表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
74/122

16.禁忌の真実【4】

「では、タクトはあのドラゴンの正体は何だと思うんだ?」

『ふん…アレは、妖魔化(ガルドナイズ)した人間(フォルク)であろう』

「え、合成妖魔(キメラ)じゃなくて?」


 クロスが問うた。


『確かにドラゴンに似せるための能力をツギハギにしている状態は、合成妖魔(キメラ)と言えなくもないが。溜め過ぎた能力値(ステータス)人間(フォルク)の器に収まりきらなくなり器のカタチが変わっているのじゃから、すなわち妖魔化(ガルドナイズ)であろう。毒まんじゅうの実際の姿が今どうなっているかは解らぬが、あのドラゴンのような姿は幻獣族(ファンタズマ)の持つ全像術(イヤルク)特殊技能(スキル)で視せているだけであろう』

「しかし、アルバーラはジェラートも喰ってしまったんだろう? 神耶族(イルン)能力値(ステータス)の10%を得ているんじゃないのか?」

彼奴(きゃつ)の目的は、神耶族(イルン)を隷属させることじゃ。簡単に喰う(わけ)なかろ


 きっぱりと、タクトは言った。


「ああ、そうだった…。スゲェ勢いで弟子を喰ってたから、てっきり錯覚してたよ…」

彼奴(きゃつ)の胸に湧き出たアレは、核化(フィルギナイズ)されたジェラートじゃろう』

「でも核化(フィルギナイズ)(じゅつ)の顕現までに、三日ぐらい掛かるんじゃないの?」


 (おのれ)の知る常識の感覚で、クロスはそう訊いたのだが。

 タクトは冷笑のような、笑みを浮かべる。


人間(フォルク)の拙い能力では、そうであろ。実際に儂が完全に変化するまでに、二日ほど掛かっておるからな。だが毒まんじゅうは下級の幻獣族(ファンタズマ)まで喰って、かなり魔力(ガルドル)の底上げをしたようじゃし。使うのも二度目とあって、手慣れたところもあろうし』

「それで、おまえとジェラートに掛かっているその(じゅつ)は、どうやったら解けるんだ?」

『簡単じゃな。掛けた相手を倒せば良い』

「少しも簡単じゃないじゃないか」

『まあ、どの程度の幻獣族(ファンタズマ)を、どのくらい喰ったか判らんところが手痛いの』

「それは、下級といえど幻獣族(ファンタズマ)でしょ、数年の間に何十体も集められるモンじゃないと思うよ。集めまくって十体かそこらが、精々の量じゃないかな」

『ふむ。ならば相手の能力は、下級の幻獣族(ファンタズマ)程度と見ておけば、トントン(・・・・)じゃろう』


 これからの戦いに先方の戦力を推し量るクロスとタクトに、マハトが遠慮がちに問うた。


「話は全部ちゃんと聞いておきたいんだが、こんなに悠長にしていていいのか? あのドラゴンがいつこちらに()るか、分からないだろう」

「あ、それは大丈夫だよ。この屋敷は、出入り口以外は結界(フルンド)で外に出られないから、あっちは絶対、追いかけるより出てくるの待つほうが得策って考えてると思う」

 クロスの答えに、マハトは安心したように頷いた。

「そうか、それなら質問させてもらいたいんだが、あいつはなぜ、体内に取り込んだジェラートを、わざわざ胸に浮き出させてるんだ?」

『あれはジェラートが逃げ出そうとしておる、と言うのが正しい。じゃが、あのカボチャ頭めが、どうせ出るならもっと柔らかい部分を狙えばよかろうに』

「ドラゴンに柔らかい部分なんてあるのか?」

『どんなにウロコでがっちり身を固めている生き物でも、関節の内側や耳の後ろなど、折れ曲がっている部分は弱いに決まっておるわ』

「あの、飲み込まれた状態で、ソコを狙って出るのも、一苦労だと思うけど…」


 ぼそっと呟いたクロスを、タクトは冷たい目線で睨む。


『とにかくじゃ! ミッションは二つ、ジェラートの透晶珠(リーヴィ)を無傷で取り戻すこと! あの毒まんじゅうの息の根を()めること、じゃ!』

「だからそう簡単に言われても…」

『策はある! これから作戦を説明するから、良く聞けい』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ