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私を迎えにいく話。

作為的なエレジー

ばあちゃんが入院しているらしい。

ばあちゃんからはそんなに可愛がられていたとも思わないし、私もそんなに好きではなかった。母の姉には息子がおり、つまり私の従兄弟なのだが、彼のことは可愛がっていたようだ。私は特に良い思い出はない。父からは会わないように言われていたし会いたいと思ってもいなかったが、学校の通学路が病院の近くで、帰ってやる事もないしつまらないので良い孫を演じることにした。


学校帰り、毎日のように顔を出す。

ぼんやりとテレビを共に見て、食べずに無駄になるはずだったプリンやジュースを食す。

「フライドポテトが食べたい」

ばあちゃんがある日言った。私は自転車で何件もコンビニをハシゴしてポテトを探して買ってきた。

看護師さんたちは「優しいお孫さんね」と言う。

ばあちゃんは嬉しそうに微笑む。

一見尽くしているこの行為は私なりの仕返しでもあったと思う。これは優しい孫ゲーム。本心ではない。


そういえば、病棟を移動した際に渡り廊下のような、連絡橋のような場所を通ったが、川が流れていたな…。多分ここはホスピス。絶対病院内で三途の川とか言ってるだろうと思い、くすりと笑った。


ある日、学校帰りに病室を訪ねると、誰もおらず、あるのはオレンジ色の夕日に満ちた、軽い部屋だけだった。


ああ、死んだのか。


当時、スマホなどなく連絡手段は家の電話か直接自宅を訪ねるかだったため、死んだことも知らなかった。

その後従兄弟から葬儀の日取りを知らされたが興味がないので行かなかった。孫ごっこも終わってしまった。


今も思い出すのは軽くなった病室と、テレビで流れていたレオンのナタリーポートマンの可愛さだけ。


私の行動は思考の逆を行っている。

嘘しかつかない私はきっと地獄へ落ちるのだろう。


もし私が死んでも、決して机の上に花だけは置かないでください。


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