表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/108

迫り来る決戦

甲板に立つ女船長ゾイルは、潮風を切るような大声を張り上げた。

「お前達! 船を動かすよ!! ここだとまた兵士が来る!! 隠れられる近くの岬に向かうよ!! あいつらも出港したと思うだろうし一石二鳥さぁ!」


その声に、ローラ、マーシャ、ミネルバたち船員は即座に動き出した。

ロープを外し、帆を張り、怒涛のように出港準備が整っていく。木の甲板が震え、船は静かに港を離れ始めた。



船室に戻ったアーシア達。

エルフィナは真剣な眼差しで、これまでのことを仲間たちに整理して語った。船長達の正体、シリアの安否、そして――アーシアは自分の故郷施設についても話しを続ける。


その声に、皆は言葉を挟まず、ただ真剣に耳を傾けていた。


そこへ、天使ちゃんが扉を開けて入ってくる。

「メイドさんが回復しました。今は起きて……エルフィナ様と話がしたいそうです」


エルフィナは深呼吸をして、仲間たちに視線を巡らせた。

「わかりました。皆さん。詳しく聞いてまいりますわ」



船の医務室。

白布がかけられたベッドの上で、まだ顔色の悪いメイドが上体を起こしていた。呼吸は浅いが、その瞳にははっきりとした意志が宿っている。


エルフィナは椅子に腰を下ろし、そっと彼女の手を取った。

「……大丈夫ですの?」


メイドは弱々しく首を振り、かすれた声で言葉を紡いだ。

「わたくしのことは……構いません……。それよりも……シリア様のことを……」


エルフィナは姿勢を正し、真剣に耳を傾ける。

「……どうか、教えてくださいませ。シリア様に……何が」


メイドの唇が震え、血の気を失った指先が布をぎゅっと握りしめる。

「シリア様は……お城の中で……囚われの身に……。陛下の御前で……“見せしめ”にされようとしております……」


エルフィナの目が大きく見開かれる。

胸に広がる衝撃と怒りを、必死に抑えながら、彼女はさらに、聞き取ろうと身を乗り出した。


エルフィナ

それは裁判にかけられるってこと?それはいつに?


メイド

はい…3日後に…


エルフィナ

わかりました。ありがとうございます。ゆっくりあなたは休んで回復してくださいませ。


メイド 涙を浮かべ

はい…どうか…シリア様を


メイドは眠りにつく…


船内食堂


船室の空気は、張りつめた弦のように緊張していた。

外では潮風が窓を震わせ、遠くから聞こえる兵士たちの喧噪が不穏さを煽っている。


ティナ=カク(低い声で、真剣な眼差しで)

「……これ、大規模な戦いになりそうです。しかも……町の人を守りながら戦わないといけなくなりますね」


海ちゃんは椅子から勢いよく立ち上がり、両手を広げるようにして言った。

海ちゃん(にやりと笑って)

「町、お城全域に雨を降らせて……敵以外を、私が個別に水の力で守りぬくよ!」


その言葉に、天使ちゃんが青ざめて首を振った。

天使ちゃん(慌てて翼をばたつかせ)

「か、海ちゃん!? そんなことしたら……力がオーバーヒートしちゃうよ! 絶対やめて!」


海ちゃんは頬をぷくっと膨らませ、ふてくされたように笑う。

海ちゃん

「大丈夫! グフフ……心配しないで」


ルイフェルは腕を組み、金色の瞳を細めた。

ルイフェル(低く、決断の声で)

「……町の守りに、ベルゼバブを召喚しよう」


その名が告げられた瞬間、船室に重苦しい気配が広がった。

空気がずしりと沈み、誰もがその存在の持つ威容を意識する。


アーシアは思わず息を呑み、両手をぎゅっと握りしめた。

(ベルゼバブ様……でも、それだけでは……きっと足りない。敵の脅威は……まだ何か……もっと大きなものが来る気がする……!)


女船長ゾイル(腕を組み、豪快に笑って)

「はっ! なら私達もだ! 町の人達は……あんた達だけじゃ守れないだろう? 任せな!」


ローラ(胸を張って)

「もちろん! あたいらも全力でいくよ!」


マーシャ(ふんわりと微笑んで)

「そうそう〜、守らなきゃね〜。逃げてばっかりじゃ疲れちゃうし〜」


ミネルバ(眼鏡を押し上げ、真剣な表情で)

「町を守ることこそ……船長に拾ってもらったわたし達の使命です」


料理長おばちゃん(腰に手を当て、にやりと笑い)

「やれやれ〜……仕方ないねぇ。あたしゃ“鋼のバール”に戻ろうかね。骨の一本や二本、折ってやるさ」


船室に漂っていた重苦しさが、彼女たちの声でわずかに和らいだ。

アーシアは胸の奥で、確かに心強さを感じていた。


しかし――。

その一方で、どうしても拭えない「違和感」が胸に引っかかっていた。


(……何か……まだ隠された脅威が……。リュミナ様……私に教えてください。どうすれば皆を守れるのですか……?)


アーシアは目を閉じ、震える胸を押さえながら、次に来る試練を想像していた。




つづく

【外部サイトにも掲載中!】


イラストはこちら(Pixiv)


https://www.pixiv.net/artworks/132898854


アルファポリスにて画像付きで作品を公開しています。

ご興味ある方はぜひこちらもどうぞ!


▼アルファポリス版はこちら

https://www.alphapolis.co.jp/novel/731651129/267980191

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ