表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
88/122

20.旅立ち【2】

 そこで色々なことを思い返していたクロスが、急に焦ったように振り返る。


「じゃあもしかして、見たくもない変なモノが、これからは更に見えるようになっちゃったりすんのっ?!」

「えーと、なんだったっけ、見鬼眼(フォルセティ)つったっけ?」


 首を傾げてタクトに問うたジェラートの言葉に、クロスは顔をしかめた。


「それ、なに?」

「貴様、やはり知らなんだのか。見鬼眼(フォルセティ)をきちんと使いこなしておれば、そこの弟子に化けてた毒まんじゅうを、すぐにも看破出来ていたろうに」

「待って、待って、待って! マジ、待って! じゃあ俺が魔導士(セイドラー)だから、視えてるんじゃないの?」

「言っておくがの。貴様の知識は人間(フォルク)のかなり間違ったものに偏っておる。宴の食卓(フリムニル)と言ったかの? アレなぞがいい例じゃ。多分贄の食卓(フューゼスク)を再現しようとしたのだろうが、失われた術式を無理矢理つなげ合わせたんじゃろ」

「そうなのっ?」

贄の食卓(フューゼスク)は、相手の全てを奪い取る禁忌の(じゅつ)じゃが。破片を集めて、得られるか得られまいかの博打のような(じゅつ)になったのだろうて」

「え…ええええ〜」


 クロスは、いろいろな意味で脱力した声を上げた。

 自身が必死に調べ学んだ知識が、トンデモ偽学だと言われたのだ。

 ショックでないわけがない。


「その見鬼眼(フォルセティ)にしても、そうじゃ。人間(フォルク)には珍しいとはいえ、それほど稀な特殊技能(スキル)でもない。今後は、ペテン師の幻像術(ブリンディ)程度、すぐにも見抜けるように精進するがよかろうよ」


 自分の長年の悩みを一言で流されて、クロスは愕然となった。

 タクトの姿が自分以外の、アルバーラにすら視えていなかったのは、そういう理由(わけ)だったのか。

 とすると、カービンやルミギリスに抱いた苛立ちは、完全に八つ当たりだった。


「屋敷ごと研究を焼き払っておいて、この弟子達は元に戻して、どうするつもりなんだ?」


 マハトが足元の、四人の弟子を見遣る。


「別にどうもしない。クロスがこいつらのコト、すっげぇ心配してたから助けてやっただけだもん」

「こら小僧、それを一人でやり遂げたかのように、威張るんじゃない」


 タクトに物言いをされたジェラートは、タクトに背を向けて小さくあかんべをして見せる。


「しかし、それではまた、神耶族(イルン)に対して悪さをするんじゃないのか?」

「ん〜、そっか。じゃ、俺の小微羽(スキルニル)でも……、うーん、それもめんどっちぃしなぁ」

「ああ、また古代語(フォニルオロ)か? そのスキレットとかいうのはなんだ?」

小微羽(スキルニル)は、まあ神耶族(イルン)専用の使い魔(スレイブ)…みたいなモンだな。クロスの虫と同じで、相手を服従させられればなんでもオッケーだぜ」

人間(リオン)が虫扱いになるのか?」

「んー、そー言われると、こいつらが虫になったみてーで、更に気持ちわりーな」

「いや、そこじゃなくて…」

「これ以上の説明はめんどっちぃから、タクトにでも聞きなよ」

「このものぐさ小僧! なんでも端折るなと言っておろうがっ!」


 タクトに両頬を引っ張られて、ジェラートは逃れようとジタバタした。


「ひゃめろよー! 俺はもう小僧じゃねェってー!」

「見た目がどれほど大きくなろうと、頭がカボチャのままなら、中身は小僧で間違っとらんっ!」

「ジェムってば、あんなに大人になっても、やってるコト同じだなあ…」


 幻影のタクトと小さなジェラートの様子を思い出して、クロスが呟いた。


「あの二人、ずっとあんなことをしてたのか?」

「うん。まぁ、大体あんな感じだったよ」


 マハトは呆れ顔で二人を眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ