェル…どうか無事でいてにゃ……!」


広がる絶望の気配。

ルイザの町と城を覆う闇は、すでに逃げ場を奪おうとしていた――。



つづく


【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854

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