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木蓮荘  作者: 立夏よう
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木蓮屋敷 16

鎌倉での夏はそれから三年続いた。


そして三年目の夏の後、平穏な日々に変化があった。

山口先生が急に解雇されたのだ。山口先生についてはいろいろ噂があった。

綾さまを父の総一朗様に黙って医者にみせたことがばれて逆鱗に触れたということだったがそれだけではなく悪い噂も耳にはいった。

大きな町の質屋にものを預けていたとか、野崎家の金品が消えていたとか。

使用人はみなどこかお高くとまって見える山口先生のことをよく思っていなかったので聞き苦しいような悪口雑言がわたしの耳にも漏れ聞こえてきた。


わたし自身は彼女のことをどう思っていただろうか。

わかっていたことはただ一つ、山口先生はわたしと綾さまをはっきり区別し、けして同等の学友などと扱うことはなかったということ。

というよりも山口先生はわたしを見ないようにしていたと言ってもいいくらい、わたしに関心を持っていなかったことは確かだ。

だからわたしのほうも心を許さず、お互い綾さまのことをお世話するだけのつながりというだけで、だから何か特に彼女について好意も悪意も抱いていたつもりはない。

ただ、彼女はわたしをここに連れてきた張本人であったため、彼女がいなくなったことはわたしにはなんとなく不穏に思えた。

そう感じたのはわたしだけではなく、綾さまはかなり落ち込んでいたのだと思う。

次の先生は誰が来ても気に入らず追い返したというか会おうともしないくらいで、間に入る総一朗様の用人の小父さんを困らせていた。


この時期から綾さまは内にこもるようになった。

笑顔も減り、鎌倉の時の上機嫌でころころ笑う綾さまはもういなかった。

わたしは寂しかったが何もできなかった。

この頃また少し途絶えていた綾さまの部屋での遊び、修行が再開された。

追い詰められたような表情の綾さまに嫌ということなどできなかった。


でも、わたしは前以上に嫌でたまらなかった。

その修行の意味することがわかりだしてきたからだ。


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