表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルン幻想譚  作者: RU
ep.3:迷惑な同行者
97/122

3.遺跡巡り【2】

 タクトは数秒考え込んでから、パッと顔を上げた。


「そうじゃ、禊鎧場(ネメトン)じゃ!」

「それは、なんだ?」

「デュエナタンの(もの)どもが、秘術を掛けた場のことよ。(イルダナハ)の修練場とでも言えば、わかりやすいかの? 禊鎧場(ネメトン)を回ることによって、真なる(イルダナハ)となるのじゃ」

「俺はそんなものに、なりたくないぞ」

(イルダナハ)にならずとも、あれらを回れば、貴様の基礎能力値(ステータス)が爆上がりするのじゃぞ?」

「俺はそんなものを利用することに、なんの興味も無い。行脚がしたいなら、一人で行ってくれ」

「馬鹿者。(イルダナハ)になるには、資格が必要なのじゃ」

「なぜ、俺に資格があるとわかる?」

「決まっておろ。貴様が砂漠の遺跡…つまり禊鎧場(ネメトン)に触れたときに、反応したではないか」

「興味はないな」


 タクトは先程と同じように「てっ」と言って、面白くなさそうに顔をしかめた。

 が、数秒黙り込んだあとに今度はニヤッと笑う。


「おまえの後見だった院長は、遠縁だと言っておったな」

「ああ」

「では、院長の親族に会ったのか?」

「いや、会ったことは無い。俺もそれは気になっていたんだが、そもそも院長に遠縁がいて、俺が引き取られて来たことに、修道院の(もの)達は非常に驚いたと聞いた」

「それはつまり、おまえが引き取られてくるまでの間、院長は天涯孤独だと思われていたということであろう?」

「修道士の中には、わけありな身の上の(もの)も多いので、自分から語らない(もの)の過去には触れないのが暗黙のルールだ。例え出身が貴族だったとしても、そのルールは厳守だった」

「何を言う。むしろそういう身分の(もの)達のほうが、秘密厳守にしているに決まっとろうが」

「どっちにしろ、外との縁を全て断ち切るのが普通だったから、むしろ俺の存在は例外中の例外だと言われた」

「ではおまえは、自分の出自に興味は無いのか?」


 料理を口に運ぼうとしていたマハトの動きが止まった。

 その様子に、タクトは我が意を得たりとほくそ笑む。


「いや…それは…、院長が亡くなってしまった今、もう知りようが無いことだ」

「だが、その様子では、興味はあるのだろう?」

「それは、当然、ある…」


 マハトの返事を確認すると、タクトは声を潜めながら身を乗り出した。


「遺跡巡りをすれば、おまえの先祖の履歴が色々分かってくるだろう。するとそこから辿って、おまえの出自も明らかになるのではないか?」

「どうやって? おまえの話からすると、その遺跡は千年ぐらい前の古代人の物なのだろう?」

「では聞くが、貴族やら荘園主やらは、どうしてそのような地位や財産を築けたと思う?」


 急に話題が変わったことにマハトは戸惑ったが、聞き返してもタクト相手では煙に巻かれるだけだと解っていたので、問われたことを考えた。


「そうだな…。知恵に富んだ(もの)が人の役に立つことをして、それで人望を集めたからじゃないのか?」

「ははは、可愛いことを言う。だが、そんなお人好しが少々蓄財したところで、悪知恵に富んだ奸物に身ぐるみ剥がされるのが、人間(フォルク)の常套手段であろ」

「それじゃあ、まるで俺の親が奸物みたいじゃないか」

「貴様の親が奸物ではなくとも、先祖の(だれ)かが奸物だったと()うておるのだ」

「どっちにしろ、俺の血縁を貶してるんじゃないか」

「普段はサウルスのくせに、自分ごととなると細かいのう」


 ほとほと呆れたような顔をされて、マハトは少しムッとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ