4 約束と告白
私たちが警察に行って1週間が経つと警察から約束の寄付金が会社に届いた。表向きの理由は、私達の素早い対応と働きを賞賛する、という程で送られてきた。
そのことは、今朝のミーティングで草壁の口から話がされた。寄付金は、店の整備とボーナスになる、とも話した。その話に、社員.アルバイトの人が沸いた。私は、周りに合わせて盛り上がるが、心の中ではまた別の嬉しさと安堵感でいっぱいだった。だが、風川だけが不服そうな顔をしていた。
3等分できるはずが、ボーナスとして70万円になったのだから少し不服だろうなと思いあまり深く考えなかった。その時は、ただ安心感でいっぱいだった。
あれこれ考えているとミーティングが終了して、短い休憩時間になっていた。かおるを探していると、風川に声をかけられた。隣にはかおるもいる。風川は、いつになく嬉しそうに言った。「誰にも聞かれたくないから屋上に来て欲しい」と。
私は、不思議に思いながらもついていくことにした。屋上につくと、風が吹いていた。そのせいか少し肌寒く感じる。私とかおるは、扉の付近に風川は少し離れた所で私達と向かい合った。彼は、少し躊躇うように口を開いては閉じた。
周りを確かめるように視線を巡らした。そして、再度口を開く。今度はしっかりと話した。「君たちは、政府に疑問を持たないのかい?」と。その問いかけは漠然としたものだった。最初は意味が分からず、ただただ呆然としているしかなかった。
その間に、彼は話しを続けた。少し、昔話を思い出すかのように遠くを見つめながら。
「僕の両親は、僕が7歳の頃に死んだ。原因は過労死と表向きはなっていけど絶対そうではない。だって僕は政府の犬どもが大金を前に目を輝かせて両親の死因を捏造している場所を見たからね。じゃあ本当の死因はなんだっただろう?僕は一生懸命な考えた。でも答えにはたどり着けなかった。いや、違うな。辿り着けないようになっていたんだよ。」
そこで、彼はちらりと私の方に視線を向けたが、またあさっての方を見つめた。その姿は、両親を亡くした悲しみと頼りどころがなくすぐに潰れてしまいそうな哀愁に満ちた少年のようだった。だが、それはすぐに無機質な表情に変わる。
私の中で赤いランプが光る。だが、それ以上に目の前にいる男の危うさと過去に興味がそそられてしまう。彼が続きを話し始めようとしたときに私のポケットで携帯が震えた。それは、開店準備の時間を知らせるアラームだった。