第二章 新藤くん (4)
【ON AIR】
はあ、いつ聴いてもいいねー。室川市のラジオネーム・たーくんからのリクエスト、尾崎豊で〈アイ・ラブ・ユー〉でしたー。
尾崎豊って私がその存在を知ったとき……中一ぐらいだったかな、すでに亡くなってたんだよねー。だからちょっと世代的には合わないんだけど、私の周りにもファンは多かったよ。男子に一人、ノートに尾崎の詞を片っ端から書き写してた子がいたなー。
亡くなっているにも関わらず、世代を超えて愛されるってすごいよね。もし私が死んじゃったら、一週間ぐらいしたらみんなに忘れられてそうじゃない? あはは。
大丈夫。死にません。死にませんとも。さあ、気をとり直してメールを読んでいこうじゃないの。安達市のラジオネーム・チャウチャウさん。
『こんばんは、アッキー』
こんばんはー。
『毎週欠かさずに聞いています。前までは〈なんでもランキング〉のコーナーが一番好きでしたが、今では〈アッキーの恋の軌跡〉のコーナーが一番好きです』
おお、嬉しい。
『ところで質問なんですけど、その中学時代からつき合っている彼氏は、このラジオで自分のことを話されているって知っているんでしょうか。もし言ってないなら、早めに了承をえたほうがいいと思いますよ』
あはは。もちろん、ちゃんと許可をとってあるよー。なんていうかあの人、そういうの、まったく気にしない人なんだよね。おかしいよねー。あんまり自分の過去ってばらされたくないもんねー。
でも、そうゆう考え方がおかしいのかもって思うようになった。結局、過去は過去だしね。私も最初から今の私だったわけじゃないんだ。いや、本当。小学生の頃、私に蹴られた男子のみなさんに、心から謝罪します。あはは。
あ! あと、ちょくちょく出てくる親友の子にも許可をとってあるよー。なんせ彼女の場合、いまだに親友だしね。今では私の彼とも仲よしなんでモーマンタイさ。
おっと、尺がやばい! っていつも言ってるような気がするね。あはは。
コーナーに参ります。〈今週のベストバウト〉。