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5 隠された真実

私の中で赤いランプが光る。だが、それ以上に目の前にいる男の危うさと過去に興味がそそられてしまう。彼が続きを話し始めようとしたときに私のポケットで携帯が震えた。それは、開店準備の時間を知らせるアラームだった。


私は、見ないことにしようと思ったが、かおるの顔がこわばっているとこに気づいた。私は、風川に「休み時間が終わりました。」とできる限り冷淡に告げ,いまだ呆然としているかおるを連れて逃げるように屋上を後にした。


その日は、全てが上の空で、気がつけば営業が終了していた。風川をどうするか悩んでいると向こうから話しかけて来た。 


「今夜、僕の好きな場所に一緒に来てほしい」と。側からみれば愛の告白などと、ロマンチックに見えるだろうが私からしたら、ちょっとした恐怖の文だった。だが、好奇心が勝ってしまい、風川と帰ることになった。


店から数分歩いて着いたところは、街灯が少ない、普段寄り付かない公園だった。そこには、先約がいたが、風川は躊躇いなく進んでいく。少し悩んだ末に、私も後に続く。風川は、ずんずんと先約の方に近づく。


私も、近づくとその人が誰かが徐々に分かってきた。その人は、私と風川の同期であり、一番仲がいいかおるだった。風川に気づくと見たことのない笑顔で、話している。が、私に気づいた途端、元のかおるに戻る。


風川は、かおるの様子を見て愛しいものを見る目つきになる。どうやら、この2人は恋人かそれ以上の関係でありそうだ。私は、気まづさを感じつつ見ていると、2人ともこちらの視線に気づき、私に向き合った。


かおるは、なぜがきまづそうに下を向き、風川は、空咳をした。そして、風川は話を始めた。


「今日、ここにきてもらったのは、月夜に昼間の話の続きをしようと思ったからだ。」その声は抑揚がなく、淡々と続ける。


「そうだな。まずは、僕の過去について知ってもらいたい。昼間は、少し嘘を交えたからね。僕の両親が政府に殺されたのは本当だけど、真相がわかっていないのは嘘だ。」私は、目を見開いた。


なぜ、彼は嘘をついたのか、今から話すものも本当なのか、と疑問が浮かぶ。が、それらを気にせずに彼に進めてもらう。彼は、覚悟するように深呼吸を一回する。


「あれは、15年前僕が10歳の頃、国は僕の両親を殺した。僕の親は、働き者だった。朝、日が登る前に家を出て、帰って来るのは僕が深い眠りについているときだった。ほとんど会えなかったけど働き者の親が誇らしかった。」一息つき、再び話し始めた。


「だけど一度だけ、寝坊した。その日の夜は僕と遊んでくれていたんだ。親の上司はこの失敗を許さなくて、撃ち殺したんだ。」風川は自分をあざ笑うかのように笑い始めた。彼は、昔の自分を、政府を恨み、この理不尽な世の中を憎んでいるように笑いつづける。


私は、背筋に悪寒が走る。早く、早く、ここから逃げなければならないと。頭が、アラームを流す。が、この男の壊れている部分をもっと知りたい、もっと見たいと、感じてしまった。


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