表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/147

クルド族の少女

またもため息をつくノーム。


「相変わらずギクシャクしておりますなあ、アーシア殿と姫様は……」

旅の道中、口を利いてはいるが、どこか噛み合わないアーシアとルイフェル。

ぎこちない返事に、ノームも思わず眉(?)をひそめた。


「うん? 魔物を感知しましたぞ、お二人とも!」

杖の目がギョロリと動き、地面を見つめる。


「……あ、はい……」

「ふん……別にいいし」

返事がどちらも微妙に素直じゃない。


「……やれやれ、いつまでこの調子かの〜」


そのとき──

「きゃーっ!!」

少女の悲鳴が森の奥から響いた。


「!!」

3人が顔を上げた先には、熊のような巨体の魔物に追われる小柄な少女の姿があった。


少女には猫耳があり、髪はくしゃっとした暗めの茶髪。

身長は小さく、120cmほど。手には荷物袋を抱えて必死に逃げている。

服装はほころびた民族衣装のようなものにエプロン姿。

──クルド族の亜人だ。


「誰かぁああ助けてぇええ!」


ルイフェルが動こうとした、その一瞬前──

「ワンッ!!」

チワワのような見た目のウルワが唸り声を上げ、ふわっと体が膨らみ、巨大な狼のような姿へと変貌。


風を切るように駆け出し、追われていた少女──ミャーリの服の襟をガブッと優しく咥えて、魔物の前から飛び退いた。


「ウ、ウルワ!?!?」

アーシアが目を見張る。


ミャーリ「にゃ、にゃんだこの犬……!でも助かった……!?」


魔物「ギャアアアアッ!!」

興奮して突進してくる熊魔獣に──


ルイフェル「邪魔だ、消えろ!」

指を鳴らすとともに、巨大な漆黒の手が地面から現れ、魔物を叩き潰した。


ズガァァアアン!!


「…………おぉ〜」

少女は口をぽかんと開けたまま、ルイフェルとウルワを交互に見つめていた。


「名は?」

「えっ?わ、わたしはミャーリ。クルド族……です」


魔物をルイフェルが一瞬で消し去ったあと、

ミャーリは震える身体で草むらにへたり込んでいた。


そこに、アーシアが駆け寄る。


「どうしたの? 大丈夫……?」


その優しい声に、ピクッと耳を動かしたミャーリは、ぱっと顔を上げた。


そして次の瞬間──


「にゃっ!? ま、まさか……聖女アーシア様ではっ!?」


「えっ?」


ミャーリは両手で口元を押さえ、興奮気味に声を弾ませる。


「サイン持ってますにゃ〜! プロマイドも持ってますにゃにゃ〜〜っ!!」

興奮のあまり、しっぽをぶんぶん振り回すミャーリ。


「ぷ、プロマイド……!? サ、サイン……!?」


ルイフェルとノームがアーシアの顔を覗き込む。


「ふーん……なるほどねぇ。ファンがいるとは。」


「目立ちたい願望のあらわれじゃのう……」


「ち、違いますっ!!」

アーシアは耳まで真っ赤になり、両手を振って否定する。


「それはっ、大司教様が“布教活動の一環”と称して……神殿の、予算のために……あくまで仕方なく……!」


ルイフェルはニヤニヤしながら、「ふ〜ん?」と口元を吊り上げる。


「やめてくださいっ……!」


(ノームは呆れたようにぷかぷか浮いて見ている)



ひとしきり騒ぎが収まったあと、ミャーリがポツポツと語り出す。


「わたし、森で山菜をとってたら……魔物が出てきたんですにゃ……!」


「なんでまたそんな危険なところへ?」


「村の近くは“クルド族の子は寄るな”って……追い出されてたんですにゃ……」


少し寂しそうに目を伏せるミャーリ。


アーシアはミャーリの手を取る。


「もう、大丈夫です。これからは一緒にいましょう?」


「……うん……にゃ……!」


にゃにゃっと嬉しそうにしっぽを振るミャーリ。


だが、すぐにルイフェルが割って入る。


「その前に! この子、さっきからちょっと馴れ馴れしくない?」


「はぁ!? アンタの方がなんか偉そうじゃん!」


「こらーこのネコ耳っ!」


「ネコ耳って言うなーっ!! にゃにゃにゃにゃにゃ〜〜っ!!」


(アーシアとノームは困ったような笑顔で見守っている)



その横では──

ウルワがミャーリの足元にぴたっと寄り添い、

見つめながら「くぅん」と一鳴き。


「えっ……ごはん? さっき作って食べたの匂いする…?」


「お主、まさか料理目当てで……」とノームがぽそり。


「ミャーリさん、仲間になってくれるかな?」とアーシア。


「なってやってもいいですにゃ!」と得意げなミャーリ。


──新たな仲間を迎えて、少し騒がしくも温かい空気に包まれる一行であった。

【外部サイトにも掲載中!】


【ミャーリのイラストはこちら】


https://www.pixiv.net/artworks/132916828


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ