金色の祈りと紅の影
月が高く昇る静かな夜。
川辺に1人たたずむルイフェルの表情は、これまでにないほど険しかった。
「……あの力、ただの人間じゃない。いや、“ただの聖女”でもない……」
かつて見た、姉の背中。
かつて失った、まばゆい光。
その記憶と、目の前で金色に変わったアーシアの髪が重なる。
(姉さま……あなたの力が、アーシアに?)
ルイフェルの赤い瞳が揺れた。
──翌朝。
「おはようございます、ルイフェル様」
「……ああ」
ぎこちない返事に、アーシアは少し驚いた。
ルイフェルが目を逸らしていた。いつもなら悪びれもせずズカズカと距離を詰めてくるはずの彼女が、どこか……よそよそしい。
ノームが浮かびながら首をかしげる。
「姫様、どうなされました?アーシア殿に声もかけず、浮かぬ顔で」
「……なんでもないよ。ねえ、次の目的地は?」
「南の“静寂の森”ですな。魔物の目撃情報があります」
ルイフェルは少しだけ笑って言った。
「……いいね。気が紛れるよ、強いやつでもいれば」
アーシアは黙ってルイフェルを見つめた。
(昨日のこと、なにか……ルイフェル様にとって、大きな意味があった?)
だが、何も聞けなかった。
その代わり、そっと言葉を落とす。
「……私、あの子を助けられてよかったと思ってます」
その言葉に、ルイフェルの足がピタリと止まった。
「……うん」
それだけを返して、ルイフェルは歩き出す。アーシアも静かにその後を追った。
──その影を、どこか遠くから誰かが見つめていた。
金の髪に似た羽根を持つ、微笑みをたたえた“誰か”が。




