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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
75/122

17.ライヴァル【1】

 マハトが玄関ホールに戻ると、ドラゴンの頭頂部に仁王立ちしていたアルバーラが高笑った。


「どこの若造か知らないが、死ぬ覚悟が決まったかい!」


 正面から真っ直ぐ向かって行くマハトに、ドラゴンは猛烈な火炎を吐き付けた。

 するとマハトの周りに薄っすらと蒼いオーラが巻き立ち、火炎の威力を無効化する。

 離れた場所で、クロスが各種の耐性や補助の(じゅつ)を駆使していた。

 爬虫類に似た縦長の瞳が、チラとその姿を捉え、幻影のアルバーラが「ふんっ」と煩わしそうに眉を顰める。


「こしゃくなヘボ魔導士(セイドラー)め!」


 そう吐き捨てつつも、アルバーラの口元は笑っている。

 魔導士(セイドラー)は、(じゅつ)に頼りがちで体力は心許ない(もの)(ほう)が多い。

 クロスは、その代表とも言うべき、内向的でインドア派の研究バカな魔導士(セイドラー)だ。

 真っ向から物理攻撃を狙ってくるマハトの相手をしながら、アルバーラはクロスの体力を削るように、(じゅつ)を放った。


 アルバーラとクロスは、魔導組合(セイドラーズギルド)の中で、双璧と呼ばれていた。

 魔力持ち(セイズ)と判明し、幼少の頃に魔導組合(セイドラーズギルド)に引き取られ、気量計(ガルドメーター)光輝石(スヴァリン)が特別な色に輝いた履歴までがそっくりだったからだ。

 それぞれが高名な魔導士(セイドラー)に引き取られ、早々に才能を発揮して、若いうちに独立を認められるほどの実力を示した。

 それは、双方が互いをライヴァル視して、切磋琢磨した結果…に、周囲からは見えたかもしれない。


 しかし、クロスはアルバーラの存在は、ずいぶん(あと)になるまで気にしていなかった。

 というか、クロスは自分が "知る人ぞ知る孤高の賢者" になりたいと思っていたので、自分以外の存在を割と無視していたからだ。

 だからといって、クロスが鼻持ちならない傲慢な人物…だった(わけ)ではない。

 むしろ、小心者で人付き合いを苦手としていたために、出来るだけ他人と関わらずにいられる方法を考えたら、憧れが "孤高" の賢者になっただけだ。

 魔力持ち(セイズ)であるが故に親に捨てられ、師匠の元でも兄弟弟子からいじめを受けたクロスは、ますますその気持を強め、本の虫となり、賢者として他の(もの)が知らない禁呪を知っていたら「カッコイイ」と思ったりもしていた。


 一方のアルバーラもまた、クロス一人を標的にしてはいなかった。

 むしろこちらは、周囲の全てを恨んでいた。

 子供に魔力持ち(セイズ)の素養があると知った親の反応はそれぞれで、クロスの場合は魔導組合(セイドラーズギルド)の元に捨てられたが、アルバーラはスラムに打ち捨てられた。

 スラムという場所は、容姿が端麗であれば男女を問わず、醜女であっても女性なら必ず、性的な暴力を振るわれる。

 アルバーラもまた、その例に漏れなかった。

 そして彼女は、その暴力に耐えきれなくなった時に魔力暴走(フィムブルヴェト)を起こし、周囲にいた(もの)たちを半死半生の目に合わせたために魔導組合(セイドラーズギルド)に引き取られたのだ。

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