ご都合なんてつまらない
深夜テンションで書いた駄文ですが一応設定周りはしっかり考えてあります
私は、先輩が好きです。
辺り一面全てを海に囲まれた孤島の中の孤島。
大昔にどっかの誰かが大量に土地を埋め立てて、その土地をろくに使いもしないままその人が死んで色々あった後にちっちゃな街が作られた。
どっかの漫画にでも出てきそうなこの街の誕生秘話を、社会の授業かなんかで習ったけど…正直殆ど覚えちゃいない。
というか大体の授業がそんな感じで、本当に何をしに学校に来ていたんだと笑えてくるけど、それを誰かに聞かれたなら私は迷い無く『先輩に会うため』と答えていただろう。
距離感が異様に近いのに、何処か不快にならず嬉しくなって。
普段はカッコいいのに時々可愛いところが見え隠れして。
私の全部を理解してくれてるように、私の欲しい言葉や態度を全部くれて、
そして、明確に私を『大切』にしてくれて。
そんな先輩が私は大好きで、学校に居る間なんて言わずにずっと一緒に居たかった
だけど、先輩が先輩である以上、その短い時間ですら私の過ごす分を全て一緒にいることは叶わない
こんな島に若者が残っていたって何の意味もないから、大体の人は卒業したら学校の支援を受けて島の外へ旅立つ
だから、私は何度も先輩の進学先を聞いた。
けど、先輩は決まって
『まだ決めてないかな』
としか言ってくれなかった。
先輩の担任や同級生に聞いても、殆どの人は詳しく知らないか、知ってそうな人でも気まずそうに濁すだけだった。
だから、私は先輩が卒業するその日に先輩へ私の思う限りをぶつけた
「この海に包まれた島で、その外に出た貴方をもう一度見つけるなんて絶対に出来ません。だから、せめてどこに行けば会えるかくらいは、知っておきたいんです」
本当は、この時告白もした。
けれど、この後に先輩から返された言葉の衝撃………困惑で、正直自分がなんて言ったかなんて殆ど覚えていない。
それくらい。私にとってその一言はあまりにも不思議で、あまりにも意味不明だった。
『そうか………そう言えばここで終わりだったな』
悲しそうにそう呟き、先輩は涙を零す私のことなんか眼中にも無いみたいに何処かへ歩いていく。
数分間、私はどうすれば良いのかも分からず呆然としていた
だけど、私の脚は自然と進んでいく
全く見覚えのない住宅街を走って、明らかに街の大きさを超えているであろう長さの道を通って
体育の持久走すらまともに完走できない私が、不自然に出続ける息切れだけを吐き続けて走り続ける
不思議と、横腹も全く痛くならないし脚が動かなくなることも無かった
じんわりと湧き出てくる汗は、何故か一切服に吸い込まれず、蒸発もせず肌に張り付いている
最早島の直径すら超えたのではと思う程走ると、少し先に丘が見えてくる
今までの景色は、何処かにありそうな街の風景を並べたような妙な納得感があったけど、今私が登っている丘は明らかに違う
場違いというか、この丘だけ違和感がある。
例えるなら、写実的に描かれたリンゴの絵画の中に本物が混ざっているような…変な完成度がある
そして、何より奇妙なのは…私はこの丘に覚えがある
見覚えも無いし、聞いたこともないし、登った覚えなんてのは勿論無い。それなのに何故かココに覚えがある。
そして…私が動かせない表情の中、眉を顰めたくなる要素の一つとして、その奇妙な覚えの中に漠然とした先輩が混ざっていること
言うまでもないが、先輩とこんなところに来たことは無いし、もし来たことがあったとしても私がそれを忘れているのは余りにも不自然だ…
そんな事を考えているうちに、丘の獣道が途切れ斜面だった地面が平坦になる。
「はぁっ…!はぁっ…!」
わざとらしく疲れる私の体に従い、汗を拭い息を荒げる
『……………………』
丘の平坦な地面の真ん中で、先輩は私を何とも言えない様な、色んな感情がぐちゃぐちゃになった様な目で私を見た
『ごめんな…訳わかんなかっただろ』
いつも聞いてたはずの声に何かズレを感じる
『俺は結局、これだけ舞台を揃えられても役一つまともに出来なかったか』
段々と、ズレが大きくなって先輩に大量の人影が重なる
人影は1人1人見た目が違って、良く見ると服や肌の色さえバラバラだった
『すいません…先輩。俺…先輩の気持ちも考えも…俺の気持ちも考えも全部分かってたのに…』
ズレの中から、1人の女性の人影が見えてくる
それは、私に良く似た見た目で、さらに詳しく見るのなら私と先輩の要素を足して2で割ったような見た目だった
『君も……ごめん』
先輩が私のもとに歩いてくる
不意に伸ばした手を見ると、そこには先輩と同じ様なズレがあった
『俺の自己満足につき―いえ、先輩は悪くありませんよ』
頭を下げようとする先輩を、先程の女性の人影が宥めるように支える。
何故か、私はそれを見て安心している
『今…戻すから…』
私のブレの中から、先輩よりは少し幼いくらいの人影と、女性の人影と似た形の靄が抜ける
――――――!!!!
『ははは…そうだよな。俺はこうだったんだ。あんな…先輩みたいにはなれない』
■が、懐かしそうに自嘲気味に笑う
『はぁ…大丈夫ですよ。この罰は…2人でちゃんと受けましょう』
■が、人影の手を握る
人影は、申し訳なさそうに■の手を握り返す
『さぁ、行きましょう』
ゆっくりと、■と人影の身体が崩れていく
…沸々と、怒りが湧いてくる
さっきまで、身体を縛っていた違和感はもうなく、■の脳内命令通り関節が曲がる
「………………」ダッ
私は無言で走り出し、全力で崩れ行く■輩の顔を掴む
『!?』
有無を言わせずに、女性の人影も掴み強引に先の中へ押し付ける
〘ーーーー!!―ーー!!ー!ーーーーー!!!〙
『止めろ!何をしてー』
「罰ですよ?」
『は…はぁ?!』
「貴方達の間には深い深い物語があったんでしょう。傍から見たら見え透いた薄っぺらいような物語がね」
『なんだと…!?』
「貴方から見てもそうだったんですから、それ以外に何と言えますか?」
女性の人影の悲鳴が次第に小さくなっていく
「貴方達からしたら、私はあくまで貴方という存在を代用する為の器というだけの存在だったんでしょうね」
『やめろ!先輩!やめてくれ!』
崩れた身体が段々と治っていき、人影はそれに比例して薄くなっていく
「えぇ…どこの誰が考えたのかは知りませんが、こんな安っぽい世界の中でただ貴方達の欲望を満たすためだけに人1人の人生を操り人形として終わらせようとしたんですから、当然…お二方もその覚悟はあるんですよね?」
『は…?な…何言ってんだよお前…?』
「私はこの世界にどんな不思議パワーがあるのかなんて知りませんし、どうでもいいですけど…しっかりと自身の犯した罪の分…もう一生、生きてもらいますよ?」バキンッ
最期の悲鳴とともに、先輩の崩れた身体が完全に修復される
『先…輩…?先輩!?先輩!返事をしてください!先輩!?』
「ほらほら、そんな事気にしている場合ですか?」
『…お前っ!!』
「今から貴方に残されてる選択肢は2つ、今からこの安っぽい世界で私と暮らすか…その良くわからない力を使ってもう一度やり直すかです。まぁどちらを選んでも貴方の一生は〚私の先輩〛として終わるんですけどね」
『誰がそんな事を…!』
「別にやりたくないなら良いですけど、自分で選んで自分で作った役を自分相手にすら全う出来なかった程無能な先輩が、これから一生私から逃げられる程この世界を作り込んでるんですか?」
『……………』ギリッ
「私としてはそれならもう一度人生をやり直して、その最後の最後のこの一瞬で貴方の中に居る方と会ったほうがまだ救いがあると思いますがね?」
グリグリと、先輩の頭を指で押す
「罰を耐え抜いた後で…最愛の想い人と感動の再会…!薄っぺらい事には変わりありませんがこんな世界で満足できる先輩ならば、充分楽しめるんじゃないですか?」
『ぅゔ…………っ!!』
「いやぁ…私から貴方を抜かなければ、私はただの脇役として終われたのに…余計な自己満足をしたがるからこうなるんですよ?」
『……………………………………………………………わかっ…た』
下を俯いたまま、先輩は何かをブツブツ呟き始めた
それと同時に、地面や空のあちこちにブレが出来始める
「あ、あと一つ言っておきますね」
『……………』
先輩は、聞きたくないとでもいうように耳を塞ぐ
「少し恥ずかしいですけど………」
『………黙れ』
ブレが大きくなり、段々と世界が曖昧になっていく
「好きですよ。先輩♡」
_______________________
ー完ー
明らかに「あれ?ここは?」があると思いますが明らかに筆者の技量が足りてないため気にせず自己完結していただいて結構です。
こんな駄文を最後まで読んでいただいてありがとうございました。