紅茶の静寂を裂く叫び
場面は再び、街のカフェでの出来事へ。
エルフィナ達は紅茶を前にしながら、王女シリアを待っていた。
約束の時刻を過ぎても彼女の姿はなく、店内には不穏な沈黙だけが漂っていた──。
エルフィナは窓際に腰掛け、紅茶のカップを持つ手を止め、小さく呟く。
「……シリア様、少し遅いですわね」
ティナ=カクは背筋を伸ばし、鋭い眼差しで周囲を見渡した。
「約束の時刻は過ぎています。……何かあったのでは」
メイ=スケは菓子をつまみながら欠伸をして、肩をすくめる。
「ま〜だ決めつけるのは早いってぇ……」
その時だった。
──ガンッ!!
入口の扉が激しく開き、ひとりのメイドがふらりと駆け込んできた。
シリア直属の世話係。ドレスの裾は裂け、顔には深い傷が走っている。
「──っ、エル……フィナ、様……!」
次の瞬間、彼女は血を吐き、そのまま床に崩れ落ちた。
「っ!? しっかりなさい!」
エルフィナは立ち上がり、倒れたメイドに駆け寄る。
ティナ=カクは即座に剣の柄に手をかけ、周囲を警戒。
メイ=スケの眠たげな瞳も、この時ばかりは鋭い光を宿していた。
「……これは……ただ事じゃないですねぇ」
カフェの空気は、一気に張り詰めていった。
カフェの空気は、一気に張り詰めていった。
エルフィナは必死の形相で、手元のコップに入った水へと身を乗り出した。
エルフィナ(声を震わせながら)
「こちらに来たメイドが血だらけで……至急! 天使ちゃんを転移させてくださいませ!!」
水面がゆらりと揺れ、そこから海ちゃんの声が響く。
海ちゃん(頼もしい声で)
「了解! ノームに伝えて天使ちゃん転移させる! また何かあれば、そばの水に話しかけて!」
エルフィナ(強く頷き、短く答える)
「……わかりましたわ!」
次の瞬間。
カフェの床に淡い光を帯びた魔法陣が浮かび上がる。
やがて光が弾け、天使ちゃんが姿を現した。
天使ちゃん(緊張した面持ちで)
「メイドさん……どこです?」
ティナ=カク(即座に手を伸ばし、指し示す)
「こちらです!」
倒れ伏すメイドに視線が集まり、カフェの空気はさらに張り詰めていく。
カフェの空気は、一気に張り詰めていった。
エルフィナは必死の形相で、手元のコップに入った水へと身を乗り出した。
エルフィナ(声を震わせながら)
「こちらに来たメイドが血だらけで……至急! 天使ちゃんを転移させてくださいませ!!」
水面がゆらりと揺れ、そこから海ちゃんの声が響く。
海ちゃん(頼もしい声で)
「了解! ノームに伝えて天使ちゃん転移させる! また何かあれば、そばの水に話しかけて!」
エルフィナ(強く頷き、短く答える)
「……わかりましたわ!」
次の瞬間。
カフェの床に淡い光を帯びた魔法陣が浮かび上がる。
やがて光が弾け、天使ちゃんが姿を現した。
天使ちゃん(緊張した面持ちで)
「メイドさん……どこです?」
ティナ=カク(即座に手を伸ばし、指し示す)
「こちらです!」
倒れ伏すメイドに視線が集まり、カフェの空気はさらに張り詰めていく。
カフェの床に広がる血の匂いが、甘い香りを打ち消していた。
エルフィナは必死にメイドの手を握りしめ、震える声で呼びかける。
エルフィナ(涙声で)
「しっかりなさい! まだ意識を失ってはだめですわ!」
天使ちゃんはすぐに跪き、両手をかざした。
神聖な光が彼女の掌から溢れ、温かな輝きとなってメイドの体を包み込んでいく。
天使ちゃん(真剣な眼差しで)
「大丈夫です……わたしが今、命を繋ぎます……!」
光に包まれた傷口はじわじわと塞がり、血の流れは次第に治まっていった。
だが、メイドの顔色はまだ青白い。呼吸も浅く、声を出すたびに胸が苦しげに震える。
メイド(かすれた声で)
「……お、王女……シリア様が……」
エルフィナ(息を呑み、身を乗り出して)
「シリア様が……どうなさったのです!?」
メイドの瞳に涙が浮かぶ。
震える唇が、必死に次の言葉を紡ごうと動いていた。
ティナ=カク(険しい声で)
「無理をするな! まずは息を整えろ!」
しかしメイドは首を振り、命を削るように言葉を絞り出す。
メイド(血を吐きながら)
「……シリア様が……危険……城の中……早く……助けて……」
エルフィナはその言葉を聞くと、胸が締めつけられるように強く心臓を打った。
紅茶の香り漂うはずのカフェは、今や戦場前の静寂のように張り詰めている。
メイ=スケ(目を細め、低い声で)
「……やっぱり、ただ事じゃなかったですねぇ」
エルフィナは拳を握りしめ、瞳を鋭く光らせた。
「……すぐに、動きますわ!」
――シリアを救うために。
船、船室
アーシアはリュミナから3人目の召喚ができること、しかしまだアーシアに力がないため召喚時間が短いことがあるともう一つの魂リュミナから告げられる。
ルイフェル
「アーシア大丈夫か?」
アーシア
「はい。ただ、リュミナ様から…」
アーシアはルイフェルに説明した。
ルイフェル
「それは、アーシアがピンチになった時に召喚するのがいいな、敵の正体もまだわからないし、」
船の船室。
波の音が木壁を震わせ、ランプの灯がゆらゆらと揺れていた。
アーシアは目を閉じ、静かに胸に手を当てていた。
その時、心の奥底にもうひとつの声が響く。
リュミナの声――もう一つの魂
「……アーシア。あなたには新たに“3人目”を召喚する力が芽生えています。ただし……まだ力が十分でないため、召喚できる時間は短いでしょう」
アーシアははっと目を開き、息を呑んだ。
(3人目……!? けれど……時間が短い……)
ルイフェルが傍らで心配そうに眉をひそめる。
「アーシア、大丈夫か?」
アーシアは小さく頷き、少し震える声で答えた。
「はい。ただ……リュミナ様から……」
彼女は言葉を選びながらも、今聞いたことをルイフェルに説明した。
リュミナの声が告げた、新たな召喚の可能性とその制限を。
ルイフェルはしばし黙り、腕を組んで考え込んだ。
やがて、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「……なるほどな。それなら、アーシアが本当にピンチになった時に召喚するのがいいだろうな。敵の正体もまだわからないし、ここぞという時の切り札にしておけ」
アーシアはその言葉に少し安堵し、頷いた。
「……はい。そうします」
ルイフェルは軽くアーシアの肩に手を置き、真剣な眼差しで言葉を続ける。
「焦る必要はない。お前は十分に強くなってる。だから――自分を信じろ」
アーシアの胸に、静かに温かな勇気が広がっていった。
⸻ 再びカフェ。
ティナ=カクは椅子からすっと立ち上がり、険しい目で窓の外をにらんだ。
「エルフィナ様……囲まれてます」
その声に、メイ=スケが欠伸を飲み込みながら低い声を落とす。
「私達をおいて裏からお逃げください」
だが、エルフィナはきっぱりと首を振った。
「大丈夫です。転移をノーム様にお願いしましょう!! 天使ちゃんもいますし、怪我人もいるので……ここは船に逃げます!!!」
エルフィナは手にしたコップの水に顔を寄せ、切迫した声で呼びかけた。
「海ちゃん! ノーム様に繋いでくださいませ!!」
すぐさま水面に波紋が走り、かすかな返答が響く。
『了解! ノームに伝える! 船へ転移させるよ!』
床に鮮やかな魔法陣が浮かび上がり、光が広がっていく。
「来た……!」ティナ=カクが剣を構え直す間もなく、光が弾けて一行は一斉に転移へと包まれていった。
⸻
次の瞬間、船の船室。
全員が息を整える間もなく、船の外からざわめきが押し寄せてきた。
「……何やら騒がしいですわ」エルフィナが眉をひそめる。
メイ=スケが窓から外を覗き込み、青ざめた表情で振り返った。
「船の周りを……王都ルイザの兵士達が取り囲んでます〜」
外からは兵士達の怒声が響き渡る。
「シリア様誘拐の──トライヤ第五王女エルフィナに告ぐ! シリア様をどこにやった!!」
エルフィナは息を呑み、両手を胸の前で握りしめた。
「……何ですって!? わたくしが……誘拐犯にされてますわ!?」
ティナ=カクは奥歯を噛みしめ、低い声を落とす。
「……やられましたね」
メイ=スケは頭を抱え、眠たげな目を細めながらも緊張を隠せない。
「やばいです〜……」
船の周囲はすでに兵士の怒号と武器の音で満ちていた。
嵐の前の静けさはなく、迫り来る危機だけが波のように押し寄せていた。
⸻ つづく。
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イラストはこちら(Pixiv)
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