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恐怖とトラウマ

 今までの和やかな雰囲気が一変し、チクリと刺すような空気になる。私は、顔がこわばっていくのが自分でもわかった。前の三人をみると、顔を見合わせ誰が話すかを目で会話している。2、3分それを続け草壁が意を決したようだ。


 ゆっくりと、しかし聴き心地が良い声で話し始めた。「月夜は徳川を知っているよね?」私は、首を縦に振った。徳川さんとはあまり関わりがないか、このプロジェクト当初からの同僚だ。少し、引っ込み思案だが、気遣いができ仕事が早い、優秀な人だ。


 私が、思い出していると草壁が話を続けた。「月夜たちが、休みの中、僕達3人と徳川は店の当番を頼まれていたんだ。お店は、夏休みで帰省して来た家族達でいつも以上に賑わっていたよ。」


 そこで、草壁が一息ついた。当時を思い出すように、遠くに目をやり、再び話し始めた。「忙しいが、笑い声、楽しそうな声が、充満していた。それはもう楽しかったよ。でも、その空間は1つの悲鳴によって終わった。」草壁の顔がさらに強張っていく。


 私が思わず「辛かったら話さなくても、大丈夫だよ。」と言いと「話すと決めたから。」言い、続けた。「その悲鳴の持ち主は常連さんの娘さんだった。どうやら常連さんが例の発作で倒れたらしい。そして、それに続けて徳川が倒れた。」私は動揺し、嘘だと願い聞き返した。いくら聞いても返ってくる言葉は同じだった。


 心に大きな穴と悲しさ、そしてトラウマが蘇る。母と父、隣の席のおじいさんみんな、死んでいく。今でも、どんどんと冷たくなっていく母を思い出す。何かが込み上げてくる。自分で制御できなくなる。


「ごめんなさい。ごめんなさい。私だげ生きてて…」


 急に、かおるが抱きついて来た。「いいんだよ。生きていいんだよ。」何故か、かおるが泣いている。そして、繰り返す。「生きていていいんだよ。」と。私は、頬に温かい雫が伝った事に驚いた。どうやら、昔の事を思い出して、泣いていたようだ。


 かおるは、私が泣き止むまで一緒に泣いてくれた。風川と草壁は、私を温かく見守ってくれた。それからは、病状も良くなり1週間で仕事に復帰できた。


 久しぶりに帰ってきた街は姿を随分と変えていた。住居区や商業施設以外は立入り禁止となっていた。娯楽は無くなり、街の至る所に警備員が立っている。


 草壁の話では、私が休んでいる間に突然の発作で、数十人が亡くなっていた。立ち入り禁止区域には、今までになかった人工芝が広がっていた。その芝には奇妙な噂あった。


 内容は、「夜になると、芝は1人でに動き出し、トラックの荷台に乗せられどこかに連れて行かれる」や「あの芝は、いけない薬を政府が作っている」などと、信憑性には欠けているが、どこか信じたくなる噂が多く流れていた。 


 何が真実で嘘なのか分からないが、娯楽が少ない街では、真実など、どうでも良かった。ただ、死の恐怖と大切な人を亡くした、絶望を紛らわせるなら。そんな、噂を聞いてか1週間たった。


 かおるに夜に呼び出された。場所は、例の立入禁止区域前の公園による8時だ。そこは、噂が流れらしてからしばらくすると、人が寄り付かなくなり街灯が次々と撤去されていった場所だった。


 私は、街灯の光を頼りに、少しの恐怖と共に向かった。この時の決断を後悔するとは知らずに。


 私が公園に着いたのは、8時丁度だ。あたりは、薄暗く、怖い。例の芝を背後にマンションのほうを見る。5分ほど待っても来なかったなので、帰ろうとした折、後ろで何かが動く音がした。


 振り返ると、芝が一人で立ち上がっている。気のせいかと思い、もう一度目を凝らして見る。だが、残酷なことに事実は変わっていなかった。そして、芝がこちらに振り向こうとしたとき、背中を勢いよく押された。


 振り返ると、かおると風川がいた。私が、恐怖でかおるの後ろに回り、芝の様子を覗き見る。そこには、いつもの光景が広がっていた。


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